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秋元康作詞の校歌をウェブに掲載するにはJASRACの許可が必要なのか?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:J-WID

「秋元康さん作詞の校歌、“想定外”のウェブ掲載制限」というニュースがありました。

秋元康氏が作詞した..校歌について、市教委は10日、ウェブ上などでの歌詞掲載で使用制限をなくすよう楽曲管理業者に働きかけることを明らかにした。

ということです。秋元康氏が作詞することになった経緯についてはこのあたりの記事に書かれています。なお、JASRACと書けばよいのにわざわざ「楽曲管理業者」とした理由は不明です。

JASRACの作品データベースJ-WIDで曲名「伏した虎よ」で検索してみると、確かに、秋元康氏が作詞の全権利をJASRACに信託していることがわかります(上記タイトル画像参照)。

この曲については秋元氏は別に金儲けのためにやっているわけではないので、この曲だけJASRACに無信託にして学校側に直接許諾すればよいのではないかと思われるかもしれませんが、JASRACの著作権信託契約約款によれば、委託者(作詞家・作曲家)は信託期間中に所有・取得するすべての著作権を信託することになっているので、少なくとも建前上はそれはできないと思われます。

(著作権の信託)

第3条 委託者は、その有する全ての著作権及び将来取得する全ての著作権を、本信託の期間(以下「信託期間」という。)中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を 受益者に分配する。(以下略)

(追記:10条1項によれば、3上の例外として、校歌や社歌については、依頼者に権利を譲渡することが可能でした。しかし、いずれにせよ、秋元康氏はこのような手続は行なっていないと思われます)。

とは言え、JASRACの利用規程では校歌については特別扱いがされており、申込みさえすれば無料で学校のウェブサイトに歌詞を掲載することができます。これで問題ないのではないかと思うのですが、上記引用記事では、「今後、SNS(での歌詞掲載)など使用現場が広がることが考えられるため特例的措置を講じてもらえないか働きかける」と書かれているので、この特別扱いの適用範囲を学校のウェブサイト以外にも拡大できるようJASRACに働きかけるということが話のポイントなのでしょう。この学校が運営するSNSやFacebookページへの無料掲載を認めよということであれば一理あるでしょうが、それ以外の一般のブログやSNSでも無料で掲載させろということになると、校歌を特別扱いする必然性が薄いので難しいのではと思います(もちろん、JASRACと歌詞掲載について包括契約を結んでいるブログサービスであれば問題ないですが)。なお、秋元康氏の著作権は信託によりJASRACに譲渡されていますので、この件を秋元氏本人に依頼してもどうしようもありません。

冒頭の引用記事を斜め読みして、JASRACは学校のウェブサイトへの校歌歌詞掲載からも金を取ろうとしているのかと早合点する人が出てきそうなので注意喚起的に書いてみました。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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