イスラエルのサイバーセキュリティを支える8200部隊
イスラエル発のサイバーセキュリティ国際会議 「Cybertech Tokyo 2017」が2017年11月30日に東京で開催された。イスラエルや日本の企業など20社以上が出展、35人以上が登壇して講演を行った。1日のみの開催だったが国内外から約2,000人が来場した。「8200部隊出身者が立ち上げた企業」「8200部隊出身の優秀な技術者がいる」とイスラエル人や出展している企業の多くから聞かれたのが「8200部隊」についてだ。
イスラエルのサイバー戦争を支える「8200部隊」に入るために
8200部隊とはイスラエル参謀本部の一部署で、同国のサイバー諜報活動やサイバー攻撃・防衛を担っている精鋭部隊だ。イスラエルでは高校卒業後に兵役の義務があるが、優秀な上位1%のみが8200部隊に配属されるそうだ。配属にはプログラミングや数学、ハッキング技術、語学などが優秀な成績である他にチームワーク、協調性、リーダーシップなど人間的な面でも評価されるとのこと。イスラエルの多くの家庭では、この8200部隊に配属されるためだろうか、子供たちに数学などを必死に勉強させるそうだ。確かに、彼らの仕事場はパソコンの前であり、敵のミサイルなどに晒される最前線の戦場ではないから、殺されるリスクも少ないから当然なのかもしれない。
イスラエルはサイバーセキュリティに強い。同国のサイバーセキュリティ産業を支えている多くが8200部隊の出身者だ。イスラエルの若者にとってサイバーセキュリティのスキルや能力は命にかかわる。さらにサイバーセキュリティのスキルは、その後の人生にも大きく貢献する。そのため、小さい頃から必死に数学やプログラミング、語学などを勉強するのだろうから、日本や他国とはスキル修得に向けた姿勢も異なる。まさに命がけなのだ。
「軍事機密を漏洩しなければ良い」
世界規模で個人の生活、経済、社会、安全保障までがサイバースペースに依拠している。これは日本でもイスラエルでも変わりはない。特に周辺国との緊張関係を抱えているイスラエルにとってのサイバースペースは国家の存続にとって死活問題でもある。イスラエルにとって「サイバースペースの防衛」は「国土の防衛」と同義だ。イスラエルにとって国家は2000年来の悲願であり「絶対死守すべき空間」、それはサイバースペースも同じだ。
そして8200部隊時代での経験を活かして、サイバーセキュリティ関連のスタートアップを立ち上げたり、そのスキルを活かして技術者として活躍している人が多い。イスラエルとしても「軍事機密を漏洩しなければ良い。スタートアップから収益が上がれば雇用創出にもつながる」というスタンスのようだ。