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石井慧はK-1のリングを経験し、どう変わったのか? 5・7『HEAT50』参戦──。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
「HEAT」に3度目の参戦を果たす石井慧(写真:日刊スポーツ/アフロ)

肋軟骨負傷も回復は早く

「傷めたのは(折れたのは)、肋軟骨です。ここは柔道の時から何度も怪我をしていて、痛みには慣れています。いい医者を知っていますし、その方の力も借りて治している。試合まで、あと1カ月あるのでベストの状態に持っていけると思います。

『鉄は熱いうちに打て』ではないですが、いまは無理をする時。ここは詰めて頑張っていきたい」

5月7日、名古屋国際会議場イベントホールで開催される『HEAT 50』に石井慧の参戦が決定─。4月12日、東京・品川区で開かれた発表記者会見には石井も出席し、上記のように語った。

クロアチア国籍を取得し現地で暮らす石井は、昨年9月からK-1のリングに上がっている。これまでに愛鷹亮(K-1ジム相模大野クレスト)、RUI(K-1ジム福岡チームbeginning)、実方宏介(真樹ジムAICHI)と闘い、すべて勝利。

今月3日には、東京・国立代々木第一体育館『K-1 WORLD GP 2022 JAPAN~K’FESTA.5~』での「無差別級トーナメント」出場も果たした。1回戦で実方をパンチで沈めKO勝利を収めるも、ヒザ蹴りをボディに喰らった際に肋軟骨を負傷。ドクターストップにより戦線離脱を余儀なくされた。

復帰までには時間がかかるかと思われたが、回復は早い見込みで来月開催の「HEAT」50回記念大会に出場することになったようだ。

対戦相手は、ダニエル・スポーン(米国/CAMBRIDGE MARTIAN ARTS)。ベラトール、PFLで主に闘ってきたファイターで戦績は18勝(7KO&5一本勝ち)8敗1分け。193センチの長身で体重は93キロ、年齢は石井よりも2つ上の37歳だ。

「打撃が強い選手」と石井はスポーンの印象を話していたが、グラウンドの展開にも十分に適応できる選手でもある。

4月12日に開かれた記者会見に出席し「HEAT50」参戦を表明、抱負を語った石井慧(右)。左は志村民雄EXプロデューサー(写真:HEAT)
4月12日に開かれた記者会見に出席し「HEAT50」参戦を表明、抱負を語った石井慧(右)。左は志村民雄EXプロデューサー(写真:HEAT)

KOを狙うわけではない

今回、注目したいのは石井の闘い方だ。

柔道をバックボーンに持つ石井が、キックボクシング(K-1)に挑戦したのには理由があった。彼は以前、私にこう話した。

「僕は格闘家ですから、K-1ファイターに転向するわけではありません。K-1で試合をするのは、打撃のスキルを上げるのが目的です。僕は、グラップリング(組み技格闘技)の試合に出始めてから、MMA(総合格闘技)でも決めて勝つことが増えました。打撃も同じように考えてK-1に挑むんです。実戦を経験しないと本当の意味で身につきませんから」

K-1のリングに上がるのは、打撃技術を磨き総合格闘家としての完成形を目指すため。ならば、K-1での闘いを経験したことで、ファイトスタイルがどう変わったかを見てみたい。

石井は言う。

「打撃の地力自体は上がっていると思います。でもK-1とMMAの打撃は違うので、そこはアジャストしていかないといけない。新しく培ったものをMMAでの闘いにつけ加える感じです。KO勝ちを狙うわけではありません。 自分のゲームプラン、持ち味を活かして闘うことが大切。自分がやるべきことをクリアしていけば、KOや一本はついてきます」

おそらく、石井のファイトスタイルは変化している。

K-1で3戦3勝の成績を残したことで、打撃の成長に手応えを感じているはずだ。打撃に長けたファイターが相手でも臆することなく対峙でき、その攻防から自分が優位となるパターンに持ち込めよう。

K-1のリングで闘ったことで、打撃系ファイターに変貌したわけではない。引き出しの数を増やし、総合格闘家として進化を遂げているのである。

石井がMMAの舞台に上がるのは、昨年7月、ドイツ開催の「EMC 7」でピエトロ・カペッリ(イタリア)にチョークを決め勝利して以来、約10カ月ぶり。どんな闘い方で魅せてくれるのか、大いに楽しみだ。

なお、石井はHEATヘビー級王者だが、今回のスポーン戦はノンタイトルで行われる。

5・7名古屋「HEAT50」には石井慧(左から4人目)のほか、皇治(右から5人目)も参戦。RIZINでも闘った春日井”寒天”たけし(左から3人目)は引退試合を行う(写真:HEAT)
5・7名古屋「HEAT50」には石井慧(左から4人目)のほか、皇治(右から5人目)も参戦。RIZINでも闘った春日井”寒天”たけし(左から3人目)は引退試合を行う(写真:HEAT)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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