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成田発ソウル行きが緊急引き返しで滑走路閉鎖、エミレーツ航空A380型機が中部にダイバート

タワーマン元航空管制官
(写真:Shutterstock/アフロ)

成田空港発ソウル仁川空港行きアシアナ航空105便が成田空港を16:40頃に離陸後まもなく、トラブル発生による成田空港への引き返しとともに緊急状態の宣言を発出しました。

アシアナ航空は海上で燃料投棄を実施し、離陸から約1時間後に再度成田空港に着陸。その後、約40分の間滑走路を閉鎖し消防車両による追従および外部点検、滑走路点検用の車両による滑走路点検がおこなわれました。

https://www.flightradar24.com/
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緊急機発生により滑走路閉鎖を伴うケースは限られます。エンジントラブル、ギアトラブル、油圧トラブルなど着陸後に滑走路への影響を及ぼすような原因による場合です。このようなケースでは滑走路着陸後に車両を滑走路上を走行させて、滑走路上に異常(部品落下、タイヤ片、液体漏れなど)がないか人間の目視による確認をおこないます。

滑走路閉鎖がどの程度の時間かかるのかは滑走路点検をしてみないことには判断がつきません。

実は成田空港の滑走路閉鎖の裏側で、ドバイより成田空港に向けて飛行していたエミレーツ航空318便が、房総半島南側の海上で目的地変更のため折り返し、17:45頃に中部セントレアに着陸しました。エミレーツ航空318便は総2階建ての世界最大の旅客機A380型機で非常に珍しい来客となりました。

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この判断は航空会社として非常に賢い判断といえます。なぜなら、中部セントレアから東京へは新幹線併用で向かえば2時間弱で到着できます。成田空港から都心へのアクセスを考えればそこまで大きな時間ロスにはなりません。大阪方面が最終目的地の旅客にとっても中部は利便性が高い立地です。

さらに、成田空港におけるトラブルが理由での目的地変更になりますので、弾力的運用の特例を使用する権利を得られます。弾力的運用とは、成田空港で離着陸が制限される24時を過ぎていても、成田空港における悪天候、滑走路閉鎖などによる遅延便に対し、空港管理者が認めた場合には24時半まで離着陸が可能になるという特例です。

中部セントレアから再度離陸し成田に向かい、成田空港で旅客を乗降させてドバイに折り返すことが可能な時間は十分にあります。

エミレーツ航空は、アシアナ航空の着陸後に成田空港の滑走路閉鎖がどの程度影響するか分からない状態で、混雑する成田を避けて中部セントレアへダイバートするという非常に賢明な判断を早期におこなったといえます。

(本記事を執筆中、すでに成田空港は通常運用を取り戻し、エミレーツ航空は中部セントレアを出発し成田空港へ向けて地上走行を開始しました。)

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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