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芦原妃名子さん訃報で気持ちが落ち込むひとへ

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
写真はイメージです。(写真:イメージマート)

「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんの突然の訃報は、愛読者の方をはじめ同業の作家の方たちにも大きな衝撃を与えました。そんな中で芦原さんの死の背景にテレビドラマの制作に関してのトラブルや脚本家のSNS投稿などがあったのでは、と脚本家に対しての誹謗中傷がSNS上で激しくなっています。またさまざまな憶測やうわさ話も飛び交い、こうした状況は当事者だけでなく、誰にとっても精神的にいい状況とは思えません。

誹謗中傷やうわさを拡散しないために

うわさ話の拡がりは、「内容が大事で、あいまいなほど拡がりやすい」というオルポートとポストマンの公式があります。生命にかかわる重要な内容のトラブルで、しかも状況はよくわからない、というのが今回の訃報ですから憶測が拡がるリスクは極めて高いといえますのでSNSでの投稿には注意が必要でしょう。

SNSに投稿する際の注意を3つまとめてみました。

1.すぐ投稿したくなる時ほどまずひと呼吸おいて考える

2.考えもしないのにほんとだ、と思うときほど注意する

3.情報源がはっきりしないことを拡散しない

訃報で気持ちが落ち込んだ人に

芦原さんの作品に元気をもらったり勇気づけられていたという方から、訃報で気持ちが落ち込んでしまったという声も聞きます。作品を通して実際に会ったことはなくても身近に感じていた方はつらい気持ちになってしまうものです。こうした気持ちが強く「ネガティブな同一化」に陥るのが心配です。心身の不調を起こしたり自分も死にたくなってしまうのが、「ネガティブな同一化」でこうしたリスクは避けなければなりません。

気持ちの落ち込みがひどくならない為に予防策をあげておきます。

1.テレビや新聞、インターネット上の関連ニュースをしばらく遮断する
2.スマホの電源を切る
3.深呼吸とストレッチを朝、昼、夜の決まった時間に5~6分ずつ行う
4.朝窓を開けて太陽の光を浴びる
5.散歩など体を動かす時間を作る
6.音楽が好きな方は演奏を聴いたり歌ったりする
7.自然とふれあう時間を作る

こんな時には受診も

食欲がない、眠れない、朝早く目が覚めてしまう、などの症状やだるくて朝起きられない、体の痛み、耳鳴りなどはメンタル不調のサインです。こうした症状や何にも興味がわかない、やる気がでない、楽しいと思うことがないなどの気分の変化が7日以上続くときはうつ状態の危険がありますから医師や相談窓口に連絡してください。

最後に

今回の芦原さんの訃報の第1報に接した時、状況がつかめず何が起きたのか非常にわかりにくかったといえます。特にテレビ局のコメントは内容が不明瞭でした。こうした不明瞭さが様々な憶測や誹謗中傷を生む背景になったことも否めません。

すれ違いが起きていたのか、なかったのか、またもしすれ違いがあったなら、すれ違いを防止するためにどのような話し合いをしていたのか、などをテレビ局の担当者に説明はしてほしいと思いました。それが今後こうしたコミュニケーションギャップを生まないために必要なことではないかと思います。

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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