カンヌで西島秀俊レッドカーペットを仕掛けるカンテレドラマ「CRISIS」
4月クール小栗旬主演ドラマ「CRISIS」が仏カンヌで開催される世界最大級の番組コンテンツ見本市MIPTVの公式プレミア上映作品に決定し、出演する西島秀俊がレッドカーペットを歩く。仕掛けるのはカンテレだ。
4月新作ドラマ「CRISIS」がアジアワールドプレミア上映
カンテレ・フジテレビ系火曜よる9時連続ドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」がMIPTV初企画の「アジアワールドプレミア」第1作目に選ばれ、日本での放送開始に先駆けカンヌで先行上映されることになった。これは海外ビジネスを広げようとしているカンテレにとって、またとないチャンスと言っていい。世界各国の番組バイヤーやジャーナリストが集まる番組見本市で披露するPR効果は高いからだ。公式上映を受けて、海外のエンタメ業界誌が「直木賞作家・金城一紀氏の書き下ろし作品が上映される」などとさっそく報じている。
仕掛けたカンテレに話を聞くと、コンテンツビジネス局の岡田美穂局長は「いろいろな巡りあわせでチャンスをいただきました。日本のドラマはアジアの域を出ないと言われることが多いですが、これをきっかけに日本のドラマも注目されたら嬉しい」と期待を寄せる。
また主演の小栗旬さんは「今自分達がこの国で出来る最大限のチャレンジをしようと作ったドラマになります。(カンヌで)温かく迎えられることを心より願っています」、カンヌに来場予定の西島秀俊さんは「日本のドラマの枠を超えた規格外の作品を世界の皆さんにご覧いただくきっかけが出来たことをすごく嬉しく思う」とコメントする。
『嘘の戦争』『僕のヤバイ妻』『レディ・ダ・ヴィンチの診断』もカンテレ制作
ここでそもそもの話になるが、テレビ局の海外ビジネスは、“番組の売り買い”が基本になる。自局で制作、放送し、海外販売のライツを持つアニメやドラマ、バラエティー、ドキュメンタリーをマーケットなどに持ち込み、商談し、他国で放送されてビジネスが成立する。番組ラインナップの多い東京キー局は、50年以上にわたり海外に渡ってこうしたビジネスを続け、大阪のテレビ局も読売テレビは海外でも需要のある「名探偵コナン」などアニメを核に、朝日放送は関西ローカルの「ビーバップ!ハイヒール」などバラエティーのリメイクを売りに、海外マーケットに出展している。
そんななかで、カンテレは後発組だ。昨年秋にカンヌで初めて出展デビューしたところだ。クールジャパン戦略の一環として、コンテンツの海外展開を支援する助成金「J-LOP」を利用することによって実現したという。来週13日から始まる世界最大のエンターテイメントマーケット「香港FILMART」にも参加する。
しかし、後発ながら、カンテレは手持ちの札に自信を見せる。例えば、現在放送中の火曜よる9時枠の草なぎ剛主演『嘘の戦争』をはじめ、他にも伊藤英明主演の『僕のヤバイ妻』や吉田羊主演の『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』など、数多くのドラマを揃える。
「我々には他の準キー、ローカル局にはない強みがあります。毎クールごとにゴールデン・プライム帯のレギュラードラマをキー局以外で自社制作しているのはカンテレだけ。制作費に限りはありますが、ドラマのプロデューサー、監督、カメラ、照明のスタッフを揃え、自社制作ドラマのノウハウを築いています。」(岡田氏)
既に実績もある。竹野内豊主演、バカリズム脚本の『素敵な選TAXI』が中国で、阿部寛主演の『結婚できない男』は韓国でリメイクされ、この他にも大型案件の発表を控える。カンテレはオリジナル脚本ドラマを主軸に制作していることから、リメイクビジネスの主導権が握れることも海外展開において利点になっている。
海外番組ビジネスはローカル局にとってチャンス
MIPTVワールドプレミア作品にはこれまで「マッドメン」(アメリカ)、「タイタニック」(イギリス)、「Xファイル」(アメリカ)、「ROOTS/ルーツ」(アメリカ)といったドラマが公式上映されてきたが、MIPTVは100か国から参加がある。「メジャーどころの上映ばかりでいいのか」という声や、昨年秋に日本が「カントリー・オブ・オーナー」と呼ぶ主賓国の役目を果たした流れもあり、アジア版が新設されたという。
そしてこれがNHKや民放キー局の作品ではなかったことも注目すべき点だ。日本初、アジア初といった話にはNHKが先陣を切ることが多く、異例のケースになる。ローカル局の意識の変化がそうさせたのか。
「海外展開も視野に入れた番組づくりや、番組を多元的に広げようという意識が局内で高まっています。最終的には良質なコンテンツを制作できる局が、激動の時代を勝ち抜き、生き残れるテレビ局になると考えています。」(岡田氏)
海外においては東京と地方に大きな違いを感じさせないことも理由のひとつにあるだろう。
「ローカル局にとって、キー局とのハンデを感じることがよくあります。東京在住のクリエイターや出演者が圧倒的に多いという物理的なハンデもそのひとつです。それが海外を絡めたビジネスになると、海外からみれば東京も大阪も大きな違いがなくなります。これはローカル局にとって大きなチャンス。ローカル局でもがんばったら可能性が広がるのではないでしょうか。」(岡田氏)
ドラマビジネスが今、広がりをみせているタイミングにもハマった。前回、ドラマ『Mother』(日本テレビ)がトルコでリメイクされヒットしている話を書いた通り、世界的にリメイクビジネスが伸びていることや、Netflixなどの動画配信サービスが浸透し、ドラマの大量買いが盛んに行われていることを背景に、チャンスが掴みやすい。
海外マーケットの現場ではイギリス、オランダ、北欧、トルコ、イスラエル、ブラジルなどの、日本では全く名前が知られていないような規模の番組制作会社が存在感を示し、ワールドヒットを飛ばして話題になることをよく目にする。マーケットをうまく利用して、仕掛けることに意味はあるはずだ。