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ファンを無視した労使交渉に遂に怒りの声が!全国ファン連合がコミッショナー宛に公開書簡を発表

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
全国ファン連合が発表した公開書簡(公式サイトより)

【早くも暗雲が立ちこめる大詰め交渉】

 シーズン開幕を日程通りの3月31日に迎えるため、2月28日までに労使交渉を妥結させたいMLBは、2月21日から選手会と大詰め交渉に入ったが、2日目を迎えた交渉で早くも暗雲が立ちこめてしまったようだ。

 スポーツ専門サイト『The Athletic』で、主に労使交渉を担当しているエバン・ドレリッチ記者が投稿した一連のツイートによると、2日目の交渉で選手会が提示した対案(最低年俸額を以前より増額)に対しMLBは交渉が後退したと考え、改めて第3機関の仲裁を提案したようだ。

 しかし選手会はこの提案を拒否し、今後も両者間の交渉を望んでいる模様だ。だが依然として両者の溝は埋まっておらず、MLBが期待する期限までの合意はさらに困難な状況に陥っている。

【全国ファン連合が公開書簡を発表】

 そんな状況下で、SNSや新聞広告を通じてロブ・マンフレッド・コミッショナー宛に公開書簡を発表し、まったく進展しない労使交渉に参加を要求する組織が現れた。

 『National Fans Union(全国ファン連合)』と称する米国内の組織で、同組織のドメインが「.org」であることから非営利で活動する団体のようだ。

 公式サイトのメッセージを読む限り、野球に限らずすべてのスポーツを愛するファンが団結し、彼らの声を人々に届けることを目的にしている。

 そしてファンの意見をまったく無視した今回のMLBと選手会の労使交渉に対し、怒りの声を挙げるべく公開書簡を発表したものだ。

【書簡内容「数千億円を稼ぐオーナーと数十億円を稼ぐ選手たちだけの決定」】

 とりあえず公開書簡の全文を紹介しておく。原文に関しては公式サイトを参照して欲しい。

 「ロバート・D・マンフレッド・コミッショナーへ

 あなたは2021年12月2日に、MLBのロックアウトに関して『ファンに向けた公開書簡』なる文章を発表しました。あなたはファンからの返事を期待していないと思いますが、我々はあなたからの招待を受け入れたいと思います。

 我々ファンは、我々が愛するスポーツをキャンセルに追い込む一方的な宣言を必要としていません。もしあなたが、我々のお金を最善のかたちで分配できる労使交渉を行いたいのなら、もっとファンに敬意を示し、情報を共有してほしいと願っています。

 我々が介在しなければ、数千億円を稼ぐオーナーと数十億円を稼ぐ選手たちの考えだけで決定されることになります。リーグ全体の運営を可能にしているファンの意見は含まれていません。逆に我々が参加できれば、MLBはこの労働争議に長年軽視されてきたグループ(ファン)を招き入れ、交渉の会話を変化させる機会を得ることになります。我々のお金をどう使い、我々が愛する娯楽(野球)が我々をどう扱ってくれるのかを含め、ファンが交渉の会話に参加すべき時です。

 我々があまりに長い期間無視されてきたと思うMLBと他のプロスポーツのファンのみなさん、ぜひ我々に参加してください。我々の強みは、数にあります」

【メディアもファンに同調する?】

 この公開書簡に対し、好意的に捉えるメディアが登場している。

 この書簡が全面広告として掲載された『Milwaukee Journal Sentinel』紙で、長年ブルワーズの番記者を務めるトム・ホードリコート記者が、全面広告の画像とともに「今日我が社の新聞に全面広告として掲載されたロブ・マンフレッド・コミッショナーに宛てた憤慨したファンからのメッセージ」との紹介文をつけてツイートしている。

 このツイートに対し、他のMLB記者の人たちも「いいね」をつけるなど、同じく好意的に受け取っているメディアも存在している。

 もちろんこの組織が労使交渉のテーブルに加われることはないだろう。果たしてMLBや選手会に、彼らの声は届くのだろうか…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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