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羽生九段A級残留へ望みつなぐか――第80期順位戦A級6回戦、羽生善治九段-山崎隆之八段戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
前期に続いて厳しい残留レースを戦う羽生善治九段(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 渡辺明名人(37)への挑戦権を争う第80期順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)A級は現在6回戦が進行中。12月15日には6回戦残留争いの大一番、1勝4敗同士の羽生善治九段(51)-山崎隆之八段(40)戦が大阪府大阪市「関西将棋会館」で行われる。本局に敗れたほうはリーグ参加者全10人のうち最下位となり、降級枠2名からの脱出が厳しくなる。

 最近の両者の調子とデータを基に勝敗と展開を予想してみた。

山崎八段は上り調子

<順位戦A級成績>(丸数字は現時点の成績順。段位のあとの数字はリーグ順位)

①斎藤慎太郎八段(1)5勝0敗

②豊島将之九段(2)3勝2敗

③糸谷哲郎八段(4)3勝2敗

④佐藤天彦九段(7)3勝2敗

⑤広瀬章人八段(3)3勝3敗

⑥佐藤康光九段(6)3勝3敗

⑦菅井竜也八段(5)2勝3敗

⑧永瀬拓矢王座(9)2勝3敗

⑨羽生善治九段(8)1勝4敗

⑩山崎隆之八段(10)1勝4敗

<羽生九段の最近10局>(相手の肩書は対局当時)

10月1日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬拓矢王座 ●

10月5日 ALSOK杯王将戦リーグ

対近藤誠也七段 ○

10月13日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島将之竜王 ○

10月21日 ALSOK杯王将戦リーグ

対広瀬章人八段 ○

10月28日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

11月9日 ALSOK杯王将戦リーグ

対藤井聡太三冠 ●

11月19日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ●

11月24日 ALSOK杯王将戦リーグ

対糸谷八段 ○

12月3日 竜王戦1組

対佐藤和俊七段 ○

12月9日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対青嶋未来六段 ●(千日手指し直し)

<山崎八段の最近10局>

8月19日 お~いお茶杯王位戦予選

対畠山鎮八段 ○

9月2日 叡王戦予選

対畠山鎮八段 ○

9月14日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ●

9月29日 順位戦A級

対佐藤康光九段 ●

10月7日 お~いお茶杯王位戦予選

対糸谷八段 ●

10月25日 NHK杯

対佐々木大地五段 ●

11月4日 順位戦A級

対菅井竜也八段 ○

11月11日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対服部慎一郎四段 ●

11月30日 王座戦2次予選

対杉本昌隆八段 ○

12月8日 竜王戦1組

対佐々木勇気七段 ○

 順位戦A級は前期挑戦者の斎藤慎太郎八段が大きくリードし連続挑戦に向け快走している。一方の残留争いは混戦模様も順位下位の羽生九段と山崎八段の2人のみ1勝と、星が伸びず苦しい戦いを強いられている。

 羽生九段の最近の成績は5勝5敗とまずまずだが直近の朝日杯は千日手指し直し局の終盤で比較的簡単な勝ち筋を逃し逆転負けするなど、状態が気がかりだ。

 対照的に山崎八段は5勝5敗ながら前節A級5回戦で待望の初白星を挙げ、直近も竜王戦1組で若手有望株の佐々木七段を降すなど上り調子と見る。

直接対決は羽生九段リードも不安材料あり

 直接対決は23局あって羽生九段が18勝5敗と大きく引き離している。ただし、最近は山崎八段が3連勝しており一時の苦手意識を克服したようで、この点は羽生九段にとって不安材料だ。

 順位戦は先後が決まっており、本局は羽生九段が先手のため主導権を握ろうとするだろうが、山崎八段はどのような出だしでも得意の力戦に誘導することがほとんどのため、定跡から離れた相掛かりか横歩取り系の力将棋になる可能性が高いだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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