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台風10号が鹿児島県に上陸して九州横断 動きがゆっくりで各地で記録的な大雨

饒村曜気象予報士
九州を横断中の台風10号の衛星画像(8月30日15時)

台風10号の上陸

 非常に強い台風10号が、8月29日8時頃、鹿児島県薩摩川内市付近に上陸し、九州を縦断中です(タイトル画像)。

 台風10号は上陸後に暴風域はなくなりましたが、台風周辺には活発な雨雲があり、引き続き雨に対する警戒が必要です。

 また、台風周辺の暖かくて湿った空気が近畿から東北の広い範囲に流入しており、特に、静岡県から関東南部へは北上している活発な雨雲がかかっています(図1)。

図1 台風10号の進路予報(8月30日3時)
図1 台風10号の進路予報(8月30日3時)

 台風10号は、台風を動かす上空の風が弱いために動きは遅く、9月1日になっても、まだ近畿です。台風に関する情報は最新のものをお使いください

 予報天気図をみると、秋雨前線が東北に停滞していますので、台風から離れている北日本でも大雨に対する警戒が必要です(図2)。

図2 地上天気図と予想天気図(左:8月29日9時の地上天気図、中:30日9時の予想、右:31日9時予想)
図2 地上天気図と予想天気図(左:8月29日9時の地上天気図、中:30日9時の予想、右:31日9時予想)

 台風10号接近により九州南部に発表されていた、暴風特別警報・波浪特別警報・高潮特別警報は大雨警報等に切り替えられていますが、現在も西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨警報等が発表となっています(図3)。

図3 大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)の発表状況(8月29日23時27分現在)
図3 大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)の発表状況(8月29日23時27分現在)

台風10号による大雨

 台風10号の動きが遅いため、72時間降水量は、宮崎県えびの高原で853.5ミリを観測するなど、台風周辺や東海地方などで400ミリを超える大雨となっています(図4)。

図4 72時間降水量(8月27日0時から29日24時までの72時間)
図4 72時間降水量(8月27日0時から29日24時までの72時間)

 引き続き、台風の動きが遅いため大雨が続き、総雨量は多くなる見込みです。

強い雨の中心は、台風の中心付近から、台風周辺を北上している雨雲によって東海から関東南部となる見込みです(図5)。

図5 72時間予想降水量(8月30日0時~9月1日24時)
図5 72時間予想降水量(8月30日0時~9月1日24時)

 土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。

 また、気象庁は線状降水帯が発生した場合は、局地的にさらに雨量が増えるおそれがあるとして警戒を呼び掛けています。

【線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性のある地域と期間】
山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県 30日日中にかけて
徳島県、香川県、愛媛県、高知県 30日夜にかけて
岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 30日午前中にかけて

熱中症警戒アラート

 気象庁と環境省が共同で、全国59地域(都府県毎、北海道と鹿児島県・沖縄県は細分)を対象に、前日夕方と当日朝の1日2回、「熱中症警戒アラート」を発表しています。

 8月30日の前日予報では、京都・兵庫・和歌山・沖縄本島の4地域(全国の約7パーセント)に対して「熱中症警戒アラート」が発表されています(図6)。

図6 8月30日の熱中症警戒アラートの発表状況(前日17時発表)
図6 8月30日の熱中症警戒アラートの発表状況(前日17時発表)

 台風10号の接近・上陸により、熱中症に警戒が必要な地域は減少しましたが、安全というわけではありません。熱中症警戒アラートが発表になっていない地域でも、高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険がある「暑さ指数31以上の地域は、東日本から西日本・沖縄に広がっています。

 長く続いて暑さによって体力が落ちていることが考えられますので、引き続き暑さ対策に努めてください。

 熱中症の危険性がしてきされた令和4年(2022年)の熱中症警戒アラートの発表地域は889地域(のべ)でした。

 その翌年、つまり昨年になりますが、令和5年(2023年)は、観測史上一番の暑さとなり、熱中症警戒アラートは1232地域と急増しています(図7)。

図7 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図7 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 しかし、今年は、8月29日の段階で1466地点と、観測史上一番暑かった昨年をすでに約19パーセントも上回っています。つまり、今年は、記録的な高温となった昨年以上に熱中症になりやすい、湿った暑さが続いているのです。

 熱中症になりやすい湿った暑さが続いているということは、日本付近に水蒸気が多量に流れ込んでいることを意味します。

 水蒸気が多量に流れ込むと、大気が不安定となって積乱雲が発達しやすくなり、雨量が多くなります。

 熱中症に対する警戒と、大雨に対する警戒がともに必要な時代となっています。

タイトル画像、図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:環境省ホームページ。

図7の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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