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【陸上・U 20日本選手権】男子5000m覇者・吉岡の未来への選択

和田悟志フリーランスライター

 日本選手権と併催されているU 20日本選手権。

 男子5000mに、大学生に混じって唯一出場した高校生が、佐久長聖高3年の吉岡大翔だった。持ちタイムは、出場した13選手中堂々のトップ。そして、レースでは、高校生らしからぬ冷静沈着な巧者ぶりを見せた。

 入りの1000mは2分54秒、2000mは5分44秒、3000mは8分38秒とスローペースの展開に、吉岡は集団の先頭に立つことなく、後方に位置取った。

「1レーンからのスタートだったので、変に飛び出すよりも安全に後ろからいきました。自分の取り組みに自信があったので、”後ろからスタートしても先頭に立てる”と自信を持って走りました」

 満を持して4000mで先頭に立つと、「1回様子見で仕掛けようと思った」とペースアップし、集団をふるいにかけた。

 ただ一人、青木瑠郁(國學院大1年)だけが吉岡の仕掛けに反応を見せ、600m過ぎには一度先頭を奪う。だが、吉岡にはもう一段階のスパートが残っていた。

「(スタジアムの)大型スクリーンで一人しか付いてきていないことを確認し、1回前に出られてしまいましたが、息遣い等を確認してラスト1周でもう1度仕掛けました」

 と、冷静に状況を判断。そして、再び先頭に立つと、青木を一気に引き離し、13分54秒98で優勝を飾った。

後続との差を確認しつつ、仕掛けどころを探った
後続との差を確認しつつ、仕掛けどころを探った

目標のU 20世界選手権へ前進

 今大会は、今夏にカリ・コロンビアで開催されるU 20世界選手権の日本代表選考レースを兼ねており、「タイムよりも、しっかり勝ち切るんだという思いを持って、ここまで取り組んできた」という。目標としてきた同選手権への日本代表に、大きく前進する快勝だった。

 U 20世界選手権は8月1日~6日に開催されるため、全国高校総体(以下、「インターハイ」:8月3日〜7日)とは日程が重なる。吉岡は「インターハイよりもU 20世界選手権を優先させたい」と言う。

「今後の競技人生を見据えた上で、1回でも多く世界での経験を積むことが今後につながってくると思う。

 また、こういった世界情勢がありますので、いつ、どういう時に出られるのか、不透明な部分もある。世界大会に出られるのであれば、1つでも多く(日本代表を)取りに行くんだっていう気持ちを持っています」

 日本代表に選出されれば、競技者としての自身の未来のための、選択をするつもりだ。

(写真は全て筆者撮影)

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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