ハリウッドセレブは、どの民主党候補を支持しているのか
ハリウッド女優たちが、泣いている。アメリカ時間5日、エリザベス・ウォーレン上院議員が、大統領選から撤退を表明したのだ。
ウォーレンは、現地時間3日の「スーパーチューズデー」で、地元州であるマサチューセッツも含むどの州でも3位より上に食い込むことができず、党の指名を受ける可能性が事実上なくなっていた。それでも、立候補直後から強い支持を集め、ついこの間までは有力候補のひとりと考えられた彼女の撤退宣言は、多くのアメリカ人女性たちに大きなショックを与えたのである。テレビやラジオでは女性ジャーナリストやフェミニスト団体の代表などが悲しみのコメントをし、ツイッターではロザンナ・アークエット、アシュレイ・ジャッド、ミラ・ソルヴィーノなどが、「私はウォーレンに投票したのに」と、辛い気持ちを語った。
アークエット、ジャッド、ソルヴィーノは、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露で大きな役割を担った「#MeToo」運動の扇動者。ウォーレンを支持していた女性には、ほかにスカーレット・ヨハンソン、コンスタンス・ウー、サリー・フィールド、エイミー・シューマーなど、また男性には、マーク・ハミル、ジョン・レジェンドなどがいる。
当然と言えば当然だが、支持者の顔ぶれは、候補者本人の反映だ。アメリカでは、セレブの政治的発言が当たり前なので、それは、よりはっきりとした形で見える。
たとえば、2016年の選挙からずっとバーニー・サンダース上院議員を支持してきたのは、ブルーカラーの良き理解者であるマイケル・ムーアや、マーク・ラファロ、超リベラルのスーザン・サランドンなどだ。マイリー・サイラス(27)、ヘイリー・ビーバー(23)、アリアナ・グランデ(26)らが支持している事実は、若者の間でのサンダース人気を象徴すると言える。しかし、一方では82歳のジャック・ニコルソンや75歳のダニー・デヴィートなども抑えているなど、彼の支持層は広い。
「スーパーチューズデー」直前に撤退したピート・ブティジェッジは、意識高い系、洗練されたエリートと呼べる人たちの間で人気が高かった。ワインの洞窟での政治資金集めパーティがサンダースから槍玉に挙げられたのも、象徴的なエピソードだろう。彼の代表的支持者は、女優業よりもライフスタイルブランド「Goop」でぼろ儲けをしているグウィネス・パルトロウや、建築、インテリアのセンスが抜群で、家を改装しては高く売ったり、インテリア商品をコラボでデザインしたりもしているエレン・デジェネレスら。ほかには、エミー・ロッサム、マンディ・ムーアなどがいた。
一方で、「スーパーチューズデー」で勢いを盛り返し、最前線に躍り出たジョー・バイデン前副大統領を支持するのは、トム・ハンクス(63)やアレック・ボールドウィン(61)、シェール(73)などだ。メジャースタジオのトップにも支持者が多く、一定年齢以上の安定志向派が中心と言えそうである。ところで、2016年の大統領選前に「トランプに入れる」と語り、ニュースになったクリント・イーストウッドは、今回、共和党であるにもかかわらず「トランプではなくマイケル・ブルームバーグがいい」と発言している。だが、前ニューヨーク市長ブルームバーグは「スーパーチューズデー」でふるわず、翌日に撤退した。
撤退後、ブルームバーグとブティジェッジは、すぐにバイデンの支持に回っている。しかし、彼らを応援してきた人々が、そのまま彼らをフォローしてバイデン派になるとはかぎらない。ウォーレンは、まだ誰の支持に回るかを表明していないが、掲げる政策にサンダースとの共通点が多いことから、サンダースの支持者は彼女にこちら側に来てほしいと願っていた。しかし、逆にウォーレンはテレビのインタビューで、選挙運動中、サンダースの支持者にネットでさんざんひどいことをされたと明かしている。
それを聞いたウォーレンの支持者は、怒ってほかに回るのか。あるいは政策で判断し、サンダースに付くのか。いずれにせよ、決意ができ次第、彼女らはそれぞれに明らかにするだろう。それに、彼ら、彼女らには、違いよりも、共通するところのほうが大きいのだ。それは、トランプの再選だけは断じて許さないという確固たる目的である。2016年に無念の思いしたハリウッドは、この秋、見事なカムバックストーリーを語ってみせるだろうか。