違法飲料だったグリューワイン! 今や、クリスマスシーズン定番の人気商品に
クリスマスシーズンに大人気のグリューワイン。柑橘系のフルーツやスパイスの香りが漂う温かいワインは、冷え切った身体と心をほっと温めてくれる。ところが、このグリューワイン、販売当初は違法飲料だった。(画像はすべて筆者撮影)
ワイン法政令に反したグリューワイン
そもそもグリューワインを飲む習慣は、2世紀頃からあったようだ。古代ローマ人が、ドイツにブドウの苗を持ち込んで栽培をはじめ、モーゼル川、ライン川流域を中心にワインつくりが盛んになった。
さて、ボトル入りグリューワインをドイツではじめて販売したのは、バイエルン州南西部アウグスブルクにあるワイナリーのオーナー・ルドルフ・クンツマン氏だった。ルドルフ氏は、1956年、オリジナルグリューワインを同市のクリスマスマーケットで販売した。
しかし、当時はワインに砂糖を入れて販売することは禁止されていた。ルドルフ氏は、「ワインの生産条件を規定した政令に反する」として、アウグスブルク市より罰せらた。
その後、グリューワインに砂糖を入れることは認可され、世界各国で支持される冬のホットドリンクとなった。
クンツマンワイナリーの現CEOユルゲン氏(ルドルフ氏の息子)は、「グリューワイン罰金通知(Bussgeldescheid)」は、今もクンツマンワイナリーの工場に飾ってある」と語る。
グリューワインはアルコール分7%から14,5% 以下が規定
グリューワインに用いるワインはアルコール分7%以上、14,5%以下とグリューワイン法で定められている。
注意点は、決して80度以上に温めないこと。78度以上になるとアルコールが飛んでしまうからだ。そして、味も苦くなり、糖分が熱分解によりヒドロキシメチルフルフラールという有機化合物となり、色も悪くなる。
あたためたワインは、レモンやオレンジの輪切り、シナモン、丁子などの香料を入れたまま1時間ほど置き、濾す。飲む前にカルダモン少々を振ると味もグッと深みがでる。ドイツのグリューワイン消費量は、一冬に5000万リットルにも上るそうだ。
ドイツでグリューワインといえば、赤ワインを用いたものが一般的だ。例外的にニュルンベルクでは、白ワインを用いたグリューワインも造っている。グリューワインは、10月末、冬時間に突入した頃から、小売店で2ユーロ程で販売され始める。
自分の好きなワインや香料をミックスし、味を調整しながら造るのも、この時期の楽しみのひとつだ。子ども用にはノンアルコールのキンダープンシュが人気。
ドイツグリューワイン女王アンネさんによれば、温めたワインは、冷たいワインよりも早く血中アルコール濃度が高まるため注意が必要という。例えば、コップ1杯(200ml)のグリューワインを飲むと、0.25プロミリになるそうだ。
また、グリューワインは、空腹時に飲まないこと。2杯飲んだら、必ず休憩。グリューワインに限らないが、アルコールを飲んだら、水を充分飲むことで、二日酔いや頭痛に効果があると、アンネさん。
24日聖夜まで、ドイツのクリスマスマーケットでは、グリューワイン、焼きソーセージ、甘いクリスマススイーツの香りが、訪問客を迎え続ける。