Yahoo!ニュース

スパイク・リーが“百合のように白い”オスカーをボイコット宣言。黒人の間で強まる非難

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
オスカー名誉賞受賞者のリーは、授賞式をボイコットすると宣言(写真:ロイター/アフロ)

マーティン・ルーサー・キング・Jr.の生誕を祝う国民の祝日であるアメリカ時間18日(月、)映画監督スパイク・リーが、来月28日のアカデミー賞授賞式に出席しないことを宣言した。先週発表されたノミネーションで、主演と助演の男女優部門20人が、すべて白人だったことに抗議を示すもの。昨年も同じことが起こっており、“白すぎるオスカー”は2年連続だ。

人種の平等のために闘ったキング・Jr.の誕生日にこの声明を出すのは「偶然ではない」とリー。昨年11月、アカデミーから名誉賞を受賞している彼は、問題の根底が、アカデミーそのものではなく、製作にゴーサインを出すスタジオのトップにあるとも指摘している。

リーの声明の抜粋訳は、以下のとおり。

昨年11月、名誉賞をいただいたことに対し、アカデミーの会長シェリル・ブーン・アイザックと理事会にありがとうと言いたい。僕は、とても感謝をしている。しかし、僕と、妻トンヤ・ルイス・リーは、2月のアカデミー賞授賞式には主席しない。僕たちには、支持することができない。友人であるホストのクリス・ロックやプロデューサーのレギー・ハドリン、アイザック会長やアカデミーを侮辱するつもりはないが、2年連続で、俳優部門の20人が全員白人なんて、ありえるだろうか?

ほかの部門まで言い出すときりがないが、2年間で40人の俳優が全部白人で、ほかの色は無しとは。僕にらは演技ができないというわけ?なんてことだ!僕がこれをDr.マーティン・ルーサー・キング・Jr.の誕生日の30周年記念(注:この日が正式な祝日と認められてから30年目ということ)に書いているのは、偶然ではない。(途中省略)もう何年もの間、オスカーのノミネーションが発表されると、アフリカ系アメリカ人が少ないことを僕がどう思うかというマスコミの問い合わせで、僕の電話は鳴りっぱなしになる。今年も同じだった。メディアが、一度でいいから、白人の全候補者とスタジオのトップに、またもや全員が白人になったことをどう思うかと聞いてくれたらと思う。もしそれを聞いてくれた人がいるなら、僕は見逃してしまっていて、僕の間違いということになるが。

僕が見る限り、アカデミー賞は“本当の”戦いの場ではない。ハリウッドのスタジオ、テレビ局、ケーブルチャンネルのトップの人たちのオフィスがそう。ゲートキーパーたちは、そこで、何が製作されて、何をやめるかを決める。そこが重要なんだ。ゲートキーパーたち。ゴーサインを出せる人たち。(途中省略)僕らはその部屋にいない。そしてマイノリティがそこにいるようになるまで、オスカー候補者は百合のように白いままなのだ。

リーに先立ち、ほかのマイノリティたちも批判のコメントをしている。ジェイダ・ピンケット・スミスは、有色人種が、オスカー授賞式でほかの人に賞をあげるプレゼンターや、歌などを披露するパフォーマーとしては歓迎されても、実際に賞をもらうことはめったにないと指摘。「有色人種はみんな参加をやめるべきかしら?」とツィートしている。また、今年の授賞式でホストを務めるロックは、黒人のエンターテイナーを対象にしたBET(Black Entertainment Television)を持ち出し、「オスカーは白人のBETか」とツィート、それを受けてドン・チードルもジョークでフォローしている。

昨年も、ノミネーション発表直後に#OscarsSoWhiteのハッシュタグができ、激しいバッシングが起こったが、名誉賞の受賞者であるリーのボイコット宣言で、今年はさらにこの問題が脚光を浴びることになった。授賞式までの6週間、立ち上がる人は、これからも出てきそうだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事