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MLBネットワークが解説!大谷翔平の二刀流は2人の殿堂入り選手の合体バージョンだった

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
改めて大谷翔平選手の二刀流が異次元レベルであることが理解できた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【大谷選手が自身4度目の週間MVPを獲得】

 MLBは現地時間6月20日、両リーグの週間MVPを発表し、ア・リーグでは大谷翔平選手が選出された。大谷選手にとって同賞受賞は昨年7月9日以来のことで、通算5度目の栄冠となる。

 MLBが発表したリリースによれば、選考理由として以下の5項目を列挙している。

 ・1週間の打撃成績が23打数10安打(.435)、6本塁打、12打点、2二塁打、9得点、1盗塁、長打率1.304、出塁率.588だった。

 ・唯一の登板だった試合で6回を投げ、6安打、2失点、3奪三振、1四球の内容で、今シーズン成績を6勝2敗、防御率3.29に伸ばした。

 ・1週間の打撃成績の中で本塁打数、打点、長打率、出塁率、得点、四球、総塁打がア・リーグ1位で、安打数が同4位タイ、打率が同5位だった。

 ・7試合すべてで安打を放ち、5試合で打点を記録した。またレンジャーズ戦で1試合2本塁打&4打点を記録し、ロイヤルズ戦では2試合連続本塁打を放っている。

 ・現在まで15試合連続安打、22試合連続出塁、7試合連続長打を継続し、チーム内で得点、安打、本塁打、四球、打点、盗塁、打率、出塁率、OPS、勝利数、防御率、奪三振の部門で1位に立つ。

【二刀流としてすでにベーブ・ルース選手を超越?】

 選考理由を見ているだけで、今シーズンの大谷選手が二刀流としてさらに進化していることが理解できるだろう。もう米メディアの間からも指摘され始めているが、現在の大谷選手は明らかに元祖二刀流選手であるベーブ・ルース選手を超越している感がある。

 というのも、本欄でも何度か指摘させてもらっているが、ルース選手が本格的に二刀流に挑戦したのは1918年と1919年の2シーズンだけであり、元々投手だったルース選手は野手として打席に立つようになってからは、登板数が半分近くまで減っている。

 つまり大黒柱として自分が中心となって先発ローテーションを回っている大谷選手とは置かれている立場が明らかに異なっており、二刀流としてチームに与える影響力という点では、大谷選手とルース選手には相当開きがあると断言していい。

【MLBネットワークが解説する二刀流の真の価値】

 そうなってくると誰もが気になるのが、現在の大谷選手の二刀流としての価値がどの程度のものなのかという点だろう。そんな素朴な疑問に対し、見事な解説をしてくれたのがMLBネットワークだ。

 同ネットワークはある番組内で、現在までの大谷選手の打撃成績、投手成績に類似する選手たちをピックアップし、比較検討してくれている。

 そして打者として出場638試合での成績は、実働21年間で通算2943安打を放っているフランク・ロビンソン選手に類似し、投手として登板77試合の成績は、実働19年間で通算268勝を挙げているジム・パーマー投手と類似しているとしている。

 この2選手は、いずれも殿堂入りを果たしているMLBを代表する選手たちだ。ここまでの大谷選手はたった1人で、殿堂入り2選手に匹敵する働きを続けているというわけだ。

 【大谷選手は投打ともに殿堂入り選手クラスの成績】

 とりあえずMLBネットワークで紹介された大谷選手と2選手の比較表を作成してみたので、以下の表をチェックしてほしい。同ネットワークの解説通り、とても類似しているのが理解できると思う。

 ちなみに2選手についてもう少し説明しておくと、ロビンソン選手は1957年に新人王を獲得し、その後1961年に自身初のMVPを受賞。さらに1966年には三冠王を達成し、2度目のMVPを獲得している。オールスター戦にも14回選出されるなど、当時を代表する強打者だった。

(筆者作成)
(筆者作成)

 一方のパーマー投手は、1965年に19歳でメジャーデビューを飾ったものの、1967~68年はメジャーに定着できずマイナー生活を余儀なくされた。だが1969年にメジャーに復帰すると、オリオールズのエースに台頭。1973年と1975年に防御率のタイトルを獲得するとともに、1973、1975、1976年と3度サイヤング賞を受賞する大投手だった。

(筆者作成)
(筆者作成)

 改めて大谷選手の二刀流が、ルース選手どころではなく異次元レベルであることを認識させられた。果たして今シーズンが終わる頃には、どんな快挙を成し遂げてくれるのか。

 かつてジョー・マドン前監督が大谷選手の二刀流について、「もう二度とこんな選手を見られることはないのかもしれない」と語っていたが、多分我々は大谷選手と同じ時代に生き、彼のプレーを直に目撃していることに感謝すべきなのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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