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合わせて五冠が激突! 渡辺三冠vs豊島名人――竜王戦決勝トーナメント準決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
自身初の四冠達成を目指す渡辺明三冠(筆者撮影)

 広瀬章人竜王への挑戦者を決める第32期竜王戦(読売新聞社主催)決勝トーナメントは8月2日に準決勝、渡辺明三冠(ランキング戦1組優勝)と豊島将之名人(ランキング戦1組4位)の対局が東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。

 渡辺三冠(棋王・王将・棋聖)は本局が初戦、豊島名人(王位)はトーナメント初戦で史上最年少タイトル獲得が期待される藤井聡太七段を降しての勝ち上がりである。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

好調維持の渡辺やや優位か

<豊島名人の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

6月4日 棋聖戦五番勝負第1局

対渡辺明二冠○

6月19日 棋聖戦五番勝負第2局

対渡辺明二冠●

6月25日 王座戦本戦

対渡辺明二冠○

6月29日 棋聖戦五番勝負第3局

対渡辺明二冠●

7月3、4日 王位戦七番勝負第1局

対木村一基九段○

7月9日 棋聖戦五番勝負第4局

対渡辺明二冠●

7月12日 王座戦本戦準決勝

対羽生善治九段○

7月23日 竜王戦決勝トーナメント

対藤井聡太七段○

7月25日 王座戦本戦決勝

対永瀬拓矢叡王●

7月30、31日 王位戦七番勝負第2局

対木村一基九段○

<渡辺三冠の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月9日 銀河戦本戦Bブロック

対糸谷哲郎八段○ ※持将棋指し直し

5月14日 竜王戦ランキング戦1組準決勝

対木村一基九段○

5月22日 王座戦本戦

対久保利明九段○

5月29日 竜王戦ランキング戦1組決勝

対永瀬拓矢叡王○

6月4日 棋聖戦五番勝負第1局

対豊島将之棋聖●

6月14日 順位戦A級

対木村一基九段○

6月19日 棋聖戦五番勝負第2局

対豊島将之棋聖○

6月25日 王座戦本戦

対豊島将之名人●

6月29日 棋聖戦五番勝負第3局

対豊島将之棋聖○

7月9日 棋聖戦五番勝負第4局

対豊島将之棋聖○

 データが示すとおり両対局者ともトップクラスの棋士とばかり対戦しているが、最近10局以外も視野に入れると渡辺三冠は今年度に入ってから豊島名人以外に負けていないのが目を引く。

 もっとも豊島も渡辺以外に黒星を喫したのは本棋戦準決勝に進み、王座挑戦も決めたばかりの永瀬叡王のみ。この点ではほぼ互角といっていいだろう。

 ただし将棋の内容を精査したところ渡辺は大差をつけての勝ちがほとんどで、豊島は藤井七段を破ったのは評価できるが苦しい将棋を辛抱しての勝利が多い。今年に入ってからの直接対決は3勝2敗と渡辺がわずかにリード、総合すると渡辺やや有利と見る。

先手をどちらが握るかが勝負に影響

 データ以上にカギを握る大きな要素は振り駒でどちらが先手を握るかだ。

 ミスの少ないトップ棋士対決の常として、先手番が主導権を持ち、中盤の入り口まで微差のリードで進めることは確かであろう。

 

 戦形は豊島先手なら角換わりか相掛かり。渡辺先手なら矢倉か角換わりと予想する。

 ともあれ年内に豊島は竜王・名人を併せ持つ三冠復帰。渡辺は自身初となる四冠の可能性を残しており「令和将棋界」の行方を占う大一番だ。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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