中国の習近平主席、ロシア訪問前に署名文を発表し「和平促す」とするが...
きょうからロシアを訪問、明日21日はプーチン大統領との会談を予定する中国の習近平国家主席がロシアメディアで署名入りの文章を発表した。習主席のウクライナ情勢への態度が注目されるが、文章では「積極的に和平交渉を促す」としながらも、従来の立場をこえる内容は表明していない。トップ外交はどうなるのか?
習主席は、ロシア訪問に先立ちロシアメディアで署名入りの文章を発表した。中国国営新華社通信が伝えた。習主席のロシア訪問は、ロシアのウクライナ侵攻以来初めてとなる。明日、予定されているプーチン大統領との会談で、ウクライナ情勢に関しどのようなやりとりをするかが注目されるが、習主席は文章の中で「昨年来、全面的にエスカレートしたウクライナ危機」について言及し、「中国は終始、事情の本質の是非を直視し、客観的で公正な立場を堅持し、積極的に和平交渉を促す」とした。ただ、これは中国がこれまで主張してきた原則を踏み出すものではない。
文章の中で、これまで中国が表明してきた「国連憲章の趣旨と原則を遵守し、各国の合理的な安全への関心を尊重し、ウクライナ危機を平和的に解決するすべての努力を支援する」という立場についても繰り返した。
中国は先月、ロシアのウクライナ侵攻から1年に合わせ「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」という12項目からなる文章を発表し、停戦や直接対話を呼びかけた。
習主席は今回の署名文でも、この文章について触れ「国際社会のウクライナ危機での最大公約数を体現した」などと自賛している。だが、そもそも12項目の文章が、停戦や和平交渉を可能にする条件を示したものではなく、実効性は疑わしい。むしろ、中国が平和的な解決に積極的だということを示すアピールの意味合いが強い。署名文では、習主席は「複雑な問題に簡単な解決策はない」と認識を示した上、各当事者が、協力を続けるなどすれば「必ず合理的な解決策を見つけられると信じる」とした。
署名文では、直接的なウクライナ情勢への言及とは別に、アメリカと西欧諸国が築いた現在の国際秩序への不満を示すくだりがある。
「国際社会は、世界には一等国は存在せず、全世界に通用する国家統治モデルも存在せず、ある国が決定する国際秩序は存在しないことをはっきりと認識している」
これも中国の従来の立場だが、ロシアによる現状の国際秩序の破壊を容認し、それを拒もうとする西側諸国の努力を否定する理屈に根拠を与える論理とも言える。
中国が責任ある大国を目指すならば、西側諸国を非難するときに好んで言及する「冷戦思考」にむしろ自身がとらわれることなく、その影響力を西側諸国に対抗する勢力を形成するためではなく、一刻も早く戦火を終える努力に向けるよう、トップ外交に期待したい。