Yahoo!ニュース

SHERBETS浅井健一「これからも音楽とかやり続けると思うけど、どうなるかは誰にもわからない」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「SHERBETSの音楽を、ここからさらに広げていきたいって心から思っていて」

SHERBETS結成20周年を記念した、The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』

The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』(10月24日発売/初回生産限定盤)
The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』(10月24日発売/初回生産限定盤)

浅井健一率いるSHERBETSが今年、結成20周年を迎えた。聴いた人に心を揺さぶるロックを奏で続けて20年。10月24日にその軌跡をまとめたベストアルバム、The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』を発売した。初回生産限定盤はメンバー自身がセレクトした、初期・中期・後期の名曲41曲と、新曲「愛が起きてる」が3ディスクに収録されている。通常盤には厳選された14曲と新曲「Yesterday」が収められている。浅井はこれまでソロを始め、AJICO、JUDE、PONTIACS、そして最新型の浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSと、スタイルを変え活動を続けてきたが、バンドとしてはSHERBETSとしての20年が、キャリアの中では最長となった。そんな浅井が、SHERBETS、そしてこのベスト盤の魅力、さらに最近気になって仕方がない、目の前の“不都合”までを、語ってくれた。

「定期的にSHERBETSじゃない音楽がやりたくなって、SHERBETSが動いていない時期が何回かあったじゃないですか。それがあったから、続いたんじゃないのかなっていうのもあると思う」

――SHERBETS、20年です。

浅井 まだ20年だね。

――今回のベスト盤は、オールタイムベスト42曲と、その中からさらに15曲をメンバーのみなさんで選曲をしていますが、すんなり決まったのでしょうか?

浅井 それぞれの意見が多少ばらけてて、調整を要した部分もあったけどね(笑)。今回もそうだったけれど、SHERBETSは音楽上はものすごく仲のいい4人で、音楽上では相性がいいんだけど、生活面ではごくたまに喧嘩するんだわ(笑)。話し合って乗り越えてるんだけどね。ツアーになると知らないうちに、ストレスが溜まってたりしてさ。世界中どんな仲間でも良くあることだよ。

――そこに浅井さんが間に入って、仲を取り持つというのも、バンドらしいです

浅井 この4人で音楽を作っているときは最高に楽しい。それと定期的にSHERBETSじゃない音楽がやりたくなって、SHERBETSが動いていない時期が何回かあったじゃないですか。それがあったから、続いたんじゃないのかなっていうのもあると思う、うまい具合に。

「ベンジーがそうやって中断するから、SHERBETSは上に行き切れなかったんだ」って責められて(笑)

――浅井さんがSHERBETSのメンバーに、違うことやりたいから、一旦ストップしようって話をすると、みなさんが素直に受け入れてくれて、帰ってくるのを待っているという感じなんですか?

画像

浅井 待ってるって感じではないと思う。みんなそれぞれ自分のやりたいことをやってると思う。しばらくの間SHERBETSにのめりこむと、本能的に次はSHERBETSじゃない世界に行こうと思うんだわ、毎回。それでソロをやったり、JUDEをやったり、SHERBETSお休みっていうことになるんだけれど、ちょうどその頃、メンバー同士も長く一緒にいすぎて、ちょっとよそよそしくなり始める頃なんだわ、毎回。でも結成して15年が過ぎたあたりに「ベンジーがそうやって中断するから、SHERBETSは上に行き切れなかったんだ」って責められて(笑)。「継続的にやってこなかったからダメなんだ」って叱られるけどね(笑)。

ーー表現者として浅井さんとしては、色々な表現場所がないと、居心地が悪いという感じなんでしょうか?

浅井 SHERBETSをずっとやっていると、SHERBETSではできない音楽をやりたくなる。でもしばらく離れているとSHERBETSが恋しくなる。SHERBETSって、音楽を作るときあまり苦労しないというか、不思議な感じでできてしまうから、新しい曲を作るときはSHERBETSのメンバーで作るのが、楽チンと言ったら変だけど、悩んだりしないかな。さっきも出たけど、相性がいいから、クリエイティブな力が自然と湧くというか、集まって音を出すと、それぞれが反応しあって奇跡が起こるんだよな。福士さんのキーボードは壮大な感じを作ってくれて、仲田君のベースラインとか、外村(公敏/Dr)君が醸し出すリズムの感じも、全員の個性がうまい具合に合ってるよね。

「「Michelle」は、自分の中でも完成度がすごいなと思う」

――今回、このベスト盤を通して聴かせていただいて、改めて感じたのは、どの曲もイントロがすごくキャッチーで、一音目、ひと言目からガッツリ捉えにきているなという感じがしました。

浅井 それもみんな自然にすんなりそうなったと思うんだけど、発想力のスウィッチが勝手にはいる。不思議と。

――全て愛おしい曲、作品たちだと思いますが、SHERBETSを20年間やってきた中で、特に浅井さんの中で思い入れが強い曲を教えてください。

浅井 曲を愛おしいという言い方をする人がいるけど、なんかその表現がピンときてなくて、大好きな曲かな。世の中に出すまで、作っている最中はめちゃめちゃ聴くんだわ。ここを直さないととか、ものすごい聴いて、完成して出したらあんまり聴かなくなる。その中でも「Michelle」(アルバム『STRIPE PANTHER』(2012年)に収録)は、自分の中でも完成度がすごいなと思う。

