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朝日新聞社、ナチス支援者が安部首相の支持者だと記者がレッテル貼りをした件で謝罪

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
公認記者として冨永氏のTwitterアカウントを紹介している朝日新聞のページ

朝日新聞の冨永格(ただし)特別編集委員が、ナチス・ドイツの鉤十字の旗を持った集団の写真とともに「彼らが安倍首相を支持している」と誤った内容をツイートした件で、朝日新聞社がウェブ上に「おわび」を掲載しました。

報道姿勢に疑念抱かせおわびします 朝日新聞社特別編集委員、不適切なツイッター:朝日新聞デジタル

「誤解とけない」自民党が朝日新聞社に申し入れ

冨永氏は今月2日、自身の『Twitter』アカウントにナチス・ドイツの鉤十字の旗を掲げたデモ活動の写真と合わせて、「東京であった日本の国家主義者のデモ。彼らは安倍首相と保守的な政権を支持している」との内容を英語とフランス語で投稿しました。

しかしその後、多くの批判を受けたことから問題の投稿を削除し、「嫌韓デモに参加する人たちには安倍首相の支持者が多いという趣旨でしたが、英語ツイートに「一般的に」の言葉が抜けていたので、彼らがこぞって首相を支持しているかの印象を与えるツイートになってしまいました。失礼しました」と釈明しました。

けれども同4日、「安倍首相の支持者はナチス支援者」だとレッテルを貼られた自民党が

「特別編集委員の釈明は全く不十分なもので、到底、欧米のフォロワーの誤解は解けるものではない」

出典:朝日新聞特別編集委員 不適切ツイートで謝罪 NHKニュース

として、朝日新聞社のウェブサイトにも英語とフランス語でツイートの訂正と謝罪を掲載することを求める申し入れ書を出す事態となりました。

今回の「おわび」の掲載は、この状況を受けてのものと思われます。

冨永氏を公認記者、執筆者から外す措置

朝日新聞は「おわび」で「報道姿勢に疑念を抱かせる行為だったと重く受け止め、(冨永氏を)社名などを名乗ってツイッターを利用できる「公認記者」から外すとともに、コラム「日曜に想(おも)う」の執筆者からも外す措置をとります」と発表しています。

結局「誤解」は解けたのか?

しかし、この「おわび」を見て思うのは、「結局、英語圏・フランス語圏での誤解は解けたのだろうか?」という点です。

冨永氏が2日に行った釈明ツイートは100RT前後、4日に投稿した訂正ツイートは20RT前後にとどまっており(8月5日10時34分時点)、問題のツイートを読んだ人たちの多くに伝わったとはとても思えません。

また、自民党が申し入れていた「英語とフランス語の訂正と謝罪」も調べたかぎりでは行われておらず(英語版朝日新聞(とAJW)のウェブサイトに現在のところ「おわび」の掲載は見当たりません)、「誤解」を解くにはまだまだ行動が足りないように思えます。

私もいくつかのデマ訂正記事を書いていますが、デマの訂正よりもデマそのものが広まるスピード・影響力の方が大きく、基本的にデマの訂正はデマに騙された人全員に届けることはできません。

だからこそ、どれだけデマを訂正する行動をしたかというのが重要なのですが、朝日新聞の「おわび」を読むかぎりでは、ツイートの内容そのものが間違っていたとの訂正も行わず、全てを「記者個人の責任」に押し付けようとしているように見えます。それが残念でなりません。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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