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ジェリー・スティラーが死去。ベン・スティラーの父、アメリカに愛されたコメディアン

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジェリー・スティラー(左)とベン・スティラー父子(写真:REX/アフロ)

 伝説的コメディアン、ジェリー・スティラーが亡くなった。息子ベン・スティラーのツイッターによると、自然死だったという。92歳。新型コロナで多くの命が失われる中、さらにひとりニューヨーカーがこの世を去ったことに、アメリカは心を痛めている。長年コンビを組んできた彼の妻アン・メアラは、5年前に85歳で亡くなっている。

 1927年、ニューヨークのブルックリン生まれ。第二次大戦に従軍し、終戦後にシラキューズ大学で演技を学ぶ。アンとは、1953年に舞台の共演で出会い、翌年、結婚。アイルランド系でカトリックのアンと、ユダヤ系のジェリーは、カルチャーのぶつかりあいや、身長差などをネタに、ニューヨークやシカゴのコメディクラブで人気を集めていく。そのうち、テレビからもお呼びがかかるようになり、大ヒット番組「The Ed Sullivan Show」にも、30回以上出演した。

 80年代には単独でのテレビ番組へのゲスト出演などが続いたが、90年代前半には、すでに爆発的人気を集めていたシットコム「となりのサインフェルド」に、ジェイソン・アレクサンダーの父親役でレギュラー出演が決まる。この番組は、1998年、全国民の58%が見るという記録的な視聴率を出し、惜しまれつつ終了。その後には、別のシットコム「The King of Queens」に出演。役は、主人公(ケビン・ジェームズ)の、義理の父。アンも時々ゲスト出演した。

 息子ベンとの共演もある。ベンが監督と主演を兼任した「ズーランダー」とその続編、ピーター&ボビー・ファレリー監督の「The Heartbreak Kid(日本未公開)」だ。「ナイト ミュージアム」では母とも共演しているベンは、親子で組むことについて、「とてもファニーな人たちだとわかっているから楽しい。この業界ではとくに、よく知っていて、心から信頼できる人と組めるのは、素敵なことだ。映画作りではリスクを負うことが必要とされるからね」と語っている。ただし、それらのキャスティングのアイデアは自然な形で生まれるもので、無理やりその機会を作ろうとはしないとも付け加えた。

 そのほかの映画に、「エアポート’75」「サブウェイ・パニック」など。舞台では、テレンス・マクナリーの「The Ritz」やデビッド・レイブの「Hurlyburly」に出演している。ゲスト出演したテレビ番組は、「ラブ・ボート」「LAW & ORDER ロー&オーダー」から「SEX & THE CITY」「グッド・ワイフ」まで、幅広い。

 そんなエンタメ界への貢献が認められ、L.A.の“ウォーク・オブ・フェーム”にも、彼の名が刻まれている。ただし、妻アンと一緒。空の上でも、ハリウッド・ブルバードでも、ふたりはずっと同じ星にい続けるのだ。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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