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ゲレロだけじゃない! ブルージェイズでMLB初昇格を果たしたもう1人の2世選手

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ブラディミール・ゲレロJr.選手と仲良く笑顔をみせるキャバン・ビジオ選手(右)(写真:REX/アフロ)

【有望2世選手とは別にMLB初昇格を果たしたもう1人の2世選手】

 シーズン開幕前から新人王の有力候補といわれている、ブルージェイズのブラディミール・ゲレロJr.選手をご存じの方は多いのではないだろうか。

 彼の名前を見ればすぐに理解できると思うが、エキスポスを中心にMLB在籍16年間でMVP受賞1回、オールスター戦出場9回を誇り、昨年堂々の殿堂入りを果たしているブラディミール・ゲレロ選手の息子だ。

 まだ若干20歳ながら4月26日にMLB初昇格を果たし、ここまで38試合に出場し、7本塁打を記録している。まだ打率が.255に留まっており、決して期待通りの活躍とまではいかないが、彼の打球速度がすでに今シーズンのMLBトップ10に2つ(2位と9位)ランクインするなど、早くも強打者の片鱗を覗かせている。

 ではゲレロJr.選手に注目が集まる中、ブルージェイズにはもう1人MLB初昇格を果たした2世選手がいることをご存じだろうか。

【父親は通算3000安打を達成している殿堂入り選手】

 キャバン・ビジオ選手、24歳。ゲレロJr.選手から約1ヶ月遅れ5月24日にMLB初昇格を果たしている。こちらも「ビジオ」というラストネームから想像がつくと思うが、アストロズ一筋20年で通算3060安打を記録し、2015年に殿堂入りしているクレイグ・ビジオ選手の息子だ。

 ビジオ選手は高校卒業時の2013年にフィリーズから29巡目でドラフト指名を受けたが、ノートルダム大学に進学。そして今度は大学3年の2016年にブルージェイズから5巡目でドラフト指名を受け、プロの道へ進んだ。

 プロ入り後は順調にマイナーリーグのレベルを上げていき、昨年はシーズンを通して2Aに在籍した後、オフには若手有望選手の登竜門といわれるアリゾナ秋季リーグに参加。今年は3Aでシーズン開幕を迎えていた。そして3A在籍2ヶ月でMLB昇格を果たしたのだ。

【父親譲りのオールラウンド選手】

 ビジオ選手の最大の特徴は、何といっても父親譲りのオールラウンド選手だという点だ。父クレイグ選手は元々捕手だったが、チームの要請で外野、二塁にコンバートされ、それぞれのポジションで先発を任され、特に二塁手として4度のゴールドグローブ賞を獲得している。

 ビジオ選手もマルチのポジションをこなせる器用な選手で、MLB昇格後1ヶ月も経っていないのに、すでに二塁、一塁、右翼、指名打者で先発出場を果たしている。すっかり“スーパー・ユーティリティ”としてチームに貢献している。

【13日のオリオールズ戦で1試合2本塁打を記録】

 ただマイナーでの通算打率が.255からも分かるように、決して優れた打撃力を有している訳ではない。それを物語るように、MLB昇格後も打撃面では苦しんでおり、打率は1割台に低迷している。

 しかし13日のオリオールズ戦に「7番・右翼」で先発すると、2回の第1打席に先制本塁打(今シーズン2本目)を放ち、さらに7回にもこの日2本目となる本塁打を放つなど、いよいよ打撃面でもアピールし始めている。

 ちなみにこの試合は12対3でブルージェイズが圧勝。ビジオ選手だけでなく、ゲレロJr.選手も3安打2打点の活躍で勝利に貢献している。

【今シーズンは2世選手の当たり年?】

 それにしても今シーズンは注目されている2世選手が多い。MLB公式サイトが発表している2019年若手有望選手のトップ100人で第1位に輝いたのが、パドレスのフェルナンド・タティスJr.選手だ(ゲレロJr.選手は2018年の第1位)。

 こちらも名前からすぐ理解できるように、カージナルス時代の1999年に1イニングに2本の満塁本塁打を放ったことで有名になったフェエルナンド・タティス選手の息子だ。

 彼もゲレロJr.選手同様、若干20歳ながら開幕メジャー入りを果たすとともに、先発遊撃手の座を獲得。シーズン開幕から期待通りの活躍をしていたが、4月30日に左ハムストリングの負傷で故障者リスト入り。今月6日に戦列復帰し現在も打率3割台をキープするなど、こちらも新人王有力候補の1人に挙げられている。

 さらに2019年の若手有望選手ランキングで第5位に入っているボー・ビシェット選手も、かつてロッキーズなどで主軸打者として活躍したダンテ・ビシェット選手の息子だ。彼も何とブルージェイズに所属している(現在は左手亀裂骨折ため戦線離脱中)。

 これからも2世選手たちがMLBを盛り上げてくれそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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