高市早苗氏「サイバー空間を守れない国は、他の"なにもの"も守ることはできません」
「サイバーの世界に専守防衛は通用しません」
2024年9月9日に自由民主党の高市早苗氏が総裁選出馬表明を行った。その中で高市氏はサイバーセキュリティ対策の強化を訴えていた。高市氏は以前から自身のコラムでも、安全保障の観点からサイバーセキュリティの重要性を訴えていたし、出馬会見の中でもその重要性を強調していた。
高市氏は出馬表明の中でサイバーセキュリティについて以下のように言及していた。サイバーセキュリティなど分野ごとでの高市氏の発言の動画も公開されている。
「(前略)サイバー空間を守れない国というのは、他の"なにもの"も守ることはできません。サイバーの世界に専守防衛は通用しません。攻撃者を特定して能動的サイバー防御ができない国は攻撃のターゲットになり、世界に損害を拡大させてしまう可能性があります。国民の皆様の命、金融資産、大切な個人情報、重要な社会インフラをしっかりと守り抜くためにサイバー防御力の強化に努めます。能動的サイバー防御を可能にする法整備を急ぎます。
また高度なサイバー攻撃に対応するAI技術も必要ですし、衛星量子暗号通信の研究・開発も進んでいます。偽情報の検知・分析・評価の研究開発も進めていきます。何より重要なサイバー人材の育成も進めていきたいです。(後略)」
▼高市早苗氏が訴えるサイバーセキュリティに関する政権公約動画
サイバースペースにおける安全保障の重要性
高市氏は2021年の自民党総裁選の出馬会見の中でも安全保障の観点からのサイバーセキュリティ対策、極超音速兵器対策、海外に再選技術が流出してしまうことを回避するための経済安全保障の重要性を訴えていた。高市氏は以前から明確な国家観をもってサイバーセキュリティや経済安全保障の必要性と重要性を常に訴えていた。
国家のリアルな安全保障と同様にサイバーセキュリティも国家の安全保障において重要である。サイバー攻撃による情報窃取は経済の安全保障において危機であり、重要インフラへの攻撃によるブラックアウトや原発事故などが発生した場合は国家の安全保障においても非常に危険である。
そしてサイバー攻撃では、攻撃側が圧倒的に優位で強い。サイバー攻撃は相手のシステムの脆弱性を見つけて、そこから攻撃を仕掛ける。相手を攻撃をしている時に、自分のシステムにも同様の脆弱性を見つけて、修正することもできる。サイバー防衛にとってもサイバー攻撃は効果があり、サイバースペースでは「攻撃は最大の防御」である。
さらにサイバー攻撃を受けた際に、リアルな経済や金融制裁などで反撃を行うことは、抑止になる。「対話」と「抑止」は国際政治と安全保障の基本であり、特に大国間同士では重要である。抑止の前に対話が必要だ。サイバーセキュリティがイシューとして国家間でテーブルに上がって対話が行われているうちはまだよい。お互いが相手側からのサイバー攻撃を意識していることであり、牽制を目的として対話している。そこには抑止効果もある。だが、例えば米中間では、もはやサイバーセキュリティをめぐる対話や、中国人容疑者の起訴などによる抑止では止まることなく、2020年7月には中国政府はヒューストンの中国総領事館を閉鎖してしまった。そして米国政府は対抗措置として四川省成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖してしまい一触即発の危機になったこともある。
またサイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけではできない。サイバー攻撃はどこから侵入してくるかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。
同じ価値観を共有し、同等の能力を保有している国同士でのサイバー同盟は非常に重要である。サイバーセキュリティの能力の高い国家間でのサイバー同盟は潜在的な敵対国や集団からのサイバー攻撃に対する防衛と抑止能力を強化することにつながる。防衛同盟において重要なのは、リアルでもサイバーでも対外的脅威に対する安全保障だ。
そのため多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、サイバー攻撃対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを行っていく必要がある。マルウェア情報やサイバー攻撃対策の情報交換だけでなく、平時においてもパブリックでの議論を行うことも信頼醸成に繋がるので重要である。