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違法飲料だったグリューワイン! 今や、クリスマスシーズン定番の人気商品に

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
グリューワインは、10月ごろからスーパーやディスカウントショップで入手できる

クリスマスシーズンに大人気のグリューワイン。柑橘系のフルーツやスパイスの香りが漂う温かいワインは、冷え切った身体と心をほっと温めてくれる。ところが、このグリューワイン、販売当初は違法飲料だった。(画像はすべて筆者撮影)

ワイン法政令に反したグリューワイン

そもそもグリューワインを飲む習慣は、2世紀頃からあったようだ。古代ローマ人が、ドイツにブドウの苗を持ち込んで栽培をはじめ、モーゼル川、ライン川流域を中心にワインつくりが盛んになった。

さて、ボトル入りグリューワインをドイツではじめて販売したのは、バイエルン州南西部アウグスブルクにあるワイナリーのオーナー・ルドルフ・クンツマン氏だった。ルドルフ氏は、1956年、オリジナルグリューワインを同市のクリスマスマーケットで販売した。

しかし、当時はワインに砂糖を入れて販売することは禁止されていた。ルドルフ氏は、「ワインの生産条件を規定した政令に反する」として、アウグスブルク市より罰せらた。

その後、グリューワインに砂糖を入れることは認可され、世界各国で支持される冬のホットドリンクとなった。

底冷えのする石畳を散策した後に飲むグリューワインは、最高のご馳走だ・フランクフルトにて
底冷えのする石畳を散策した後に飲むグリューワインは、最高のご馳走だ・フランクフルトにて

クンツマンワイナリーの現CEOユルゲン氏(ルドルフ氏の息子)は、「グリューワイン罰金通知(Bussgeldescheid)」は、今もクンツマンワイナリーの工場に飾ってある」と語る。

グリューワインはアルコール分7%から14,5% 以下が規定

グリューワインに用いるワインはアルコール分7%以上、14,5%以下とグリューワイン法で定められている。

注意点は、決して80度以上に温めないこと。78度以上になるとアルコールが飛んでしまうからだ。そして、味も苦くなり、糖分が熱分解によりヒドロキシメチルフルフラールという有機化合物となり、色も悪くなる。

あたためたワインは、レモンやオレンジの輪切り、シナモン、丁子などの香料を入れたまま1時間ほど置き、濾す。飲む前にカルダモン少々を振ると味もグッと深みがでる。ドイツのグリューワイン消費量は、一冬に5000万リットルにも上るそうだ。

ドイツでグリューワインといえば、赤ワインを用いたものが一般的だ。例外的にニュルンベルクでは、白ワインを用いたグリューワインも造っている。グリューワインは、10月末、冬時間に突入した頃から、小売店で2ユーロ程で販売され始める。

市販品では、甘すぎず、美味なワイナリーのグリューワインがお勧め
市販品では、甘すぎず、美味なワイナリーのグリューワインがお勧め

自分の好きなワインや香料をミックスし、味を調整しながら造るのも、この時期の楽しみのひとつだ。子ども用にはノンアルコールのキンダープンシュが人気。

ノンアルコールでもとても美味しいグリューワインと同じ香料を用いたホットドリンク
ノンアルコールでもとても美味しいグリューワインと同じ香料を用いたホットドリンク

ドイツグリューワイン女王アンネさんによれば、温めたワインは、冷たいワインよりも早く血中アルコール濃度が高まるため注意が必要という。例えば、コップ1杯(200ml)のグリューワインを飲むと、0.25プロミリになるそうだ。

また、グリューワインは、空腹時に飲まないこと。2杯飲んだら、必ず休憩。グリューワインに限らないが、アルコールを飲んだら、水を充分飲むことで、二日酔いや頭痛に効果があると、アンネさん。

24日聖夜まで、ドイツのクリスマスマーケットでは、グリューワイン、焼きソーセージ、甘いクリスマススイーツの香りが、訪問客を迎え続ける。

あたりが暗くなり始めるとクリスマスマーケットは人で一杯になる・フランクフルトにて
あたりが暗くなり始めるとクリスマスマーケットは人で一杯になる・フランクフルトにて
在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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