「100日後に死ぬワニ」の商標登録出願はグッズ会社と作者の共同出願
「100日後に死ぬワニ」、自分も最初から見ていましたが、こんなに話題になるとは思いませんでした。死というものを考えさせてくれる深い作品だったと思っています。
連載が終わってすぐ、グッズ展開、書籍化、映画化といったビジネス系の話が出てきたので「電通案件」という噂(本当に電通が絡んでいるかどうかは真偽不明)が立ち、反感を持ったネット民もいるようです。しかし、注目度が高まったキャラクターでビジネスすること自体は問題があるとは思えません(むしろ、このように注目度が高い作品を生み出したクリエイターにはそれなりの見返りがあって当然です)。しかし、連載終了(=ワニの死)直後に、間をおかず商売の話が始まってしまったことへの批判はあってもしょうがないでしょう。また、私見ではありますが、この連載のポイントは何の変哲もない日常とクライマックスのない死をみんなで見守るという、映画や連載マンガではできない表現形態だったところにあるので、普通の映画で表現しておもしろいものになるのかという気がします(連載と同じ内容では盛り上がりに欠けますし、かと言って変な演出を付けるともっと陳腐になるでしょう)。
さて、私の専門である商標登録の状況を調べてみました。「100日後に死ぬワニ」という文字商標が商願2020-4507として、2020年1月16日に商標登録出願されています。一部ネット情報で「商標登録された」としているものがありますが、出願されただけでまだ登録はされていません。最近の特許庁の審査ペースを考えると登録されるのは今年末から来年初頭になるでしょう。指定商品は、おもちゃ、食品、被服等、11区分、519件に及び、広い分野でグッズに使用することが想定されているようです。
出願人は、株式会社ベイシカというキャラクターグッズの企画・販売等をやっている会社と作者きくちゆうき氏です(共同出願)。作者の了承の元にこの会社が商標権を管理することになったものと思われます。結構話題になったので、関係ない人による勝手出願がされているかと思いましたがそういうことはありませんでした。共同出願されていることにより、ベイシカは作者の許可なく他社へのライセンスや譲渡ができず、作者は自分の意にそぐわない商品への使用を防ぐことができます。普通は企業側が権利全部取りになると思いますが、どういう経緯で共同出願になったのかは不明です。作者は過去に「どうぶつーズ」という商標登録(第5717339号)を本人出願で行なっていますので既に商標制度に関する知識があったのかもしれません(いずれにせよ賢明な判断だと思います)。
ツイッターでの連載開始が12月12日なので、開始1カ月くらいでグッズ化の話が持ち上がって、即商標登録出願という流れだと思います。冒頭の記事にもあるように、最初からグッズ化前提で連載が始まったのではなく、連載途中で機を見るに敏な会社がビジネス化の話を持ち込んできたという流れかと思います(繰り返しますが、これ自体はまったく悪いことではありません)。