【世界史】“姫騎士”は実在した?アニメヒロインにも負けない戦いぶりで伝説となった女戦士・3選
いま流行りのファンタジー作品、とくにアニメやゲームなどのコンテンツでは
必ずと言って良いほど登場する、女戦士のキャラクター。
有名どころでは、冒険好きのおてんば姫が故郷や人類のために戦う、ドラクエ4のアリーナ姫。
あるいは元王女で、祖国を滅亡させた帝国に立ち向かう、ファイナルファンタジー12のアーシェ・・などなど。
通常の女戦士に加え、高貴な身分ながら先頭に立って戦う、いわゆる姫騎士も、物語に華を添えるヒロインとして、人気です。
さて、世界の歴史を見渡したとき、そうした人物は本当にいたのでしょうか。
メジャーな存在としては、ジャンヌダルクが圧倒的に有名ですが、そのほかにも記録に伝えられている“女戦士”は、何人か存在しています。
そこで、この記事ではとくに、こうしたイメージに沿う3人をピックアップし、分かりやすくご紹介したいと思います。創作の物語にも劣らない、彼女たちの生き様を共有できましたら幸いです。
①【エミリア・プラテル】ロシア帝国に抗う救国の少女
ときは19世紀、日本は江戸時代で太平の世を謳歌していた頃。
遠く離れた、今でいうポーランドやリトアニアは、強大なロシア帝国に侵略され、その支配を受けていました。
その圧倒的な軍事力に立ち向かった女性が、“エミリア・プラテル”です。彼女はもともとリトアニアの貴族の娘でしたが、幼少からジャンヌダルクに憧れていました。
令嬢としての嗜みよりも馬術や射撃に夢中、男子も顔負けの腕前だったと伝わります。
エミリアの父は言いました。「まったく、この“おてんば”は!もっと女性らしく振る舞えんのか」。まさに、どこかの物語に出てきそうなエピソード、そのままです。
さて、そんな彼女の祖国はロシア帝国軍が押しよせ、その支配を受けていましたが、彼女は髪を切り軍服を着て、立ちあがりました。「私たちの故郷を取り戻す!」
同時期にポーランドでも反乱が起きると、それに呼応するタイミングで、志願兵を集めて蜂起。歩兵300人、騎兵60人、また鎌などで武装した農民など、数百名の解放軍が結成されました。
エミリア指揮のもと、ロシア帝国の占領地へ疾風のように攻め入ると、不意を突かれた敵は崩され、拠点を次々と解放。
そのうち彼女に勇気づけられ、新たに立ちあがった人々や、ポーランドの反乱軍も合流すると、戦力もますます拡充して行きます。まだ年若いエミリアは“救国の少女”と呼ばれ、祖国奪還の機運は高まりました。
しかし・・。当然その事態を、ロシア帝国が放置しておくハズがありません。
当時の皇帝ニコライ1世は言いました。「地方のレジスタンス相手に、何を手こずっておるのだ?精兵を投入し、一気に鎮圧するのだ」
当時のロシア帝国は、その版図や軍事力は世界でも指折り。各地域から動員された部隊が合流すると、たちまち大軍となって解放軍へ迫りました。
これまで個々の駐留軍であれば、エミリアらの巧みな戦術で翻弄できました。
しかし有無を言わせぬ大軍勢には通用し辛く、解放した地域は再び奪い返され、完全なる劣勢へ。ある解放軍のメンバーは、エミリアに言いました。
「あなたはもう十分に戦った。どうか反乱からは、身をお引き下さい。あとは我々に任せて、どこかの地で幸せな人生を。」
しかし彼女は言いました。「今更そんなことはできないわ。ジャンヌダルクのように、私も最後まで戦い続ける!」
ロシア帝国の大軍に押されながらも、エミリアは拠点を次々と移して、抗い続けました。しかし1831年、苦戦のさなかで心身ともに極限となり、病に倒れてしまいます。そして25才の若さで、この世を去りました。
残念ながら、この時だけの情勢をピンポイントで見るならば、祖国解放は失敗と言うことができます。しかし、その生き様は多くの人々の記憶に刻まれ、のちに祖国解放を目指す人々を勇気づけました。
小説などの作品で語り継がれたり、紙幣にも描かれたりと、名実ともに伝説となって行きました。現在もワルシャワの中心地には“エミリア・プラテル通り”という道路が通り、いかに偉大な存在となっているかが分かります。
なお、彼女は“ナイト”の称号を授かったわけではないので“騎士”ではありませんが、肩書きとして貴人の娘を指す“姫”は、当てはめられるかも知れません。
何より祖国のために戦い続けた精神は“騎士”そのものであり、実質“姫騎士”という呼び名にふさわしい人物とも言えるでしょう。
さて、次記事では日本も含めた、残り2人についてもご紹介しています。合わせてご覧頂けましたら、幸いです。