TikTokフォロワー200万超・99歳アウシュビッツ生還者リリーおばあちゃん 大英帝国勲章を受勲
「私が生きている限りはホロコーストの歴史と悲惨な経験と記憶を語り継いでいくことを私自身に約束しています」
第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人、政治犯、ロマなどを殺害した、いわゆるホロコースト。ホロコーストの象徴のような施設が、ポーランドに設立されたアウシュビッツ絶滅収容所で、アウシュビッツでは約110万人が殺害された。ナチスドイツの収容所政策は「労働を通じた絶滅」だったので、死ぬまで働かされ、働けない子供や老人は収容所に到着直後に選別されてガス室で殺害された。
アウシュビッツ絶滅収容所から奇跡的に生還し現在、英国に住んでいるリリー・エベルト氏はTikTokで視聴者からのホロコースト時代の質問に回答したり、ホロコースト時代の経験を語っている。18歳の曾孫のドヴ・フォルマン氏も登場している。
2022年12月29日にリリー氏は99歳の誕生日を迎えた。リリー氏は「アウシュビッツ絶滅収容所を生きのびることができるとは考えられませんでした。そして生き残れることができて別の誕生日を迎えました。99歳を迎えて、ナチスが勝つことはできなかたことを証明できたことを祝っています」と語っていた。
そのリリー氏が2023年2月に大英帝国勲章を受勲した。リリー氏は長年にわたるホロコースト教育への貢献が評価された。チャールズ3世から大英帝国勲章を受勲していた。リリー氏は「そんな遠くない昔に私も信じているユダヤ教を信じているユダヤ人をせん滅しようとした人々がいました。そして私も殺されそうになりましたが、生き延びました。そして本日、私はこのような栄誉ある勲章をいただきました。あのような悲惨なっできごとは決して二度と起こってはいけません。私はホロコーストの生存者です。私が生きている限りはホロコーストの歴史と悲惨な経験と記憶を語り継いでいくことを私自身に約束しています」と語っていた。
▼英国皇室の公式SNSで紹介されるリリー氏
明るく元気で世界中で大人気の99歳のTikTok
リリー氏のTikTokのフォロワー数が2021年6月に100万人を超えた。そして2021年11月には140万人を突破し、2021年12月には150万人、2022年12月には190万人、2023年1月には200万を突破。ホロコーストの生存者で、内容も重たいことも多いが、そのような辛い過去の歴史を語る時でも明るく元気な99歳のおばあちゃんのキュートな表情やパフォーマンスが人気だ。2023年の12月には100歳を迎える。
リリー氏は1923年12月にハンガリー生まれのユダヤ人で、何の罪もなかったがユダヤ人ということでナチスドイツに占領されてから20歳の時に母と弟、3人の姉妹とともにアウシュビッツ絶滅収容所に移送された。リリー氏も「私たちは何世代にもわたってハンガリーに住んでいました。だからハンガリー人以上にハンガリー人という意識でした」と語っていた。そしてアウシュビッツに到着すると彼女の母のニナ、弟のベラ、妹のベルタはガス室に送られてしまった。TikTokでリリー氏が語っているのはこのような当時の辛い経験だが、それでも笑顔で伝えている。
欧米でもTikTokは若年層に人気があり、リリー氏は若年層にホロコースト時代の経験をTikTokで伝えている。ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰えており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコーストの記憶や経験を後世に伝えようとして、ホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化も積極的に進められている。デジタル化された動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても多く活用されている。だがそれらの動画は教育用に作られているため、学校の授業での視聴に使うことから長時間で、写真なども残虐なものも多くあり内容も重たいことが多い。
アメリカでは中国への情報流出や諜報活動、煽動という国家安全保障の観点からTikTok利用の規制が進んでいる。米国連邦議会下院は2022年12月27日に、下院が保有する電子機器でのTikTok利用を禁止した。全50州のうち19州の州政府機関が公用の端末でのTikTokの利用を部分的に禁じている。だが、それでもまだ若い人には人気がある。リリー氏のTikTokのように音楽に合わせて短時間であれば、若い人にとっても見やすいし、ホロコーストを知るきっかけにもなりやすい。
またユダヤ人のTikTokの動画は「jewtok」(ユダヤ人のJewとTikTokの造語)と言われて、「#jewtok」と付けて発信すると、世界中のユダヤ人がチェックしやすいので視聴者も増えやすい。
リリー氏は「ドヴと一緒に動画撮影するのはとても楽しいです。ホロコーストの体験を次世代に伝えていくことはとても重要で、このような動画配信ができることを誇りに思います。私のホロコースト時代の体験の証言は決して忘れてはならないことです。時が経って、多くの生存者が他界しているので、当時の証言を伝えて共有していくことは私たちの責任です」と語っていた。さらに「私はもう若くないです。このようなホロコーストの歴史を伝えていけるのは私たちが最後だと思っていました。でもこのようなソーシャルメディアを通じて次世代に伝えていくことができるのがとても幸せです」と語っていた。
2021年11月には英国のボリス・ジョンソン首相から、歴史を変えたりコミュニティに大きな影響を与えた人らに贈られる「Points of Light awards(ポインツ オブ ライト アワード)」がドヴ・フォルマン氏とリリー・エベルト氏に授与された。