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「原発処理水」では日米対中韓! 中国が「対日報復」として逆「日本包囲網」か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
青瓦台で相星孝一駐韓日本大使に信任状を捧呈する文在寅大統領(青瓦台HPから)

 日本政府の福島原発汚染処理水海洋放出方針は隣国の中国と韓国が日本大使に直接抗議するなど猛反対していることもあって国際社会に波紋が広がっている。

 日本は「海洋放出に反対しているのは韓国と中国だけ」と言い、韓国は「賛成しているのは米国だけ」と言い返すなど両国は舌戦を演じ、国際世論を味方に取り付けることに腐心している。

 福島原発が太平洋に面していることから処理水は太平洋に放出されるものとみられるが、太平洋国家でもあり、世界で最も影響力のある超大国・米国が日本の海洋放出決定への支持を表明したことは日本にとっては頼もしい限りだ。また、原発のチェック機構である国際原子力機関(IAEA)が「日本の決定を歓迎する」との事務局長名義の声明を発表したことも日本にとっては心強いだろう。IAEAのお墨付きはまさに、「水戸黄門の紋所」のようなもので「控え、控えおろう、この葵の紋所が目に入らぬか」で反対派を静めることができるかもしれないからだ。

 だが、事はそう単純ではない。現実は脚本通りにはいかない。外交、経済力で米国と肩を並べつつアジアの大国・中国と日本の隣国・韓国が阻止に向け共闘しているからである。

(参考資料:「原発処理水」海洋放出問題で文在寅政権を突き上げる韓国の保守野党)

 中韓両国は日本の方針が伝えられた翌日(14日)には外務省局長レベルの第1回「海洋協力対話」(テレビ会議)を行い、この問題について両国が引き続き緊密に連絡を取り、「国際社会とともに必要な措置を取る」ことで意見の一致を見ている。

 特に中国政府はクアッド(日本、米国、オーストラリア、インドの4か国の安全保障や経済を協議する枠組み)などで米国と一緒になって中国に包囲網を掛けようとする日本への「報復措置」として日本に逆包囲網を掛けようとしている。何よりも、周辺国の韓国のほかに北朝鮮、ロシア、そして歓迎すべきは中国と対峙している台湾までもが反対の立場を表明していることが中国を強気にさせている。

 台湾は外交部報道官の声明を通じて日本に対して「環境保護団体などの憂慮を伝え、各界の多元的な意見に向き合うよう要請してきた」と懸念を伝え、また台湾の原子力委員会も「日本側へ(放出に)反対の立場を繰り返し伝えてきた。日本の決定は遺憾だ」と不満を表明していた。

 ロシアは何が何でも反対と言う立場ではないもののロシア外務省報道官が「(日本が(事前に)ロシアを含む近隣諸国との協議が必要と考えなかったことは残念である」として「漁業を含む他国の経済活動に支障を来さないよう期待する」との声明を出していた。

 周辺諸国だけでなく、太平洋の諸国・諸島からも「深い懸念」が表明されいることも中国をその気にさせているようだ。

 報道によると、太平洋諸島フォーラム(PIF)のメグ・テイラー事務局長は「日本政府が太平洋諸島フォーラムの加盟国と追加協議を行い、加盟国すべてが満足できる独立の専門家による検討が行われるまで、多核種除去設備(ALPS)の処理水の排出行為を保留することを緊急に求める」との声明を出していた。PIFにはオーストラリアやニュージーランドを加えた14かの国と地域が加盟している。

 さらに昨日(22日)は中米の8カ国が韓国のロビー活動が功を奏したのか、汚染水の海洋放出決定に懸念を表明する共同声明を出していた。

 韓国の外交部によると、コスタリカで開かれた韓国と中米統合機構(SICA)との次官級会議では汚染物質の海洋放出が招く深刻な状況に深い懸念が示され、太平洋地域での海洋汚染に対する国際社会の共同対応の必要性が強調されたとのことだ。

 SICAにはエルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、ベリーズ、ホンジュラス、ドミニカ共和国の8か国が加盟しているが、韓国外務省は「太平洋を共有する非アジア諸国が声を上げたことに意義がある」と強調していた。

 中韓の外交ロビー活動の賜物でもないが、国連人権理事会(UNHRC)に所属す3人の特別報告者が「放出は太平洋地域の何百万もの命や暮らしに影響を与えかねない」と憂慮を表明したことはIAEAの「賛成」を相殺するにはほど遠いが、中韓には反対運動を展開するうえで側面支援となっている。

 すでに世界24カ国の311の環境団体から「福島第一原発の汚染水を海洋に放出してはならない」とする書簡が日本の経済産業省に届けられたと伝えられているが、中韓両国は日本に圧力を掛けるためさらに国際社会で反対の機運を高めていく構えだ。

(参考資料:日本の「原発処理水放出」への対応に苦慮する文大統領 2008年の「米国産牛肉輸入反対デモ」がトラウマ)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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