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チャイルドシートの装着率は64%

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 幼子を乗用させる時にはチャイルドシートは必要不可欠(ペイレスイメージズ/アフロ)

漸増するチャイルドシート装着率、直近では64%

万が一の交通事故の際に、確実に死傷リスクを減らす役割を果たすシートベルト。その子供向け版がチャイルドシートだが、装着率はシートベルトほど高くない。直近調査では64%との結果が出ている。実情を先日、日本自動車連盟(JAF)が警察庁と合同で行った調査結果(※)から確認する。

まずはチャイルドシートの利用率だが、多少の上下を繰り返しながら、全般的には改善される方向にある。

↑ チャイルドシート使用率推移
↑ チャイルドシート使用率推移
↑ (参考)一般道におけるシートベルト着用率推移
↑ (参考)一般道におけるシートベルト着用率推移

チャイルドシートの装着は発生時における子供のリスク軽減の前提条件となるため、数字の増加は好ましい状況と考えてよい。2013年には初めて6割を超え、それ以降も上昇傾向にある。直近年は前年比でマイナス0.1%ポイントとなったが、統計上の誤差の範囲だろう。ともあれ、まだ1/3強が未装着な状況にあるのも事実。

過去7年間における子供の年齢別の使用率を見たのが次のグラフ。

↑ 子供の年齢階層別チャイルドシート使用率
↑ 子供の年齢階層別チャイルドシート使用率

概してどの年齢区分でも年々上昇していることが確認できる。一方、子供の年齢が上になるほど装着率が落ちる傾向に変わりは無い。子供が窮屈がることや、シートの買い替えが面倒なことなどの事由もあるが、リスクを考えればあまり好ましいとはいえない。特に5歳において直近では装着率が約4割でしかないのが目に留まる。

チャイルドシートを装着していない場合、どのような状況か

チャイルドシートを付けていない場合、子供はどのような状況だったのか。それが分かるのが次のグラフ。

↑ チャイルドシート使用状況(2017年)
↑ チャイルドシート使用状況(2017年)

一番装着率の低い5歳児だが、大人用のシートベルトを着用している事例が2割近く確認できる。子供によっては5歳児でもかなり大きくなり、大人のベルトでも問題ないと判断したのだろう。また、車両のシートに座らせてベルトをさせていない事例も1/3強ほどおり、直上の事例「子供が嫌がる」「シート買い替えをしていない」の推測が正しいことが確認できる(なお道交法第71条の3第2項によれば「『適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有する幼児』はチャイルドシート使用の義務を免除される」(当然その場合、大人用のシートベルトの着用が義務付けられる)とあるため、今件のうち「大人用ベルト着用」は適切である可能性も多分にある)。

一方で1歳未満では「保護者の抱っこ」が1割強いるのが目に留まる。これもまた子供がぐずる場合を考えると「仕方ないかも」と思う面もある。しかし事故時のリスクはシートベルト未着用と変わらないことから、お勧めはできない(。法令上、原則的には認められない。但し特例もいくつかあり、例えば授乳やおむつの交換の時は道路交通法施行令第26条の3の2第3項第5号により、チャイルドシートの使用は免除される)。

取り付け・着座の仕方も肝心

チャイルドシートは単に取り付け、着座させればすべてよしというわけではない。「正しいチャイルドシートの固定の仕方をしているか」「正しいベルトのしめ方・着座方法をしているか」が成されていないと役割を果たせない。そこで「シートそのものの固定が正しく行われているか」「シートの座り方は間違っていないか」について確認した結果が次のグラフ。

↑ チャイルドシートそのものの取りつけと、シートでの着座状況(2017年)
↑ チャイルドシートそのものの取りつけと、シートでの着座状況(2017年)

チャイルドシートの取り付け状況においては、6割前後が「問題あり」判定となっている。リリースにはその詳細があるが、「問題あり」の7割前後が「腰ベルトの締め付け不足」との結果が出ている。次いで多いのは「座席ベルトの通し方」。いずれも業者に確認、調整をしてもらえば容易に改善は可能。

画像
↑ シート着席時の問題のある利用方法(2017年、空白は設問無し)
↑ シート着席時の問題のある利用方法(2017年、空白は設問無し)

シートでの着座状況は種類によって違いが見える。乳・幼児用では「ハーネスの締め付け不適正」「ハーネスの高さ調整」が多いのに対し、学童用では「体格不適格」「肩(腰)ベルトの通し方間違い」「座席ベルトのよじれ・ねじれ」などが上位に連なっている。体格不適格の場合は大人用のものを使うなりすれば良い。ベルトの通し方のミスなら正しい通し方を学んで実践してもらうことで、リスクを減らせることになる。

いずれにせよ、シートベルト同様にチャイルドシートもまた、法律上装着が義務付けられているのと同時に、「万が一」の際のリスクを確実に減らす安全策の一つ。「事故が起きるはずが無い」との確信が事実である保証などどこにもない。「後で悔やむ」の言葉通り後悔する場面に遭遇しないよう、正しい取り付けと着座を心がけて欲しいものだ。

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※「チャイルドシートの使用状況」と「チャイルドシートの取付け状況、着座状況」

使用状況調査・取り付け状況調査・着座状況調査の3通り行われており、使用状況調査は2017年4月20日から4月30日にかけて、自動車に乗車している6歳未満の子供を対象に全国99か所で行われたもので、有効回答車両数は1万0673台・対象人数は1万3016人。なお本調査では乳児用シート、幼児用シート、学童用シートを総称してチャイルドシートと呼んでいる。また、冒頭やリリース内にもある通り、道路交通法では6歳未満の子供の乗車に際しては、原則としてチャイルドシートの使用が義務付けられている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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