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菅田将暉さん主演“月9”『ミステリと言う勿れ』のなかに、ペットロスの処方箋があった?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

俳優の菅田将暉さんが主演するフジテレビ系“月9ドラマ”『ミステリと言う勿れ』が、1月10日よりスタートしました。人気の菅田さんのドラマだけあって、第一話の視聴率もよかったようです。

このドラマは、菅田さんが演じる天然パーマがトレードマークの主人公・久能整(くのう ととのう)が難事件や人の心の闇を解きほぐしていく興味深いミステリーです。原作は同じタイトルの漫画で田村由美さんが描いています(菅田さんは田村さんと話し合いながら役作りをしているとか)。

第一話の久能整のセリフにペットロスの処方箋があるので、それを今回は見ていきましょう。

ペットが亡くなるときの兆候とは?

筆者は仕事柄、犬や猫の臨終に立ち会うことが多いです(最期は、なるべく自宅で飼い主に看取ってもらっています)。もちろん、事故などの突然死などもありますが、多くの慢性疾患のときに、どのような状態が続けば、そろそろ天国に旅立つのかは、わかります。それは以下のような状態です。

・体温が下がってくる(36度以下。犬や猫の平熱は38度台なので)

・食べない

・水を飲まない

・液体を飲み込めない

・動けない

・目の反射が弱い(眼瞼反射)

・オシッコの量が減り、やがて出なくなる

・体臭が変わる

などになると、詳しい血液検査をしなくても外見から数日も持たないことがわかります。そんなとき、あまりよくない状態なのでよく見ておくように伝えます。

猫は死に際を見せたくなかった

写真:アフロ

それでもふと目を離したときに、天国に逝く子がいます。このドラマでは伊藤沙莉さんが演じる風呂光聖子(ふろみつ せいこ)が、猫をずっと看病していたのに、ふと目を離した一瞬に亡くなって、風呂光はペットロスに悩んでいます。

ドラマは原作に割合に忠実に再現されているので、漫画のなかにその部分を見ていきましょう。『ミステリと言う勿れ』第1巻  20ページ

久能

「ずっと看病してたのに 目を離した一瞬に亡くなった?」

風呂光

「…」

久能

「猫なら、当たり前ですよ」

「猫は、あなたに死ぬところを、見せたくなかったんです」

「猫だから、見られたくないってのもあるけど」

猫は、風呂光さんのことが大好きだから、見せたくなかったんです

(略)

それは、猫の、矜持(プライド)と、思いやりです

とあります。

つまり、死ぬ瞬間を見せることは、やはり猫も嫌で、飼い主に対して生から死へ変わる瞬間を見せるのは悪いと思っていると言っているのでしょう。死ぬ瞬間は以下のようになります。

・痙攣する

・失禁する

・口から何か吐く

・ウッと声を出す

・大きな息をする

などがあることもあります。

そんな姿を見せると飼い主はずっと悲しむ場合があるので、飼い主が一瞬、目を離したときに旅立つというものです。

飼い主がペットが亡くなったときに罪悪感を抱く理由は?

愛情を持ってペットを飼っていると、亡くなったときに罪悪感を抱かなくていいと思います。しかし、小動物の臨床現場にいると愛犬や愛猫を亡くしたときに、飼い主は罪悪感を抱く場合が多くあるのです。それは以下です。

死に目に会っていない

このドラマのようにたまたま目を離したとき、ちょっと寝てしまったとき、死ぬ瞬間、怖くて逃げたなどがあります。

病気になったとき、気がつくのが遅かった

ペットは言葉を話せないので、気がついたらがんになっていたなどもあります。

病気になったとき、経済的理由で思うように医療ができなかった

ペットには人間と同じような保険制度がないので、治療費が高くなります。がんなどの治療をしていると、数十万円の治療費が必要なこともあります。そのため、高額な治療ができなかったなどもあります。

病気になったとき、忙しくて思うように看病できなかった

仕事を休んでペットの看病をしたかったけれど、それができずに気がついたときには、重症化して亡くなったなどもあります。

ペットは亡くなっても感謝している

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

筆者は、去年の4月に19年近く一緒に暮らした愛犬を亡くしました。職場にも連れて行ってずっと看病していました。水も飲み込めなくなり瞳孔反射も鈍いので、今日か明日には亡くなるな、と思って夜中も愛犬の傍らにいました。看病疲れか、ふとしたときに誰かに胸をツンツンとつつかれて、目を開けると愛犬は亡くなっていました。

このドラマと同じように、死ぬ瞬間は見ていないのです。

なぜ、寝落ちしてしまったのだろうと罪悪感を抱いていました。上述の久能のセリフを読んだときに、涙があふれ出ました。

長年、臨床現場にいると愛犬や愛猫が亡くなった後に、自分を責めて自虐的になる人を多く見ています。そして、飼い主は精神的な病気やがんになる場合もあります。

ペットたちは、自分でフードを用意することや水を汲むことできません。排泄物の始末ももちろんできません。

でも、飼い主は、文字通りの雨の日も風の日もずっと世話をしているのでペットは生きていけたわけです。だから、恨んだりはしていなと、筆者は考えています。感謝しかないのです。

ペットロスに悩んでいる人は、難しい本を手に取りにくいでしょうが、この『ミステリと言う勿れ』の第1巻のなかに優しい世界が繰り広げられています。これを読むと、心が晴れるかもしれません。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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