戦後の交通事故発生件数・負傷者・死者数をさぐる(2020年公開版)
警察庁は2020年1月6日付で、2019年における全国の交通事故死者(交通事故発生から24時間以内に死亡)の数が3215人に達したこと、前年2018年の3532人と比較すると9.0%減少したことを発表した。交通事故死者数は過去最悪だった「第一次交通戦争」と呼ばれている1970年の値、1万6765人の2割足らずにまで減少している。今回はこの発表資料などを基に、戦後の交通事故による死者や負傷者の動向を確認する。
次に示すのは交通事故の発生件数、それによる負傷者数、さらには死者数を一枚にまとめたグラフ。死者数は桁が少ないため、右軸でカウントしている。
このグラフは絶対値によるもの。ある程度状況の把握は可能だが、このグラフだけでは精査が難しい点もある。そこで数字的なピークとなった「第一次交通戦争」とも呼ばれる時期の1970年の値をそれぞれ基準値の100.0として基準を設定。その上で、交通事故発生件数・負傷者数・死者数の推移(指標推移)をグラフ化したのが次の図。最大値を示した時からどれだけ増加・減少しているかなどの状況把握は、この方がしやすい。
これらのグラフを見ると、いくつかの特徴が確認できる。
・「第一次交通戦争」まで交通事故発生件数・負傷者数・死者数はほぼ比例する形で増加している。
・1970年代に起きた「石油危機」(オイルショック)で自動車の運行頻度・台数は大幅に減少し(&省エネ化の促進)、それに伴い交通事故発生件数・負傷者数・死者数も減少している。
・その後再び各値は増加。いわゆる「第二次交通戦争」と呼ばれる1988年には、再度交通事故死者数が1万人を突破する。
・その後、これまでの「交通事故発生件数・負傷者数・死者数間の正比例」の関係が崩れる(指数グラフ、緑の矢印で示した部分)。
・2004年以降は事故発生件数、負傷者数そのものも減少傾向を見せている(車両台数も漸増からやや横ばいに落ち着いている)。
・この数年は死者数はゆるやかな減少、交通事故発生件数と負傷者数は急降下で減少中。
特に注目すべきなのは、1990年後半以降、「第二次交通戦争」以降に起きた、「交通事故発生件数・負傷者数」と「死者数」のかい離(かけ離れること)。これまで3項目の動きがほぼ正比例の関係にあったのに対し、1990年後半を境に「交通事故発生件数や負傷者数が増えても、死者数は減少する」傾向を見せたこと。もちろん死者数のカウント方法を変更したり小細工をした(事故発生から24時間で統計上の事故死からは外れる)わけではない。警察庁発表の「交通死亡事故の特徴および道路交通法違反取り締まり状況について」などで確認しても、30日以内、1年以内の死者数も同様に減少している。「交通事故における死者数そのものが減っている」ことに間違いは無い。
交通事故による死者数が有意な形で減っているのは、「医学の進歩」「自動車車両の(安全性向上面における)技術進歩」「交通ルールの規制強化」によるところが大きい。例えばシートベルトなら「1993年以降シートベルト着用者率は年々向上している」「シートベルト非着用時の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、着用時の場合の約15.3倍」などが裏づけとなる(高速道・専用道での前席におけるシートベルトの罰則付き着用義務化は1985年9月から。一般道では1992年11月から。後部座席では2008年6月から義務化)。
統計データを見る限り、自動車事故に対して行政・自動車メーカーが行っている努力は実を結びつつある。最終的には「年間交通事故死者数ゼロ」が目標だが、これは果たせぬ・永遠の夢。それでも関係者たちはその値を目指し、ダメージの軽減や交通ルール遵守対策、さらには事故そのものを回避するような仕組みを追い求めて続けて行く。一層の成果の発揮と事故関連の数字の減少に期待したいところだ。
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