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長引く新型コロナの後遺症 知っておきたい後遺症外来 受診するタイミングは?(追記あり)

倉原優呼吸器内科医
(写真:maroke/イメージマート)

長引く新型コロナの「後遺症」

新型コロナは、急性のウイルス感染症ですが、基本的には発病してから4週間の時点で治癒します。しかし、この4週間を超えても他の診断では説明されないさまざまな症状が続くことを「後遺症」と呼んでいます。専門家の間では「Long COVID」、「Post-acute COVID-19 syndrome」などとも呼ばれます。

では、新型コロナに感染した後、なぜこれらの後遺症が出てしまうのでしょうか。実は現在のところ、よく分かっていません。ウイルスが体のさまざまな場所の細胞に感染して、そのせいでいろいろな臓器に障害が出るのではという意見や、ウイルスを排除しようと体が炎症を起こして頑張ったため、自分自身に着火してしまった炎症がくすぶっているという意見もあります。ただ、後遺症の多くは、ウイルス性疾患のあとに起こる「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」という病態をみているという説が有力です。

私は、新型コロナに限らず、重症の呼吸器感染症の患者さんをこれまで何人か診療してきましたが、重度の疾患にかかるほど、いろいろな後遺症がみられる印象を持っています。

後遺症がみられる頻度

退院後に自宅に戻った新型コロナの入院患者さんのその後を追跡したところ、30日後に「まったく問題ありません!」と元気モリモリだったのはわずか40%に過ぎず、残りの60%には何らかの後遺症がみられました(2)。

軽症だった新型コロナ患者さんでは、半年以上経過した段階で、その39%に後遺症がみられることが分かっていますが(3)、日本の調査では軽症者を含む感染者全体の約8割が以前と変わらない状態に戻ったと報告されています(4)。パンデミック当初医療崩壊を起こした武漢を観察してみると、1年後に49%が何らかの症状を有していたとされています(5)。

子どもの場合は基本的に後遺症がみられる頻度は低いのですが、それでも全体の4%に12週間を超えて持続する症状(疲労感や集中力低下)があったと報告されています(6)。私はこれに関しては、一般的に認識されているよりも「多い」と感じています。というのも、子どもは「軽症で済む」「新型コロナにかかっても大丈夫」という理解が多いためです。

新型コロナが広がり始めた頃は、後遺症が問題になるとは誰も予想していませんでした。ただのウイルス感染症で、治ればハイおしまい、そういうものだろうと。

しかし、新型コロナと長らく向き合う中で、後遺症は、それ専用の外来が必要になるほど、長期間にわたって苦しむ人がいる問題になることが分かってきました。

なお、研究によって数値はバラバラなので参考程度にしかなりませんが、後遺症には以下のようなものが知られています()。

表. 新型コロナの後遺症(種々の文献を参考に筆者作成)
表. 新型コロナの後遺症(種々の文献を参考に筆者作成)

また、後遺症を残しやすいのは、以下のような人たちと言われています()(7,8)。あくまで、そうでない人と比べてどうかという話で、該当するから必ず後遺症を残すわけではありません。

図. 後遺症を残しやすい人(シルエットイラスト、Ebina.POP広告より使用)(参考資料7,8を参考に筆者作成)
図. 後遺症を残しやすい人(シルエットイラスト、Ebina.POP広告より使用)(参考資料7,8を参考に筆者作成)

新型コロナの後遺症外来とは

「後遺症が気になるけど、どこで受診してよいか分からない」という場合は、厚労省のサイトに都道府県ごとに相談窓口が記載されているため、参照してください。自治体のサイトには後遺症の相談に関する記載がないところもありますが、その場合は自分のお住まいの地域で、「新型コロナ 後遺症外来」で検索してみてください。きっとヒットするはずです。

■厚労省:新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

中には、受診することなく、とにかく無料で相談を受け付けてくれる病院もあります。良心的だと思います。

上述したように、新型コロナにかかってから通常4週間以上のものを後遺症疑いとして対応しますが、退院した直後であっても、4週間経過していなくても、躊躇せず相談するのがよいと思います。(なお、後遺症外来は公費負担ではありません。通常の保険診療の範疇になりますので注意してください)

もちろん、普段のかかりつけ医がいれば、まずそこに相談して、紹介状をもって後遺症外来を受診するほうが望ましいです。

最後に重要なこととして、基本的にほとんどの新型コロナ後遺症に対する治療法は確立されていません。ゆえに、治療は症状に応じた対症療法が基本となります。そのため、「後遺症ではないか」と不安を感じたら、すぐに相談をするようにしましょう。

(参考)

(1) Evaluating and Caring for Patients with Post-COVID Conditions: Interim Guidance (URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-care/post-covid-index.html

(2) Bowles K, et al. Ann Intern Med. 2021 Mar;174(3):316-325.

(3) Nehme M, et al. Ann Intern Med. 2021 Jul 6;M21-0878.

(4) 第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月16日)資料(URL:https://www.niph.go.jp/h-crisis/archives/210388/

(5) Huang L, et al. Lancet. 2021 Aug 28;398(10302):747-758.

(6) Radtke T, et al. JAMA. 2021 Jul 15;e2111880.

(7) Huang C, et al. Lancet. 2021 Jan 16;397(10270):220-232.

(8) Sudre C, et al. Nat Med. 2021 Apr;27(4):626-631.

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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