Yahoo!ニュース

50周年を迎えた歌手・“ギタリスト”の野口五郎が、スーパーバンドと大興奮セッション

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

“時を超えた、ここでしか聴くことができないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound In S』(BS-TBS)の8月21日(土)放送回は、50周年を迎えた野口五郎が登場。3人のアレンジャー、スーパーバンドとのセッションを、心ゆくまで楽しんだ。

これまでタイトルに“愛”が付く歌を200曲以上歌う。最新かつ集大成の“愛”の歌を披露

野口は1971年、15歳の時にデビュー。郷ひろみ、西城秀樹と共に「新御三家」として絶大な人気を集めていた。数々のヒット曲を飛ばした野口は、稀代のメロディメーカー・筒美京平から最も作品を(108曲)提供された歌手でもある。さらにタイトルに“愛”がつく楽曲を、200曲以上持ち、こちらも最多記録だ。この日の一曲目はそんな“愛”がついた最新曲「これが愛と言えるように」(2019年)を披露。「この曲が“愛”という歌の集大成」(野口)と語る壮大なバラードを、アレンジャー河野圭が手がけた、美しいピアノとストリングスを中心にしたアレンジに乗せ、まさに熱唱。

この日はギター佐橋佳幸、ドラム河村“カースケ”智康を始め、豪華ミュージシャンが集結。楽器マニアの野口は目を輝かせながら、ミュージシャンと楽器談議に花を咲かせていた。

野口五郎の“憧れの歌”とは?

2曲目はカンツォーネの名曲で、これまで多くの歌手がカバーしてきた「愛は限りなく」(1966年)。「伊東ゆかりさん、石原裕次郎さん、岩崎ひろみさんを始め、今まで男女問わずたくさんの方がカバーしていますが、この番組ではまだ誰も歌っていないと聞き、是非歌いたいと思いました」と憧れの曲を、本間昭光のアレンジで披露。オーボエやウーリッツァーをフィーチャーした、優美な中にも温もりを感じさせてくれるサウンドに乗せ、情感豊かに歌っている。歌い終わると本間が「ギターは本番だけのフレーズがたくさん出てきて、それに煽られるように演奏も盛り上がりました」と言うと、野口は「そうなんですよ!これがこの日限りのアレンジ、もう二度とない出会いというか」と、この番組の醍醐味を心から味わい、楽しんでいた。

阿久悠×筒美京平×船山基紀「女になって出直せよ」(79年)は、色褪せない名曲

ラストは作詞・阿久悠、作曲・筒美京平、編曲・船山基紀という当時の最強作家陣が作り上げた名曲「女になって出直せよ」(1979年)を披露。野口というと歌謡曲、アイドルというイメージが強いと思うが、ギタリストであり、音に徹底的にこだわる“ミュージシャン”である。この日アレンジを手がけた笹路正徳も「野口さんは当時からギター雑誌に登場したり、ミュージシャンシップ溢れる方なので、こういう曲がピッタリ」と語っている。野口のデビュー曲「博多みれん」は演歌だったが「演歌もロックもR&Bもハードロックも、全ての音楽が好きだったので、とにかく歌えることが嬉しかった」と当時の心持ちを教えてくれた。

この曲は、1979年ロサンゼルスで現地の一流ミュージシャンを集めレコーディングされたアルバム『LAST JOKE GORO IN LOS ANGELS '79 』に収録され、シングルカットされた。いわゆるシティポップ人気が盛り上がる昨今、この曲も再評価され、海外の音楽ファンからも注目を集めている。阿久悠のこの日のアレンジは、美しいストリングスと煌びやかなホーンが作り出す、原曲のアーバンでラグジュアリーな雰囲気はそのままに、さらにグルーヴを加速させる極上の気持ちよさ。野口もギターソロを気持ちよさそうに披露していた。野口のボーカルは高いところからさらに高い部分に移る時、ファルセットになるのかと思いきや、地声で表現できるところが大きな特徴だ。より生々しさを感じさせてくれ、感情がさらに伝わってくる。

50周年を迎えて――「ずっと楽しかったし、ようやく声が安定してきたので、これからも楽しく歌っていきたい」

全てのパフォーマンスを終えた野口は「アナログからデジタルの時代を生きてきて、歌うことはアナログだと思う。どう歌い、どう届けるかが人生のテーマであり課題なので、そこを追求していきたい」と語っている。そして50年間を振り返ると?、という質問には「ずっと楽しかったし、ようやく声が安定してきたので、これからじゃないかなと思う。楽しく歌っていきたい」と、歌を極めてもさらにその先を、楽しみながら求めていく姿勢を見せてくれた。「ゴイスーなメンバーが揃ってワクワク、ドキドキ」した収録を終え、興奮冷めやらぬ様子の野口は、番組プロデューサーに「次、いつにしましょうか」と“アンコール”をリクエストし、満面の笑みでスタジオを後にした。

野口五郎とスーパーバンドの圧巻のセッションが楽しめる『Sound Inn S』(BS-TBS)は、8月21日(土)18時30分からオンエアされ、番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に独占配信される。

BS-TBS『Sound In S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事