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リーガロイヤルホテル京都とセンチュリーロイヤルホテル/回転レストランが紡いだ感動の絆!

瀧澤信秋ホテル評論家
リーガロイヤルホテル京都(リーガロイヤルホテル京都提供)

昭和48年開業 市街を一望できる回転レストランが話題に

札幌の「センチュリーロイヤルホテル」が、2024年5月で閉館することは既に記事で詳述しました。

現場取材でわかった、センチュリーロイヤルホテル(札幌)の閉館決定後に初めてスタッフが知ったこと Yahoo!ニュース(個人)

1973年の開業で今年ちょうど50周年を迎えるホテルですが、クローズのニュース以来ホテルへの様々な思いを抱きつつ訪問するゲストが増えています。

スカイレストラン ロンド(筆者撮影)
スカイレストラン ロンド(筆者撮影)

やはり同ホテルの象徴ともいえる回転レストラン、最上階の「スカイレストラン ロンド」の予約が増加しているとのこと。開業50周年の記念メニューが販売された5月のプレゼントキャンペーンのコメント記入欄には、ホテルの思い出、人生を変えてくれたホテルといったゲストのホテル愛をうかがい知れる感想が記されていたそうです。

同ホテルでの上掲記事の取材では、クローズについてが主な取材目的でしたが、回転レストランにまつわる様々な話も聞くことが出来ました。

いつの間にか鞄がなくなっている!?

1973年(昭和48年)当時、回転レストランはある種のブームといった向きもあり、市街を一望できる同ホテルの回転レストランも大きな話題になったといいます。

現在3時間で1回転というスピードでゆったり回っていて、食事をしつつ気付いたら1回転していたという感覚ですが、実は当時1時間1回転という相当のスピードで回転させていた時期があったといい、「酔ってしまう人が続出し2時間1回転にしたと聞いています」(宿泊販売部支配人の工藤琢矢さん)との逸話も。

勝手に移動する鞄!?(筆者撮影)
勝手に移動する鞄!?(筆者撮影)

そんな回転レストランですが、実際に利用してみると意外なことに気付きます。もちろん建物自体が回転しているわけではなく、レストランの床が回転しているだけなので、たとえば荷物などを窓際に置いたりすると、いつの間にか鞄が置き去りになんてことに。

着席して手荷物を窓側に置いたりすると、スタッフから注意を促されるのは定番の光景ともいいます(筆者もうっかり鞄を置き去りにされそうに)。ある種、時代の象徴的な向きもあったろう回転レストラン。全国各地にあった回転レストランもいつの間にか“回らなくなったり”閉業したりと、過去の産物といったイメージもあります。

思い切った行動に

そんな回転レストランを昭和の遺産にしてはいけない!-2018年4月、センチュリーロイヤルホテルで営業企画を担当していた蝦名訓さんは思い切った行動に出ます。

同ホテルと同じく回転レストランを擁する「リーガロイヤルホテル京都」(京都市下京区)へ連絡、回転レストランのあるホテル同士で何か一緒にやれることはないか?とダメ元で打診しました。それまで両ホテルは全く知己も縁も無く、蝦名さんからのメールはリーガロイヤルホテル京都にとって、突然のものだったといいます。

センチュリーロイヤルホテルのロビー(筆者撮影)
センチュリーロイヤルホテルのロビー(筆者撮影)

最初に送ったメール以降、お互いに電話とメールでやりとりしておりましたが、それから1か月後、リーガロイヤルホテル京都のスタッフが札幌のセンチュリーロイヤルホテルを訪れたといいます。「普通はお願いする方が出向くものですが…リーガロイヤルホテル京都のみなさんの熱い思いが伝わってくるようで感激しました」と蝦名さんは振り返ります。

回転レストランはひとつの現存する文化であり遺産にしてはいけない、というのは共通の思いであったことがわかりました。早速、一般社団法人 日本記念日協会へ9月6日(くるくる)を回転レストランの日とすべく申請、また、9月の期間中には、1日限定で互いのシェフが行き来する特別ディナーも企画しました(まさに人も回す!?)。

9月6日、まさにその日に

ところが…「回転レストランの日」を制定して初めて迎える2018年9月6日まさにその日、午前3時7分に北海道胆振東部地震が発生します。北海道胆振地方中東部を中心に最大震度7を北海道では初めて観測した地震として、広いエリアにわたり甚大な被害をもたらしました。

折角の企画スタートでしたが、中止せざるを得なかったことは想像に難くありません。それよりもなによりもホテルの営業そのものに大きな影響を与える地震でした。

京都と札幌、ホテルの絆(リーガロイヤルホテル京都提供)
京都と札幌、ホテルの絆(リーガロイヤルホテル京都提供)

対応に忙殺されるスタッフ-ホテル全体が疲労感に包まれる中、リーガロイヤルホテル京都から荷物が届きました。何だろうと開けてみると・・・中には同ホテルのリーフパイが山ほど入っていたのです。「思わず目頭が熱くなりました」と蝦名さんは振り返ります。

リーガロイヤルホテル京都ではチャリティーディナーも企画されたといい、売り上げの一部を北海道赤十字に寄付することになりましたが、その手続きをセンチュリーロイヤルにやってほしいとの連絡まで。まさに人々の思いがホテルを包みます。

ホテルはハード・ソフト・ヒューマンといわれることがあります。ホテルのヒューマンウェアといえば、スタッフ対ゲストといったイメージですが、リーガロイヤルホテル京都とセンチュリーロイヤルホテル、回転レストランが紡いだホテル同士の感動の絆もまたヒューマンに溢れていました。

2024年5月にその幕を閉じるセンチュリーロイヤルホテル(筆者撮影)
2024年5月にその幕を閉じるセンチュリーロイヤルホテル(筆者撮影)

回転レストランは現存する文化であり、遺産にしてはいけない-そんな思いとは裏腹に2024年5月、センチュリーロイヤルホテルと回転レストランはその幕を閉じます。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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