――通常盤(“The Greatest 15 TRACKS”)の一曲目に入っていますね。個人的には「グレープジュース」(2000年)とかすごく好きですね。

浅井 俺も好きだったけど、「グレープジュース」を超すものが出たから。あの曲長いのが欠点だよね。でもそれを必要とする曲だとは思うんだけどさ。

――でもそう感じさせない曲ですよね。

浅井 あれ一回聴くと、みんな長い時間集中してることになってるからさ。ビートルズの曲って3分ないくらいじゃん。少ししか味わえないからもう一回聴こうってなるじゃん。それ大事だなと思うんだよね。6分も7分もあると、一回聴くとちょっと休憩ってなるんだろうと思う。そういう感覚って人間、本能的にあるんだと思う。それに途中で気づいたんだよね。

「自分が思っていることを書いているだけだけど、よく作ってきたと思う」

――一曲一曲歌詞を見ながら聴かせてもらうと、その肌触りというか、言葉が醸し出す匂いが一曲一曲濃厚ですよね。言葉数が多い曲もあるし、逆に少なくてもずっしりくる歌もあって。

画像

浅井 自分でもそう思うな。よく作ってきたなと思うもん。

――シニカルな言葉もあるし、強烈なメッセージもありますが、押し付ける感じではなく、問題提起をして、考えるきっかけを与えてくれているようなイメージが、個人的にはSHERBETSの音楽にはあって。

浅井 自分が思っていることを書いているだけだからね。大貫憲章(音楽評論家)さんの言葉で「バンドは時代を映す鏡でなければいいけない」というのがあるけど、そうだなと思って、でも作るときはそこまで考えていないけどね、たまにふと頭をよぎるぐらいで。

「世の中に対する考え方が、だんだん変わってきていて、もっと思いっきりやったほうがいいかなって」

――キャリア、そして年齢を重ねて、特にここは変わってきたかなと感じる部分はありますか?

浅井 世の中に対する考え方が、だんだん変わってきていると思う。もっと思いっきりやったほうがいいなとか。

――思っていることをもっとリアルに伝えていこうと。

浅井 それは絶対そうで、53歳の視点、感覚で歌を書くから、25歳の自分では書けなかった世界を書くと思うから、それでいいし、楽しみだしね。

――20代~30代の頃と比べると、丸くなったといわれることはありますか?

浅井 みんなそう思っていると思うけど、自分ではあんまり変わっていないと思うけどね。でもせっかちだって言われる。これも自分では思ってないんだけど。細かいって(笑)。

――昔からなんですね。

浅井 せっかちっていうのは間違ってる、俺、無駄が嫌いなんだわ。

「街の中で見かける、みんなが嫌な思いをしていることに、それに気づかず直そうとしないのが嫌」

――何においてもですか?

浅井 そのことによって、みんなが嫌な思いをしているのに、それに気づかず直そうとしないのが嫌なんだわ。例えば、渋谷駅のタクシー乗場って、乗車できるところがひとつしかないんだわ。乗るところギリギリまでガードレールでさえぎられててさ、それに沿って人がブワーって並んでいて、それに並行して車も並んでいて、でもすぐ前が信号だから、すぐに詰まって車列は動かなくなって。みんな目の前に空車のタクシーがずらりと並んでるのに、イライラしながらずっと待つしかなくて、ガードレール取っ払えば、その間に少なくとも4組ぐらいは乗車できて、青になった瞬間一斉に出発できるのに、それをやろうとする人がこれだけ進んだ社会でひとりもいない。それが本当に不思議なんだよね。夜も遅い時間、疲れ果てた人たちが全員でとどめを刺されてるって感じ。しかもこれからも多分続く。わお!

――街の中にそういう、何考えてるんだろうと思う無駄、多いですよね。

浅井 だから俺、小池(百合子東京都知事)さんに言いたいんだわ。難しい問題も山ほどありますが、まずお金をかけずに、ちょっと頭を使えばみんながすごく助かることが、山ほどあると思うから、それを見つけ出して解決するチームを作るべきだって言いたい。この場を借りて言っとく!東京の無駄な信号とか無駄な車線、“無駄なタイミング”を改善するのに、お金なんて、ほとんどかからないじゃん?それをやったら小池さん、絶対人気が上がるし、都民も助かるし、いいことづくめ(笑)。

――細かいことをつぶしていくだけでも、ストレスは軽減できますよね。

浅井 そうなんだわ。環八は真夜中なのになぜか大渋滞している。なんでかっていうと、そんな時間に誰も渡らないような横断歩道が、数分に1度必ずしばらくの間赤になるわけ。夜中無人の横断歩道が計り知れないエネルギーを殺してる。それが何箇所もある。あれも押しボタン式にすれば済む話、トラックドライバーもストレスがかからないのに。気分がいいぜっていう人が増えるし。小池さんにそういうところに気がついてほしい。高いところにいると、下の方が見えなくなりがち、灯台下暗しというか。そこに気づいてほしいかな

