Yahoo!ニュース

「井手口陽介の能力はスペイン1部レベルにある」レオネサ監督が語る、井手口の長所と改善点。

豊福晋ライター
33歳のルベン・デ・ラ・バレラ監督はリーグ最年少の期待の若手監督(写真:豊福晋)

 冬の移籍市場でリーズからスペイン2部のクルトゥラル・レオネサにレンタル移籍した井手口は、ここまで2試合に途中出場している。

 デビューとなったオサスナ戦では12分間プレーし、前節のセビージャ・アトレティコ戦では後半開始からピッチに立った。少しずつ出場時間をのばしており、先発出場する日も近そうだ。

 練習ではFWグアロチェナをはじめ、次々とチームメイトが寄ってきてはジェスチャー混じりに話しかけてくる。クラブによると、今後は状況に応じて通訳もつけるそうで、コミュニケーション面でもさらにスムーズになるだろう。

 スペインに来てから3週間。日々をともに過ごすルベン・デ・ラ・バレラ監督は彼をどう見ているのか。練習後に話を聞いてみた。

驚いた攻撃面でのポテンシャル

 スペイン1、2部で最も若いルベン監督はまだ33歳になったばかり。攻撃的サッカーを標榜し、試合中に頻繁にシステムを変えるなど戦術面のバリエーションも豊富だ。

 研究熱心で、かつてスペイン遠征に来た柏レイソルユースのサッカーに感銘を受け、日本サッカーについて調べたこともある。スペインでも期待の若手監督だ。

「しばらく一緒にやってみて感じたのは、井手口のミッドフィルダーとしての総合力の高さだ。もちろん彼のプレーは映像では見ていたし、加入前から知っていた。日本代表で決めたオーストラリア戦のゴールなどはスペインでも流されていたくらいだ。意外だったのは、守備の局面だけでなく攻撃面でも大きなポテンシャルを秘めているということ。これには少なからず驚かされた」

 球際の強さや相手への寄せのスピードは井手口の最大の持ち味だ。当然、これらの能力はルベンやテクニカルスタッフも把握済みだった。印象的だったのは、むしろそれ以外だという。

 これまでにプレーした2試合ではスペースへ精度の高いロングパスを通した。中盤の低い位置から縦パスも狙うなど、前への意識も強い。

「基本的に今は守備の仕事を求めることが多い。ただ、これから慣れてくるにつれ、より攻撃的なエリアで仕事をしてもらうことになる可能性もある。いわゆるテクニックを前面に出すドリブラーではないが、ボールを前に運ぶ技術は非常に高い。相手陣内での崩しの局面で貢献できるし、左右両足でシュートも狙える。攻撃でも目立てる、総合的なミッドフィルダーになれると期待している」

「あえて行かないこと」の重要性

 今後先発で起用するにあたり、さらに伸ばしていかなければならない点は何か。そう問うと、ルベンは待つことの重要性をあげた。

「守備面での井手口の持ち味は、対人や球際の強さだ。ピッチの上ではエネルギーに満ち溢れていて、すべてのボールを奪い返そうという気迫も感じる。これは彼の長所であるのは間違いない。しかし時にはボールホルダーに食いつかずに待つ、あるいはスペースを埋めることも大事になってくる。私が伝えたいと思っているのはその部分だ。あえて抑えること、リズムを落とすことも時には必要だと」

 現在は4−2−3−1のダブルボランチの一角で起用されている。特にアンカーがいない2ボランチの場合はむやみに出て行くのではなく、全体のバランスを見なければならない状況も出てくる。ルベンが教えたいのはそのあたりの判断力なのだろう。

「彼は複数のポジションでプレーできる。2ボランチの一角、中盤が3人の際はインサイドハーフだ。より相手のゴールに近い位置、ストライカーの近くの2列目でもやれると見ている。彼のように、これといった穴がなくすべての能力を高いレベルで兼ね備えたミッドフィルダーはなかなかいるものじゃない。すでにスペイン2部どころか、1部でもやれる力がある。来季はリーズに戻るが、今後の活躍も個人的に楽しみだね。夏のワールドカップでも、井手口は日本代表にとって重要な選手になるだろう」

 地元メディアでは、出場時間をのばしている井手口は次戦で先発出場するのではないかという見方も多い。

 攻守において持ち味を出しながら、判断力を磨いていくー。若く野心ある監督の下、井手口はスペインで濃密な時間を過ごしている。

ライター

1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、ライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み、現在はバルセロナ在住。伊、西、英を中心に5ヶ国語を駆使し、欧州を回りサッカーとその周辺を取材する。「欧州 旅するフットボール」がサッカー本大賞2020を受賞。

豊福晋の最近の記事