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子どもを犯罪から守る方法:「イカのおすし」の活用法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:子どもを守り元気にしたい)(写真:アフロ)

■我孫子女児殺害事件から考える

千葉県我孫子市の女児殺害事件の捜査が続いています。用水路に置かれた、衣服を身につけていない遺体。まき散らかされたような所持品。ご遺族、関係者の心痛はどれほどでしょう。

犯罪被害の中には、防ぎようがなかったとしか言えないような被害もあります。犯罪被害をゼロにはできません。けれども、少しの工夫で防げる犯罪もあるでしょう。

子どもを守るためには、どこに気をつければ良いでしょうか。

■どの子どもでも狙われる

昔であれば、金持ちの子どもが、金目当てで誘拐されることに気をつけていたでしょう。しかし現在、身代金目的の誘拐は減っています。誘拐よりも特殊詐欺の方が、ずっと簡単に金を稼げるからです。

子どもを狙う犯人の動機は変化しています。だからこそ、すべての子どもに危険性があり、また警察による検挙が難しくなっています。

子どもが被害にあった近年の犯罪統計を見ると、毎年1000件前後の強制わいせつ事件が発生し、毎年100件前後の略取誘拐事件が起きています。事件が最も起きている場所は、いずれも路上です。

■犯人は迷った羊を狙う

略取誘拐事案の7割は、子どもが一人でいる時に発生しています。一人でいること自体が犯罪の危険性を高めますが、最も危険なのは孤立している子どもです。大人からも子どもからも気にかけてもらえない子どもを、作り出してはいけません。

■イカのおすし

子どもに教えたいこととして、「イカのおすし」があります。

  • いか:(ついて)行かない
  • の:乗らない
  • お:大声を出す
  • す:すぐ逃げる
  • し:知らせる

■子どもは簡単にだまされる

子どもの略取誘拐事案の半数は、子どもがだまされて自分からついいて行っています。子どもに、「怪しい人について行くな」「知らない人について行くな」と教えても、なかなか難しいのです。

犯罪者はたくみです。子どもを狙う犯罪者の中には、子どもの扱いのうまい人もいます。あっというまに、子どの友達になってしまいます。そうなれば、怪しくもなく、知らない人でもありません。怪しくなくても、ついて行ってはいけないと教えましょう。

■行動しても良いと教える

悪人は、子どもの善意を悪用します。とても困ったふりをして、自動車に乗せようとしたりします。人を見たら犯罪者と思えと子どもに教えるべきではないでしょう。それでは、必要な時に誰かに助けてもらうことができなくなります。

しかし、相手がたとえ困っていても車に乗る必要はない、「車に乗って」と行ってくる人は、マナー違反だから従わなくて良いと教えましょう。

人間の直感は、しばしば当たります。怖いと思ったらすぐ離れても良い、すぐ逃げても良いと教えましょう。それは、マナー違反でも悪いことでもないと教えましょう。「それはできません、さようなら」とひとこと言って、逃げて良いと教えましょう。

■大声を出す練習

防犯ブザーも、大声も、いざとなるとできないのが普通です。ふざけっことは異なる、緊急性が周囲に伝わるような大声を出すことを、経験させましょう。

■知らせることができるように

何かが起きている時、すぐに大人に話せるようにして起きましょう。不安を感じても、家族や周囲に話ができない子もいます。普段からの関係づくり、コミュニケーションが大切です。自分が悪いことをしてしまったと子どもが感じることもあります。どんな時でも、一人で悩まないで親や先生に話して相談しても良いと思えるような、良い人間関係を作って起きましょう。

子どもへの加害者は、見知らぬ不審者とは限りません。身近な知り合いが加害者になることもあります。子どもは、その人に悪いと思って、誰にも言えないと感じることがあります。しかし、そんな行為を続けることは、その人にとって良くないことです。だから話しても良いのだと、子どもに教えましょう。

子どもが他の子どもの秘密を知ることがあります。友情を重んじれば、大人には話せません。しかし、友情よりも友人の人生や命の方が大切だと教えましょう。自分のことでも友人のことでも、信頼できる大人に知らせることができるように、普段から教えましょう。

■防犯マップ:入りやすく見えにくい場所

犯罪が起きやすい場所は、入りやすく見えにく場所です。自宅や学校の周りに、そんな危険な場所はないか、子どもと一緒に見て回りましょう。

この防犯マップづくりは、子どもを怖がらせることが目的ではありません。むしろ、地域を知り地域を愛することにつなげましょう。その方が、結果的に防犯になり、子どもの健康のためになります。

■子どもを守るために

大きなニュースになるような事件が起きれば、親も地域も敏感になるのは当然です。しかし子どもの危険は、それだけではありません。交通事故は多く起きます。家庭内の虐待も起きます。危険だからといってどこにも行かせないことが、子どもを守ることではありません。

子育ては、トータルに考えましょう。子どもの心と体をきたえ、豊かな経験をさせましょう。それが、子どもを守ることにつながるでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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