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自らの愚行が招いたトレード? MLBでは有名だった“奇人”投手の末路

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レッズへのトレードが決まったトレバー・バウアー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【トレバー・バウアーがレッズにトレード】

 7月31日のトレード期日が迫る中、ここに来て連日のようにトレードが成立しているが、日本時間の31日午前に速報が流れ、インディアンズのトレバー・バウアー投手がパドレスを含めた3チーム間によるトレードでレッズに放出されたようだ。

 バウアー投手といえば、インディアンズの先発投手として昨年まで4年連続二桁勝利を続け、今シーズンもここまでチーム2位の9勝を挙げている大黒柱の1人だ。

 現在のインディアンズはツインズとの間で熾烈な地区首位争いを演じ、さらにワイルドカード争いでも圏内に入るなど、ポストシーズン進出をかけた大事な争いを続けている最中だ。にもかかわらず、チームはバウアー投手を手放す決断をしたのだ。

【チームの心象を完全に悪くした週末の愚行】

 今回のトレードには伏線があったと考えるべきだろう。

 すでに日本のメディアでも報じられていることだが、28日のロイヤルズ戦に先発したバウアー投手は不安定な内容で、5―3の2点リードで迎えた5回裏に、集中打を浴び一挙4失点を許し逆転され(後続投手がさらに失点し記録上は計8失点)、イニング途中で降板を命じられた。

 この交代時のことだった。交代のためロベルト・ペレス捕手とテリー・フランコーナ監督がマウンドに近づいていく中、マウンド上のバウアー投手が突如反転すると、センター方向にボールを思い切り放り投げたのだ。

 このバウアー投手の動画がメディアやSNSで拡散され、日本でも報道されることになったというわけだ。この動画を見る限りだと、単なる面白エピソードのように思われるかもしれないが、実はそんな単純なものではなかった。

 動画を最後まで見れば明確なように、マウンドにやって来たフランコーナ監督はバウアー投手に対し憮然とした態度をとっている。また解説者も「欲求不満があったのだろうが、明らかに侮蔑的な態度だ」と切り捨てている。つまり端から見れば、完全な愚行だったのだ。

【以前からトレードの有力候補だった】

 バウアー投手は試合後に自分のとった軽率な行動を反省し、謝罪の言葉を口にしているのだが、この愚行が彼の人生を大きく変えてしまった。

 これを機に米メディアの間では、「ポストシーズンのためにバウアーをトレードしない」という報道がある一方で、「元々トレードの噂が絶えなかったバウアーだったが、今回の愚行でそれがさらに加速化した」という声が日増しに増えていった。

 確かにバウアー投手のトレードの噂は、以前から繰り返されていた。昨シーズンのトレード時期でも彼の名前は度々登場していたし、昨オフもトレード候補として何度も報じられていた。

 今シーズンは1300万ドル(約14億円)の年俸を得ているバウアー投手は、シーズン終了後に2度目の年俸調停の権利を得ることになっている。今シーズンここまでの活躍を見れば、大幅な年俸アップは必至の状況で、高額年俸が大きなネックになり始めていたのも、トレード候補になった理由だといわれている。

【MLBでは有名な“奇人”だったバウアー】

 だがそれ以上にバウアー投手について忘れてはならないのが、今回の愚行でも明らかなように、彼がMLBでは有名な“奇人”だということだ。とにかくグラウンドの内外でトラブルを起こす問題児なのだ。

 特に彼はツイッター上で問題発言を繰り返し、様々な騒動を巻き起こしている。有名なところではアストロズ投手陣のボール回転率が上がっていることを理由に、明確な根拠がないまま何か不正をしている可能性を指摘する投稿を行い、アストロズ選手を巻き込んだ論争にまでなっている。

 さらには、あるツイートをきっかけにアストロズ・ファンの女子大生と舌戦を繰り広げ、彼女がバウアー投手をブロックした後も執拗なツイートを投稿したことで、女子大生から米主要紙にハラスメント被害を訴えられる騒ぎも起こしている。とにかく次から次へとトラブルにまみれているのだ。

 今回の愚行がトレードの直接的な理由かどうかは定かではない。だが彼がインディアンズから、扱いにくい選手だと思われていたのは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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