通勤を続ける人たちの葛藤とストレス 社員と経営陣の危機感に温度差?
新型コロナウイル感染爆発の重大局面と東京都知事が3月25日に発表してから10日間ほど経過しました。今朝は緊急事態宣言が明日7日にも発令される見通しと報じられました。週末は自宅で過ごし外出を自粛しているものの、平日は通勤しなければならず不安を抱えながら仕事に向かう方も多いのではないでしょうか。在宅勤務が増えたといってもパーソル総合研究所が3月9~15日に行った調査では、テレワークを実施している正社員は13.2%で、会社から特に案内がないという人は71.5%に上ります。また時差出勤についても会社からの案内が特にないという人は64.9%に上っています。対面での会議が禁止されている人は5.1%に過ぎません。
平日は電車通勤や職場で感染のリスクが高いことは明らかです。また製造の現場では手洗いやマスクなどの対策はしているものの一定時間、同じ室内で働くことに不安を持っている方も多いのです。作業は不安だけど会社は休めない、通勤は怖いけれど休めない、会議も心配だけど会社が対面会議禁止をしていないのでオンライン会議を提案できない、という葛藤を抱えストレスを感じている方の相談も受けることが増えています。「緊急事態宣言が出ない限り、上司や経営幹部は危機感を持ってくれないのではないか。いっそ早く出てほしい」という声も聞かれます。
危機感の温度差でコロナ疲れ
企業の経営陣の中には、テレワーク導入に必ずしも積極的とはいえないところが多いのは調査でわかる通りです。テレワークに慣れておらず、またオンラインの会議にもなじみがない企業では、出勤し対面でないと業務ができない、在宅の業務は上司が管理できない、という危惧を持っていることがその要因でしょう。在宅の業務は社員への信頼感が必要ですがそれが希薄で、これまで社内のコミュニケーションがうまくいっていなかったという背景もうかがえます。経営陣は企業の経営には危機感を持っていますが、社員の不安や健康に関しては危機感が少ないという印象があります。経営陣と社員間の危機感の差があることがわかります。
医療現場では医療崩壊の危機感が非常に高く医師たちが声を上げているものの政治行政は「まだ感染爆発とは言えない」という見解とみられ、医療現場と行政の危機感に大きな温度差があります。
こうした温度差が、経営陣と社員の危機感の温度差につながっているのではないかと気になります。
危機感の温度差は、心理的負担を増加させます。
企業に勤務する方の中にはこの時期、通勤が大きなストレスになっている方がいます。
Aさんの職場では、在宅勤務を希望する人は上司に相談して在宅で仕事が可能かどうかの判断を受け、許可されれば在宅勤務ができるようになっています。Aさんは通勤に3回の乗り換えを要し、片道2時間弱かかります。乗り換えの駅は乗降客が多い拠点の駅です。在宅勤務を希望したいのですが上司は在宅勤務に対し良い印象を持っていないため言い出しにくく、実際Aさんの部署では在宅勤務にしている社員はいないということでAさんは不安ながらも通勤しています。持病でステロイド治療を受けているBさんも感染のリスクが高いので時差出勤は認められていますが、在宅勤務を言い出しにくいといいます。
ダブルバインドがストレスに
週末だけ外出自粛、平日は通勤するというのは心理的なダブルバインド状態になるものです。ダブルバインドとは、複数の矛盾したメッセージにより受け手が混乱し強いストレスを感じることです。
実際に週末は人混みを避けてじっと家で過ごし、平日は出勤して人が集まった空間で仕事するという2つの相反した行動を求められ続けることが、社員の負担になっているのです。企業には、社員を守るための危機意識を高く持って、可能な仕事は在宅で行えるようにすることが望まれます。ただ危機意識が高くても在宅勤務を導入できない課題を抱えた場合もあるでしょう。また製造現場など自宅待機等を余儀なくされる社員は生計への不安も大きいと思われます。こうした課題や不安に十分配慮した対策が望まれます。