――イライラしてそれが積み重なってストレスになって……。

浅井 もっというと、それが事故や事件になったりするじゃん。トラックドライバーも本当は夜中に走りたくないけど、渋滞を避けて夜中に走るわけでしょ。それだけでも大変なことなのに、幹線道路が本当に意味のないことで渋滞していて、時間をロスしてガソリン燃やして、マイナスでしかないと思う。今一番それが言いたいかなあ(笑)、街に関しては。絶対みんな感じてるって。

「ある一人の日本人としてみんなが平和であってほしい。それを願うだけです」

――みんな社会に対して、色々言いたいことがあると思いますが、発信するとどこで炎上するかわからないという怖さもある、息苦しい世の中だから、黙っている人も多いでしょうね。特に政治的なことに関しての発信は。

画像

浅井 そうですね。言わない方がいいんだろうけど。なぜ言わない方ががいいんでしょう?それって突き詰めて考えると、自分の保身でしかないって、ある日思ってさ。俺は左でも右でもない、真ん中だって以前ある雑誌で言ったんだけど。よく考えたらもっとわかりやすい言い方があった。要するに別に、ある一人の日本人としてみんなが平和であってほしい。それを願うだけです。子供から老人までできるだけ多くの人が幸せでさ。いろんな国の人たちとも仲良くしたり協力したり笑ったり、音楽やエンターテイメントを楽しめる世の中であってほしいんだ。そのためにはどうするべきか?この国が安定していなくちゃダメでしょ。自国が安定していなかったら、他の困っている国なんかも助けられるわけないし。そんな国が世界平和を叫んだってちゃんちゃらおかしい。人類がしでかしてきた事をもっと勉強するべきだと思う。学校では教えてくれなかったことを知るべきだ。そういう面ではインターネットほど、便利なものはない。人類史をみたとき、俺たちって結構、平和と平和の間にたまに戦争があったんだろうなって思いがちじゃん。感覚的にさ。でも実際は戦争と戦争の間にたま~に平和があったに過ぎないんだって。今はそのたま~に、のひと時かもよ。平和憲法を叫んでいればどこの国も攻めてこない!なんて思ってる人は少ないと思うけど。なぜだかマスコミのほとんどが、日本のことを潰しにかかっているようにしか見えないのは気のせいだろうか?なぜそんな状態なのか?よく調べるべきだ。恐ろしい事実が見えてくる。とにかく平和を守るために、抑止力として、本物の強力な軍事力を持たざる得ない。自然界の掟だと思う。日本だけが特別扱いされるわけがない。憲法は改正するべきだ。これが僕の今の考え方です。僕のこの考え方を知って、離れていったファンの方もたくさんいたと思います。すごく悲しいことだけど。自分の気持ちを隠して保身することの方が間違ってると思うし。真に平和を願っているから。素直な自分の思いを言っていきます。えーっ!そういう考え方があったのか!なんていう話があったら是非聞いてみたいとはいつも思ってます。頭は硬くないから。でも音楽には政治的なことは一切持ち込みたくないと思ってます。音楽は全く違う次元のことだと思ってるから。

「SHERBETSの音楽を聴きたいと思ってくれた人がたくさんいてくれたから、ここまで続けてこれた」

――感じたことを言葉、歌にして発信してきて、SHERBETSのこの20年間積み上げてきたものを改めて見つめ直して、感じることはありますか?もっともっと書きたいことが出てきた、とか。

The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』(10月24日発売/通常盤)
The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』(10月24日発売/通常盤)

浅井 言葉単体では見ていないからわからないけど、頑張ってここまでやってこれて、それはみんなの力もあったし、SHERBETSの音楽を聴きたいと思ってくれた人がたくさんいてくれたから、だからここまで続けてこれたんだよね。俺はみんながSHERBETSの音楽を聴きたいと思わなかったら、やろうと思わないし、続けられなかった。だから聴いてきてくれた人にはもちろん感謝だし、ここからさらに広げていきたいって心から思っていて。いまだに昔の曲を聴いてもいいなと思うから、世の中の音楽ってある程度聴かれたらもうおしまいな音楽もたくさんあるじゃん。そういうのじゃなくて、ずっとその人にとって大事な曲であり続けてくれたら嬉しい。これからも音楽とかやり続けるとは思うけど。どうなるんだろうね?誰にもわからない。

――これまで聴いてきたファンはもちろん、若い世代にも響いていると思います、SHERBETSの音楽は。

浅井 カッコいい曲をおおっ!って言わせたい、というのも変だけどより多くの人にSHERBETSの曲を知ってもらいたい。

――10月27日からこのアルバムを引っ提げたツアーが始まります。

浅井 全体的に網羅した選曲になるし、毎回そうだけどみんな心してやるし、久しぶりのツアーだからすごい演奏ができると思うから、ぜひ来てください。この前、仲田先輩が大病しちゃって、もう治ったけど。みんな歳だし、いつ死ぬかわからないから(笑)、ライヴ観ておいたほうがいいよ(笑)。

SHERBETS オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事