国有地売却の立証責任は政府にある
森友学園に関する国有地売却問題について、この間、安倍昭恵氏の講演や名誉校長就任が嫌々だったのか、自主的だったのか、とか、稲田朋美・防衛大臣が森友学園とどのような関係を持っていたのか、とか、周辺的な話題が中心になり、なかなか本筋に迫っていない感があります。これについて「野党は審議時間を無駄にするな」という意見も散見されるし、安倍首相も「何度も何度も同じ事を答弁している」などと言っています。安倍首相は「立証責任」が野党にあるような発言もしていました。
確かに、森友学園に対する国有地売却が実際に犯罪行為であり、安倍首相や他の閣僚が刑事事件の被疑者である、と自己規定するなら、「疑わしきは被告人の利益に」という大原則が該当し、その認識は正しいでしょう。しかし、安倍首相以下、政府は、本件が適正に処理された、と、繰り返し答弁しています。ならば参照されるべきは刑事事件に関する法ではなく、民主主義の国における行政の執行について、誰が誰に対して責任を負っているのか、ということです。これについては、究極的には憲法66条3項で「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」とされているように、内閣が国民の代表者である国会に対して説明責任を負っていることになるでしょう。
そして、このような究極的な規定を持ち出すまでもなく、財政法は以下のように定めています。
財政法
第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。
○2 国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない。
財政法は公法であり、この義務を負っているのは当然ながら、政府です。国民の財産である国有地を森友学園に売却することについて、手続面でも、価格面でも、適正に行われたことについて、国民に対する説明責任を負っているのが安倍政権(政府)であることは明白です。この場合の「適正」というのは、国会の場で「適正、適正」を連呼することではなく、税金による「有益費」名下での森友学園への1億3000万円税金支出、8億2000万円余の土地代金の減額、建設中の建物に対して税金から5000万円以上の補助金支給等に至ったことについて、森友学園や国と間のやり取りの事情や、税金支出、代金減額に関する計算根拠の全資料を国民に提示して、納得を得ることなのです。特に国から森友学園に対する1億3000万円余の「有益費」名下の税金支出は、国の会計年度上は今年度(平成28年度)のことであり、財務省と国交省が予算措置について協議をしているはずなので、この記録まで破棄されていることは、あり得るのでしょうか。
しかし、当然残っているはずの森友学園と財務省や近畿財務局との面談記録を「破棄した」と強弁し、そうであるなら、と財務官僚(当時の理財局長であった迫田英典氏等)や籠池氏の証人喚問ないし参考人招致を提案する野党の当然の要求を拒否し続け、また、国から森友学園に対する1億3000万円余の「有益費」名下の税金支出の詳細な計算根拠を示さず、約8億2000万円の値引きとの重複の有無すら明らかにしていないのは全て安倍政権であり与党です。
「時間の無駄」を言うのであれば、安倍政権がこれらの資料をはやく「発見」して開示し、しかるべき喚問や参考人質疑を行い、疑念を晴らすことこそ、求められています。「どっちもどっち」で済ませては、決してならない問題です。