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SNSでプライバシーが漏れると云うけれど…

森井昌克神戸大学 名誉教授
こんなことまで漏れてるの!?(写真:アフロ)

FacebookやTwitterなどのSNSは、友達や家族と投稿を通じて思いを共有できる楽しいサービスです。しかし一方で、使い方次第ではユーザの個人情報が公開されてしまい、場合によってはそれが元でトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

では、いったいどこに情報漏えいのリスクがあるのでしょうか?原因は大きく分けて2つあります。ひとつは投稿内容、そしてもうひとつはSNSの設定です。

出典:あなたのスマホで利用しているSNSから個人情報は漏れていませんか?【TRENDMICRO】

先日、TVでツイッターやインスタグラムといったSNSを頻繁に利用している人のプライバシーが簡単に漏れるという実演を行っていました。ある女性のSNSから、住んでいる場所や名前、生年月日、それに出身学校、趣味等、ほとんどの情報を抜き出すことができました。SNSの特性をよく知った人であるならば、専門家でなくても、個人情報を抽出することは可能です。SNSの特性を知り、文章だけでなく画像(写真)も含めて、その情報の意味を十分に理解した上で、さらに注意深い投稿を行わない限りは漏れてしまうのです。

自分自身が注意深く言葉を選んで、プライバシーが漏れないように細心の注意を払ったとしても友人が何の悪気もなく漏らしてしまうこともよくあることです。写真は必要以上におしゃべりです。写真にGPS情報が付いてしまい撮影場所が特定されることもあり、GPS情報が削除されていたとしても、写真の背景や複数の写真を比べることによって、場所や周りに誰がいたか、どのような状況で撮影されたかまでわかる場合もあるのです。

しかしSNSよりもさらに個人情報漏えいにとって危惧されることがあります。その危険性はSNSよりも身近にあり、気付いていない人がほとんどです。しかもインターネットを利用している意識がない人の個人情報が漏れてしまっているのです。

まずは性格判断や占いの類です。匿名だからと安心して、占いなどでは怪しむことなく生年月日や出身地だけでなく、個人的な様々な好みや志向まで教えてしまいます。ネットでの性格判断や占いではもちろんのこと、対面でも安心はできません。相手がネットで公開してしまう可能性もあり、その場合、氏名が書かれていなくても、SNSと同様、様々な情報の紐付けが行われ、最終的に個人が特定されてしまうのです。占いではなく、ネットでの質問の類も同様です。「何々について教えて?」のような単純な質問ならともかく、人生相談の類になると、個人情報を具体的に書いてしまうこともあるようです。質問を繰り返すうちに個人が特定されてしまうことも十分あり得ます。

スマホでのネットの利用は、懸賞やアンケートへの応募の類も大きく敷居を下げましたが、その応募も安心はできません。特に懸賞の類は、その目的の第一は商品やイベントの広報ですが、個人情報収集を目的とすることもあるのです。実際の「もの」を賞品とする場合では、住所と氏名さえ伝えれば十分なはずですが、年齢や職業、趣味まで聞くような懸賞の応募方法も少なくありません。たとえばいくつかの懸賞への応募情報が紐付けられることによって、その個人の志向等重要な情報が得られてしまうのです。

いわゆるポイントも問題です。大概の場合、会員登録等を行ってポイント取得に努めることになります。会員登録には住所氏名年齢を登録することが常であり、中にはそれ以外の職業、趣味等の属性情報も登録することがあります。意識することなく、様々なポイントを取得しようと数多くの会員登録を行うことになり、そのすべてが個人情報の管理に万全を期しているとは言い難いでしょう。

つまり一人で閉じこもらない限り、何をするにも情報は漏れていくことになるのです。これはインターネットの出現、スマホの隆盛以前からの事実です。昔と異なることは、漏れていた情報が拡散する範囲や要する時間が極めて限定的だったのが、現在では広範囲に、しかも時間に関係なく広まることであり、さらに誰でもがアクセス、つまり探し出せるということです。昔であれば気にすることもなかった世間話の類が、ネットでは個人情報となって、世界を駆け巡るのです。常に個人情報を含む、情報漏えいを意識することは難しいかもしれませんが、ほんの少しでも自分の発言や書き込み(投稿)がどう伝わるのか、どう利用されるのかを考えてみることは、自分の身を守るためにも大切なことの一つになっています。

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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