「手取りからもっと貯蓄をしなければ」単身世帯で増加する貯蓄割合
貯蓄性向は増加傾向
将来や緊急事態に備え財を蓄積していくことは、時間の概念を有する人の知恵である。金融資産を貯蓄している人は、手取りからどの程度の割合を積み立てているのだろうか。金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年調査公開している家計の金融行動に関する世論調査の公開データをもとに、その実情を確認していく。
今調査によると最近では金融資産を持たない世帯がわずかだが増える傾向にある。
金融資産は臨時収入も含め、手取りからの貯蓄(今件では金融資産の取得に資金を振り向けることを意味する。金融資産は預貯金以外に貯蓄型の保険や有価証券も含まれる)で構築されていく。それでは具体的に、手取りの中からどれぐらいの額を貯蓄しているのだろうか。5%区切りでその度合いを尋ねた結果が次のグラフ。無論、金融資産そのものが無い世帯は貯蓄の積み「増し」のしようが無いので計算上からは除外している。
単身世帯では経年の変化はほとんど無し。ここ2、3年に限ればいくぶん減少し、代わりに貯蓄する人における貯蓄割合は増加しているように見える。
一方で二人以上世帯では、明らかに貯蓄しなかった世帯が増え、そして貯蓄をしても貯蓄する割合が減っている(赤系統の色が薄い=貯蓄割合が低い層が増えている)のが確認できる。もっともその減少傾向もようやくストップがかかったようで、この4、5年ではほぼ横ばいで推移が続いている。
平均貯蓄割合を見てみると……
「具体的には平均でどれほどの額が貯蓄されているのか」を直感的に把握するため、貯蓄しなかった人も含めた平均の「手取りに対する平均貯蓄割合」の推移を示したのが次のグラフ。例えば2015年の単身世帯は15%なので、貯蓄した人・しなかった人も合わせ、平均で手取りの1割強ほどが貯蓄に回されていることになる。
二人以上世帯は「貯蓄をしなかった人」の割合が増加していることもあり、貯蓄割合は漸減。ただし今世紀に入ってからは事実上横ばい。一方で単身世帯は計測期間が短いものの、9年の間で3%ポイントほどの増加が確認できる。夫婦世帯は余力が小さくなり、単身世帯は備えを強化している、との表現が適切か。
もっとも上記の結果「単身・二人以上世帯共に金融資産を持たない世帯が漸増している」「金融資産を持っている二人以上世帯で、手取りから金融資産への積み増しを行えた世帯は漸減していた」と合わせ見ると、世帯は実情として「(A)金融資産を持たない世帯」「(B)金融資産を保有しているが積み増しができなかった世帯」「(C)金融資産を保有し、積み増しができた世帯」に三分化されており、(A)が漸増、(B)は二人以上世帯で漸増していたが横ばいに、(C)はさほど変わらないが手取りに占める積み増しの割合を増加させた動きが透けて見える。
特に(C)の「金融資産を保有し、積み増しができた世帯」における額面の比率増加分は単身世帯で顕著となり、結果として全体の平均率も上がったと考えれば道理は通る。実際、細かい数字を確認しても、単身世帯ではその通りの動きが見て取れる。
単身世帯では貯蓄可能な世帯に限るが、特に将来に向けた貯蓄性向を高めつつある、そのために単身世帯全体としての平均値も上昇していることになる。
直上のグラフは「定期収入・臨時収入を合わせた年の手取り」に対する割合。例えばボーナスのような臨時収入だけて勘案するとその収入の特性から、貯蓄性向は大きく跳ね上がる。
二人以上世帯は約2倍、単身世帯は3倍近くと、単身世帯の方が臨時収入における貯蓄性向の増加割合は大きい。しかも昨今では確実に貯蓄する割合が上昇している。額面では無く割合での話だが、貯蓄に関しては若干ながらも単身世帯の方が、備えに対して強い意志を抱いているようである。
■関連記事: