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Jリーグ夏の移籍市場が大詰め。今さら聞きにくい”期限付き移籍”と”育成型期限付き移籍”の違い

河治良幸スポーツジャーナリスト
FC東京から期限付き移籍した岡崎慎。育成型ではないのでFC東京復帰には合意が必要(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

新型コロナウイルスの影響を受けて、長い中断期間にともなうレギュレーションの変化により、Jリーグも超過密日程が続いています。

どのチームにも大なり小なりけが人が出てきており、戦力の見直しも含めて、補強が必要な状況が出てきています。今シーズンの移籍市場は当初「7月17日から8月14日まで」でしたが、2週間の後ろ倒しで「7月31日から8月28日まで」に変更されました。

追加登録期間も9月18日から11月6日に変更されましたが、国内のクラブ間の移籍交渉は大詰めを迎えているはず。ここに来て清水エスパルスの滝裕太が育成型期限付き移籍でJ3のカターレ富山、ガンバ大阪から市丸瑞希がFC琉球に期限付き移籍したことが発表されました。

この「育成型期限付き移籍」と「期限付き移籍」の違いが難しく、混乱するケースが多いように思います。もちろん理解しているファンサポーターもいると思いますが、今さら聞きにくい知識ということで、簡単に説明したいと思います。

「育成型期限付き移籍」はJリーグの若手選手により多くの出場機会を与えるために考え出されたルールです。23歳以下の日本国籍を所有する選手が対象となっており、移籍の契約期間はありますが、何かの事情でレンタル元のクラブが途中解約して戻せることを双方のクラブ間で合意していることが大前提になります。

ただし、移籍先のカテゴリーが下位である必要があります。J1ならJ2以下、J2ならJ3と言った形式で、JFLなどへの移籍にも適用されます。

その一方で「期限付き移籍」は年齢制限や国籍の縛りが無く、同一カテゴリーや上位カテゴリーであっても移籍が可能です。ネックは契約期間中にレンタル元の事情で選手を戻せないことです。もちろんレンタル先のクラブが合意の上で、正規の手続きが取られれば期間を短縮してのレンタルバックも可能ですが、原則的には契約期間を全うした上で元のクラブに戻るのか、期限付き移籍を延長するのか、完全移籍に移行するのか、一度レンタルバックして、新たなクラブに移籍するのかなどが判断されます。

上記の事例で言うと滝裕太がカターレ富山で大活躍を見せて清水エスパルスの評価が大きく上がったり、アタッカーのポジションに怪我が出て必要になったと言う場合、追加登録期間であればシーズン中のレンタルバックも可能ですが、市丸瑞希の場合は原則的に2021年1月31までの期限付き移籍期間を全うすることになります。

今回、一部の報道で話題になっている岡崎慎はFC東京から同じJ1の清水エスパルスということで、育成型ではない期限付き移籍であり、FC東京がわがレンタルバックのオファーを出しても、2021年1月31日まで清水エスパルスの選手なので、交渉の結果、両者の合意を得なければ契約を解消はできないことになります。

岡崎の場合は現在22歳なので混乱しやすいかもしれません。ここから移籍期間が終了するまで「育成型期限付き移籍」と「期限付き移籍」の両方が出るでしょうし、筆者も記事の内容によっては「育成型」と言う表記を端折ることもありますが、そう言う前提で情報をチェックして行って欲しいと思います。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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