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石川恋を変えた佐々木蔵之介との時間

中西正男芸能記者
恩人・佐々木蔵之介への思いを語る石川恋

 「CanCam」のモデルとしても活動する女優の石川恋さん(25)。2013年、書籍「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(通称・ビリギャル)の表紙モデルを務めたことで一躍注目を集めましたが、その後、女優として多くの作品に出演。10月11日スタートのフジテレビ系連続ドラマ「黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~」(木曜午後10時)では主演・佐々木蔵之介さんの娘役を演じています。まさに、役者としての階段を駆け上がっている最中とも言えますが、佐々木さんとの出会いはこれまでにない特別なものだったと言います。

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人生の恩人

 人生のいろいろな場面で、いろいろな恩人がいらっしゃるので「この人が恩人です」とお名前を挙げるというのは本当に難しいと思います。ただ、お芝居のお仕事をさせてもらうようになって、こんなことは今までなかった。そういう体験をさせてもらったのが今回ご一緒した佐々木蔵之介さんだったんです。

 初めてお話をしたのはドラマの撮影が始まる日。それまでキャストの顔合わせの時にあいさつをさせていただいたくらいだったので、私みたいな者がどうやって話かけたらいいのか。今回の主役、いわば座長で、大先輩の蔵之介さんにいったいどう接したらいのか。とにかく失礼があってはいけない。そんな風に最初はガチガチな感じでした。

なぜか相談できた

 そこからしばらくして地方ロケがあって、初めて蔵之介さんとご飯に行かせてもらったんです。最終的にはたくさんの方が来られたんですけど、最初は蔵之介さん、私、プロデューサーさん、監督さんと最初は少人数でスタートしてまして。

 …そこで、これは今でも不思議なんですけど、これまで仕事の悩みを誰にも言ったことがなかったのに、蔵之介さんにはスッとお話ができたんです。

 「お芝居がうまくなりたい。でも、思うようにできない。どうしたらいいんでしょうか」とすごくストレートにお尋ねしたんです。

 ま、食事の場なのでお酒も入っていた。今回の役が自分の中ですごく難しいもので、いつも以上に悩んでいた。蔵之介さんはお父さん役なので、撮影の時もずっと一緒だった。そういった要素もあるとは思うんですけど、それだけでは説明がつかないというか。自分でも驚くくらい、自然に蔵之介さんには思いを明かすことができたんです。

悩んでもいい

 そこで、まず蔵之介さんが「オレも悩むし、へこむし、それはずっと変わらない。今でも、毎日のようにへこんでるよ」とおっしゃった。この言葉で、自分の中でいろいろなものがほどけていったというか、荷物がおりたような感じになったんです。

 というのは、仕事の悩みを人に相談しないということの裏には「プロの女優として作品に入るわけだから、プロとして確立した考え方やノウハウを使って、プロとしてお芝居しないといけない。だから、悩んでいる時点で、プロ失格」という意識がすごく強くあったんです。

 そんな私の考えからすると、蔵之介さんくらいになると悩むこともなく、自分の演技論と哲学に則って、粛々とお芝居をされている。勝手にそんなイメージを持っていたところに、先ほどの言葉だったんです。短絡的かもしれませんけど「蔵之介さんでも悩むんだ」と衝撃を受けまして。

 もちろん、私とは悩みの質が違うだろうけど、蔵之介さんですら悩みながらやってらっしゃるとするならば、この仕事はそういう仕事なのかなと思えたんです。自分が悩んでいることへの罪の意識が軽くなったというか。

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即戦力のアドバイス

 そこが何より自分では衝撃的だったんですけど、さらに蔵之介さんが「オレも人に対して『こうした方がいい』みたいなことはあんまり言ったことはないんだけど、こうやってストレートに言ってきてくれたから、自分が『もしかしたら、こうした方がいいんじゃないか』と思っていることは全部言うね」と言ってくださって。

 実際、その日から、本当に毎日のようにいろいろと教えていただきました。心構えとかそういうことだけではなく、すごく実践的なというか、蔵之介さんがこれまでのキャリアで苦労して習得されたであろうテクニックもいくつも、いくつも教えていただいたんです。

 あんまり具体的に私が「こういうことを教わった」と言ってしまうと、それは蔵之介さんのテクニックをペラペラしゃべってしまうことになってしまうんじゃないかと思うくらい、すぐに役立つことをたくさん教えていただきました。

 撮影が終わり、打ち上げの時に「本当にありがとうございました」とお伝えしたら「『教えて』と言ってきてから、オレが『こうと違うかな…』と思うことは全部言わなアカンと思って(笑)」とサラッとおっしゃって。本当は私が背中を見て、考えて、考えて、盗むものだと思うんですけど、本当に有り難いことで感謝しかないと感じています。

恩返しとは

 何年先か分かりませんけど、いつか自分もこうなりたいなと思いました。そして、自分も下の人ができた時に、その人が悩んでいたら教えてあげる。恩返しをするということは、そういうことなんだろうなと思っています。あとは、今回教えていただいたことを生かして、もし、次、蔵之介さんとお仕事をさせてもらう機会があったら、その時に「良くなったな」と思ってもらうことなんだろうなと。

 …あ、今さらですけど、これは記事になるわけですから、蔵之介さんも読むかもしれないんですよね。急に恥ずかしくなってきましたけど(笑)、もしご覧になったら「エライ、大層な話をしてるなぁ」とおっしゃるかと思います…。恩人なんて言葉を使ってしゃべってる時点で、確かにだいぶと大層ではありますよね。でも、本当に感謝しかないし、本当に恩人だから、こればかりは仕方ないんです(笑)。

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(取材/文・中西正男)

■石川恋(いしかわ・れん)

1993年7月18日生まれ。栃木県出身。19歳の時に、スカウトをきっかけに芸能界入り。坪田信貴氏の著書「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」、通称「ビリギャル」の表紙モデルを担当し、話題になる。2016年には「栃木市ふるさと大使」に任命。2017年からは雑誌「CanCam」のモデルを務めている。フジテレビ系ドラマ「黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~」(10月11日スタート、木曜午後10時)では主演・佐々木蔵之介の娘役を演じている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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