後発地震注意情報 無視できない100回に1回の重み
報道でご存知の方も多いと思いますが、12月16日から、巨大地震の発生に注意を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が始まりました。この情報は一体どんなもので、私たちはどう受け止めるべきなのでしょうか。
後発地震とは?
まず「後発地震」という言葉が聞き慣れません。後発地震というのは、先に発生する大きな地震(先発地震)に続けて発生する、さらに規模の大きな地震のことを言います。2011年の東日本大震災では、マグニチュード7.3の先発地震の2日後に、マグニチュード9.0の超巨大地震が発生しています。
一度、ある程度大きな地震が発生すると、その後、平時よりも巨大地震が発生する確率は高まることが知られています。このことに加え、北海道や三陸沖の日本海溝・千島海溝沿いでは、巨大地震が切迫していることを鑑み、今回、この情報が導入されたというわけです。
どうなると発表される?
この情報は、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の震源想定域で、マグニチュード7.0以上の地震が発生した場合に発表されることになっています。対象地域は、最大クラスの地震により、津波高3メートル以上または震度6弱以上の揺れが想定される地域を基本とし、北海道~千葉県にかけての182市町村が指定されています。情報が発表されたら、1週間程度は、すぐ避難できる態勢で寝るなど、平時よりも防災対応を強化して過ごす必要があります。ただ、事前の避難までは呼びかけないことになっています。
100回に1回程度でも…
事前の避難まで求められないのは、後発地震の発生確率に要因があります。情報自体は2年に1回程度出る想定ですが、そのうち、実際に後発地震(M8クラス以上)が発生する確率は、100回に1回程度です。いわば、ほとんどは「空振り」に終わってしまうわけです。ここに、この情報を受け取る難しさがあると感じています。
ポイントは、空振りを「練習」と受け取れるかどうかだと思います。情報が出ても、何も起きなかったということが続くと、人は、「どうせまた次も何も起きない」と思ってしまいます。いわゆるオオカミ少年です。しかしながら、100回に1回が、いつやってくるかわかりません。巨大地震が切迫していることを考えれば、次が100回に1回かもしれません。仮に100回に1回に当たってしまった場合、無警戒であるのと、対策をとっているのとでは、被害の大きさがまったく違ってきます。
国の想定では、最悪の場合、約19万9000人(日本海溝地震の場合)が亡くなるとされていますが、対策を取ることにより、これを8割も減少させることが可能とされています。こうなると、やはり毎回対策を取り続けるしかありません。
これは、西日本豪雨の時にあった出来事です。
崖の近くに住む高齢の母親を、大雨のたびに避難させていた女性がいました。その回数は5年間で20回以上にも及び、すべてが「空振り」だったそうです。そんな中、あの西日本豪雨が起き、ついに崖が崩れ、土砂が家の中に流れ込みました。ただ、その時もしっかり避難していて、難を逃れたそうです。
後発地震が起きなくても、これは練習だった、練習しなければ本番は上手くいかないと思うことが大切です。
何もない時こそ備えを
地震は、気象のような予測が難しい現象です。今回、後発地震の対策を強化する期間は1週間程度とされていますが、1週間経過してから大きな後発地震が発生する可能性もあります。また、先発地震を伴わず、いきなり巨大地震が発生する可能性もあります。何も起きていない今こそ、できる備えを進めておいていただきたいと思います。