全国統一教会被害対策弁護団 旧統一教会に誠実な対応を求める談話発表 裁判所には早期公平な解決を求める
全国統一教会被害対策弁護団は、23年2月22日に第1次の集団交渉の申し入れを旧統一教会に行い、現在、第6次まで行われています。しかしながら、教団側は教会本部ではなく信徒会関係者が対応するなど、交渉が遅々として進まないなか、同年7月31日に、高額献金などの被害を受けた被害者109名(申立人102名)が約35億7774万円の支払いを求めて、東京地方裁判所に集団民事調停の申し立てを行いました。
旧統一教会に誠実な対応を求める
すでに最初の集団交渉の申し入れから1年近くが経過するなか、24年1月29日に、弁護団と統一教会の代理人の双方が出席する形で、第1回の民事調停が開かれました。村越進弁護団長は、2月8日に行われた司法記者クラブの会見にて、旧統一教会への「誠実な対応を求める弁護団長談話」を出しました。
そのなかで、旧統一教会が「期日に代理人が出席し本調停そのものに対応してきたこと自体は評価できる」としながらも「これまでの交渉段階と同じように、いままでの司法判断を無視し、いたずらに事実・評価を争うことは、解決を引き延ばして被害者の苦しみを長引かせるだけであり、甚だ不誠実だと言わざるを得なくなる」として、十分な調査と献金記録の開示を行うように求めています。
いかにして早期解決に向かう可能性を高められるのか
川井康雄弁護士からは、裁判所に提出した準備書面についての説明がありました。
「109名の申立人がおりますが、ご高齢の方が多いのが実情です。60歳以上の方が3分の2以上で、75歳以上が19名という状況です。これまで統一教会の裁判は長期に及ぶものが多く、ご高齢の方々に長期的な解決を求めるのは難しい状況です。どうすれば早期解決に向かう可能性を高められるのか。その観点で4つの準備書面を出しました」
1つ目は「旧統一教会による被害の典型的なものはどういうものかを裁判所に知っていただきたい」との趣旨で、これまでの裁判例が示してきた旧統一教会の違法行為と認定されたポイントを明らかしたものを出しています。
2つ目は、物品販売についてです。川井弁護士は「(旧統一教会は)物品の販売会社が宝石などを売っていますが、(教団は関係ないので)『販売会社に問い合わせしてくれ』と言い、統一教会の側では対応しない姿勢を示しています。しかしこれについて、すでに裁判例で統一教会の責任が認められていますので、それを説明しています」と話します。また、韓国の清平における先祖解怨による献金被害がかなりあるとした上で「今後、教団側は韓国の責任なので、日本の法人は責任を負わない、そういう主張がなされていくことはわかるが、そうではない。裁判例でも清平での献金被害についても日本で勧誘されているわけで、日本の法人にも責任があることは認められています。これまでに決着した争点を蒸し返させない内容になっています」(同弁護士)
3つ目は統一教会側と我々の間で大きな開きがある20年の除斥期間についてです。「近年、裁判所でも20年で区切りをつけるのはおかしいという判断を少しずつ示して下さっていますから、そういう点も引用して、統一教会の被害は除斥期間で切られるべきではないんだということを明らかにしています。4つ目が献金記録の開示を求める内容になっています」(同弁護士)
指定宗教法人及び特別指定宗教法人に関する運用基準案への意見について
昨年12月に成立した特定不法行為等被害者特例法に関して、文化庁は2月3日までにパブリックコメントの募集を行いました。木村壮弁護士からは、弁護団が出した、指定宗教法人及び特別指定宗教法人に関する運用基準案への意見についての報告がありました。
「特例法において指定宗教法人に指定されると、財産目録等の財務書類について通常1年ごとに開示すべきものが、四半期ごとに開示するというような義務が課されることや、不動産の処分について一月前に所轄庁に事前に通知する義務が課されることになりました。民事保全の助けになる制度です。それに加えて特別指定宗教法人に指定されますと、被害者において所轄庁に提出された財産目録等の写しを閲覧できることになっております」
「指定の要件をどのように考えるのか」が重要
ただし木村弁護士によると「指定の要件をどのように考えるのか」が重要になるといいます。
「指定の要件が厳しくなってしまうと、財産保全のための制度ができたものの、それが利用できなくなりますので、指定の要件について、所轄庁がどういう基準を作ろうとしているのかに大きな関心を寄せており、その基準案に対して意見を述べました」
被害者自身が使える制度としては、財産目録等の写しを閲覧する点だとしています。
「これは特別指定宗教法人というものに指定しなければならないわけですが、指定されるためには『財産の隠匿又は散逸のおそれがあることが認められなければいけない』としています。文化庁の基準案では『抽象的な恐れがある』だけでは、特別指定宗教法人への指定は難しいとなっています。これまで年間数百億というお金を海外に送金してきたような、過去の統一教会の財産の動かし方の経緯からすれば、今後も同じようなことが行われる可能性というのは非常に高いわけですから、その点を十分考慮して特別指定宗教法人への指定も積極的に行うべきだという意見を述べております」(木村弁護士)
盛山文科大臣が旧統一教会の関連団体から選挙応援を受けていた件について
盛山文科大臣が旧統一教会の関連団体から推薦状受け取り、選挙応援を受けていたという報道について質問もあり、弁護団として総意ではなく、あくまでも個人の見解として、それぞれの弁護士から話がありました。
山口広弁護士は「私自身は去年の10月13日の解散命令請求を行う前日に盛山大臣が記者会見で非常に良いことを言ってくれていると思い、感激しました。大臣があそこまで言っていただけることについては高く評価しています。特に宗教法人法81条1項1号だけでなく、2号の目的を逸脱したことを組織的にやっている点に踏み込んで、解散命令請求の主張をなさったということについて、文科省の方も頑張ったと思いますが、大臣の決裁がなければできないわけですから、それはよく言ってくれたと思っていました。しかし、昨今の報道を見て正直言ってがっかりするところもあります」としながらも「宗教法人解散命令に向けて、現場を励ましながら大臣としての責務をきちんと果たしていただきたい」とも話します。
お墨つきを与える観点からは問題。しかし解散命令請求は速やかに進めるべき
阿部克臣弁護士は「個人の意見としては、もし統一教会と政策協定を結んで選挙協力を受けたとすればやはり問題かなと思います。全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)としては、以前から、政治家と統一教会との関係を絶って下さいというお願いもしていますので、(教団に)お墨つきを与えるという観点からも、それ自体は問題となる行為だと思います。現在、解散命令請求の裁判の第1回尋問期日が2月22日に行われる予定ですので、大事なのは解散命令請求の手続きをきちんと粛々と早期に進めていただくことです。大臣の責任論はあるのかもしれませんけれども、解散命令請求に何らの影響も与えることなく速やかに進めていくことが大事だ」と話します。
徐々にですが、旧統一教会への解散命令の司法判断の時が近づいています。それに対する焦りをみせるように、盛山文科大臣や林官房長官へ対して、過去に旧統一教会の関連団体との関係をもってきた事実を、関連団体の信者らが報道を通じて、白日のもとにさらしてきています。それは解散命令請求を進める政府を敵(サタン)とみて行動をして、抗おうとしている姿にも思えます。
しかし大事なことは、過去に旧統一教会によって長年にわたって生み出され続けた甚大な被害をいかに解決するかです。被害者の多くは高齢になってきていますので、旧統一教会の側も論点をずらさずに、しっかりと被害者に対して目を向けて、いかに真摯な対応ができるのかが求められています。