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ワールドカップ組・小野晃征が思う、6月の日本代表ツアーの捉え方。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
南アフリカ代表戦。自分より40センチヴィクター・マットフィールドにもタックル。(写真:ロイター/アフロ)

4年に1度あるワールドカップの自国大会を2019年に控える日本代表は、6月11日に敵地バンクーバーでカナダ代表と、18、25日には愛知・豊田スタジアム、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表とテストマッチ(国際間の真剣勝負への出場数)をおこなう。

昨秋のイングランド大会で過去優勝2回の南アフリカ代表を下すなど、歴史的な3勝を挙げたメンバーである小野晃征が、5月12日、自身もスコッドに加えられている今度のツアーについて語った。東京都府中市にある国内所属先のサントリーのクラブハウス内、練習を終えて引き上げる際に立ち止まった。

2016年度以降はジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)が着任予定も、現在は国際リーグであるスーパーラグビーのハイランダーズを率いており、来日は今夏以降。

現在、アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)をおこなっている若手主体の日本代表では中竹竜二HC代行が指揮を執っており、6月はスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズのスタッフがジャパンをサポート。なかでもマーク・ハメットHCが、代表HC代行という重責を担う。スコットランド代表は、歴史的な3勝を挙げたイングランド大会で唯一敗れた相手。

エディー・ジョーンズ前HCの体制下でスタンドオフを務めてきた小野は、身長171キロ、体重83キロの29歳。幼少期をニュージーランドで過ごし、2007年春に当時のジョン・カーワンHCに代表入りを告げられたのを受けて来日している。

同年のワールドカップフランス大会出場後は国際舞台から遠ざかったが、ジョーンズHCの一声でカムバックが叶った。いずれは妻のいるニュージーランドでの生活を考えているが、準備段階中の選手会の立ち上げに携わるなど日本ラグビー界への思いも強く抱いている。

以下、単独取材による一問一答の一部(編集箇所あり)

――オフを過ごしたニュージーランドから、帰って来られたのですね。

「たいだい2週間前ですね。去年は首の手術をして、ワールドカップに間に合って、そこからトップリーグへ…。丸10ヶ月ぐらい(稼働した)。どこか、自分のタイミングで身体を休めないとな、と。去年はあまりにも家族との時間を過ごせなかった。(人生は)ラグビーだけではないので、そのバランスを取れたオフだと思います」

――6月の日本代表スコッドに名を連ねましたが。

「自分のパフォーマンスをどこに持って行くかにプライオリティーを置いていた。サンウルブズ(大半の選手は昨年8月までに契約を締結)は、あの身体のままではできないと思った。ただ、トップリーグで出し切ったうえで、もう1回、日本代表を目指して練習はしてきました」

――ツアー開始を前に、現在名前の出ている42名のスコッドから「コンディション優先」という名目で30名程度にメンバーが絞られます。選ばれる覚悟は。

「そこがピークにはならないかもしれないですけど(夏からトップリーグが開幕するため)、選ばれたらしっかりとしたパフォーマンスができるようにコンディショニングはしてきている」

――ジェーミーさんとは。

「そうですね。2回ぐらいは連絡を取りました。いままでの日本代表がどう文化を積み重ねてきたのか。いままでのいいところと、改善できるところ。それについてコミュニケーションを取りながら、話していきました」

――具体的には。

「何を大事にしてチームを作って来たか、です。4年間、勝った試合も負けた試合もあったけど、ピークを4年後に持って行けた。毎試合に勝つことが目標ではなく、しっかり先の目標を持って選手を育ててきた。残念ながら、日本代表はオールブラックスではない。次から次へとワールドクラスの選手が出てくるわけではない。だからしっかり育てて、経験させていかないと…と。去年、南アフリカ代表に勝てたのもそうです。

2012年を振り返ると、5000人しか入らないグラウンドでフレンチバーバリアンズに負けて(2012年6月20日、東京・秩父宮ラグビー場で21―40と敗戦。公式入場者数は3799人)、そこから全員がハードワークした。その苦しさ…。どれだけ努力が必要か…。

もう1回、リセットしてやることが大事だと思います」

――ジョセフ新HCは、日本でプレー経験はありますが実際はニュージーランド人。結果的に、小野選手と話してよかったのではないでしょうか。

「これは経験をしていなかったらわからないことかもしれないです。去年の結果だけを観ると、どの試合も勝てるだろうと考えられると思う。ですけど冷静に考えたら、それはスーパーラグビーレベルの日本人選手を育てて、しっかり積み重ねた結果。

それが…どう言ったらいいのか…。いま、去年のようにやれと言われても、いまの段階ではそれだけの準備をしていないし、監督もいない。ここをスタートポイントとして、切り替える時期かなとは思います」

――スコットランド代表。そう簡単に勝てる相手ではありません。

「向こうはベストメンバー。若手を育てる意思もなく、日本をつぶしに来ていると思う。それに対して、日本代表がどこを目標にするか。もちろん、勝ちに行きます。ただ、後になってこの試合を振り返った時に、どう2019年に繋がっているのか…。ということをちょっと考えながら積み重ねていかないと。ただ3試合テストマッチをやっただけでは、ジェイミーが来てからの一歩が始まらない。3試合もあるので、今回を土台として考えるのもありかな、と思います」

――正式な指揮官不在。いる選手同士でチームを作り上げなければなりません。

「どれだけハードワークが必要かは、いまの選手しか知らない。メディアも苦労してここまで日本のラグビーを盛り上げてきたと思うのですが、やはり、日本代表はトップ3のチームじゃない。(現在世界ランク3位の)南アフリカ代表に勝ったからといって、それ以下のチームにいつでも勝てると思ったら、すぐに抜かれる。常に進化して、新しく作っていかないと」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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