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少子化対策「再エネ・断熱が必要」 蓮舫氏に若者達が訴え、都知事選の重要「裏」テーマ

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
蓮舫氏のインスタグラムから

 今週末に行われる東京都都知事選。その中であまり論じられていない重要テーマの一つが気候危機(=温暖化)対策だ。猛暑や大雨など、気候危機の影響から都民をいかに守るか、大量にエネルギーを消費する大都市として、どう温室効果ガス排出を削減するかは、もっと論じられるべきテーマであろう。都知事選の候補の一人、蓮舫氏は今月3日、気候危機対策を求める若者達とオンラインライブで意見交換した。

〇「気候危機の中で子どもを作ろうとは思わない」

 蓮舫氏は3日の晩、SNS「インスタグラム」のライブ配信機能で、若者達と気候危機対策を論議した。参加した若者達は気候危機対策を求める活動を行っている黒部睦さん、山本大貴さん、川崎彩子さん。気候危機の影響がいよいよ異常気象などのかたちで猛威を振るい始めていることについて、黒部さん達は「将来に不安を感じる」「夏になると、こんなに暑くなるんだと気候危機を実感して涙がめっちゃ出てくる」と、口々に語った。こうした若者達の不安は、今回の都知事選の大きなテーマの一つである少子化対策にも関係しているという。黒部さんらやライブ視聴者は、「(気候危機が深刻化する中で)子どもを作ろうとは思えない」等と訴えた。

 気候危機がこのまま進行すれば、猛暑や大雨の気象災害の発生率が大幅に上がるということは、IPCCの報告書でも確実とされ、国連のグテーレス事務総長は「これは地球温暖化ではない。地球沸騰化だ」と危機感をあらわにした。また、研究によっては、将来的に世界の人口の3分の1がそこで生活できない程の暑さに見舞われる、最悪の場合には地球の大気に酸素を供給している海の植物プランクトンが酸素を出せなくなる等、もはや人類の生存すら左右する悪影響が及ぶことも危惧されている。気候危機に対する多くの政治家の悠長さに反し、今後、まさにその影響を受けるだろう若者世代が将来に大きな不安を抱えているということは、日本のみならず世界各国で見られる傾向なのだ。

〇再エネ・断熱の推進を

 ライブ配信で、若者達が蓮舫氏に求めたのが、再生可能エネルギーの活用と住居やオフィスの断熱だ。太陽光や風力は発電の際に温室効果ガスであるCO2を排出しない。蓮舫氏のインスタライブでは森林破壊等の弊害も大きいメガソーラーではなく、地産地消・地域分散型の再生可能エネルギーの活用を若者側は求めた。また、一般の住宅やオフィスなどの事業所から排出されるCO2は日本全体の排出の3分の1を占め、その大部分が空調に関するもの。つまり、住宅や事業所の断熱をしっかりとすることは、CO2排出削減のために重要なのだ(関連情報)。

地球温暖化防止活動推進センター(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)
地球温暖化防止活動推進センター(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)

 これらの対策について、前出の山本さんは「(気候危機の進行を食い止めるため)もう時間がない中で、スピード感を持って、あと10年、15年とかそういったスパンで対策をしてほしい」と訴えた。

 若者達の訴えに蓮舫氏は理解を示し、「気候変動知事直轄会議を、国とは違う視点で、ジェンダーバランスや若い人達、専門家や都の職員に入っていただいて一緒に議論をすることで社会課題の解決策を作り上げてくボトムアップをしていきたい」と語った。


〇大人としての責任を考えよう

 蓮舫氏の世代も含め、気候危機を引き起こしてきたのは、大人達の責任である。しかし、その気候危機によって最も強い影響を受けるのは、これからの世代なのである。都知事選の候補者も有権者も、大人としての責任を自覚して、気候危機に対する意識を高めてもらいたいものだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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