「エヴァンゲリオン」が「シンカリオン」に!? “真夏の夜の夢”のようなコラボ
8月14日(火)の深夜、テレビの画面に「緊急再放送」なる文字が現われて、驚きました。災害時とかの「緊急放送」ではなく、「緊急再放送」ってなに? と思ったわけです。
実はこれ、毎週土曜の朝7時から放送している、アニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』(TBS系)の中の1本、第31話が「再放送」されたのでした。しかも、この第31話の本放送は、わずか数日前の11日(土)のこと。普段は行っていない再放送ですが、わざわざ深夜に場所を設けて実施したのです。
『新幹線変形ロボ シンカリオン』
ちょっと説明しますね。まず『新幹線変形ロボ シンカリオン』は、ジャンルとしては変身(変形)ロボットアニメということになるんですが、変形するのが実在する「新幹線」の車体である、というところがミソです。
主人公の小学5年生・速杉(はやすぎ)ハヤトが、「運転士」として乗り込むのは、新幹線変形ロボ「シンカリオンE5はやぶさ」。普通の新幹線「はやぶさ」の車両が、ハヤトの操縦によって超進化速度に突入、加速、到達というプロセスを経ながら変形していく場面は圧巻です。
そして、シンカリオンは「漆黒の新幹線(ブラックシンカリオン)」が送り込んでくる、「巨大怪物体(きょだいかいぶったい)」と呼ばれる謎の巨大ロボと、日夜闘っているのです。E5はやぶさの必殺技は、胸から放射する怒涛のビーム「グランクロス」。
さて、緊急再放送された第31話ですが、いつもと違ったオープニングクレジットで、黒バックに白文字がタテヨコに配置されています。そこには「第参拾壱話 発進!シンカリオン500TYPE EVA」とありました。
そう、この回は、『新幹線変形ロボ シンカリオン』と『新世紀エヴァンゲリオン』のコラボレーションだったのです。反響の大きさゆえの「緊急再放送」でした。
『第参拾壱話 発進!シンカリオン500TYPE EVA』
夏休み中のハヤト少年が、大好きな新幹線の撮影中に、たぶん熱中症だと思うのですが、倒れてしまいます。気がつくと、見たことのない風景がそこに広がっていました。なんと、『新世紀エヴァンゲリオン』ファンにはお馴染みの街である、「第3新東京市」です。
また、ハヤトがいきなり出会ったのは、洞木コダマ・ヒカリ・ノゾミの3姉妹。『エヴァ』には、次女のヒカリが、主人公・碇シンジのクラスメイトで学級委員長として“出演”しています。姉や妹は初めて見ました。
さらに『エヴァ』の聖地でもある「箱根湯本駅」なども見えます。第3新東京市、洞木ヒカリ、箱根湯本と続けば、『エヴァ』ファンは、もうアレを待つしかありません。
庵野、じゃなくて案の定、突然、不気味な敵が姿を現します。その名も「キングシトエル」ときた。「おお、やっぱり使徒だ」と思う間もなく、ハヤトと「シンカリオンE5はやぶさ」は危機に直面します。剣をはじめ、通常の武器が通用しないためです。
で、そこに救世主のごとく登場するのが、急きょ駆けつけてきた山陽新幹線「500TYPE EVA」です。操縦しているのは、まさにシンジくんなんですね。この場面に流れる曲はもちろん、「♪残酷な天使のように 少年よ 神話になれ」と歌う、あの「残酷な天使のテーゼ」でした。
一気に加速した「500TYPE EVA」は、「シンカリオン500TYPE EVA」へと変形します。ハヤトとシンジ。「E5はやぶさ」と「500TYPE EVA」。この2体が並んでダッシュしていくカットなどの迫力は想像以上で、両者は力を合わせて「シト」に挑み、見事勝利します。
帰りの電車を待つハヤトに向かって、シンジが言います。「こっちの世界は僕が、ハヤトくんは君の世界を、鉄道を守るんだ」。そして握手。
さらに、駅のホームにある「立ち食いそば」の店の中には、綾波レイがいました。そして、例によって「にんにくラーメン、チャーシュー抜き」の注文。いやあ、ここまでやってもらえば、『エヴァ』ファンも納得ではないでしょうか。
この第3新東京市での出来事は、ハヤトが熱中症で気を失っていた間に見た「夢」だったということになりますが、なんとも刺激的な真夏の夢でありました。
「真夏の夜の夢」のようなコラボ
今回のコラボが実現した背景には、『エヴァ』庵野秀明監督の鉄道好きと、大きな度量があったのだと思います。また、それに中身で応えた『シンカリオン』制作陣も立派です。
ここまできっちり、しっかり描き込むことによって、双方の世界観を損なうことなく、いや、むしろ「掛け算」をしたように両方の魅力を感じることができる、独自の「作品世界」が成立していました。「コラボ」としてのレベル、そして作り手たちの熱量に拍手です。
よもや庵野監督の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2020年公開予定)に、ハヤトやシンカリオンがストレートに登場することはないでしょうが(笑)、映画『シン・ゴジラ』でも見せた監督の“鉄道愛”は、なんらかの形で新作にも投影されるかもしれません。