南極で"完全に前代未聞"の高温、いつもより約40度高く
「完全に前代未聞であり、南極の気候に対する我々の理解を覆すものだ」
専門家がこんな風に仰天するほど、すさまじい高温が、18日(金)南極で記録されました。東部の地域で、例年のこの時期の気温を30度から50度(摂氏)近くも上回る暖かさとなったのです。
一体、どれほど気温が上がったというのでしょうか。
まず地球上でもっとも寒い場所として知られる、ロシアのボストーク基地の気温を見てみましょう。
この観測所の標高は3,489m、3月の最高気温の平均はおよそ「-53度」です。ところが18日には「-17.7度」まで上がり、平均を35度以上も上回りました。これまでの3月の最高気温記録を15度近く更新したようです。
次に、ボストーク基地から550キロほど離れたフランスとイタリアの共同観測所であるコンコルディア基地(3,234m)はどうでしょうか。
この場所の3月の最高気温の平均は「-49度」です。ところがそれを37度近くも上回る「-12.2度」まで気温が上がりました。これは、3月のみならず、1年を通しての観測史上最高気温だったようです。
原因は水蒸気
専門家を唸らせるほどの高温の原因は、「大気の川」に乗って流れ込んだ大量の水蒸気であると、フランスのグルノーブル・アルプ大学のジョナサン・ウィル教授は分析しています。
大量の水蒸気によって空気中に大量の熱が保持されたこと、さらに厚い雲が覆ったことで、熱が地面に向かって下向きに放射されたことなども原因のようです。
南極海の氷は、観測史上最小
また先月には、南極域の海氷の面積が、観測史上最小を記録したと伝えられています。海氷面積は192万平方キロと、記録のある43年間で、もっとも小さくなったというのです。
直接的な原因は、2021年の後半に現れた低気圧が、北から暖かい海水を流し込んだためということです。南極海の氷は薄いために、海流や風の影響を受けやすく、ちょっとした変化が大きな差に繋がるといわれています。
温暖化との関係
陸上の記録的高温と海氷の記録的縮小が起きた背景には、温暖化があるのでしょうか。
実は、長期的にみると南極東部の気温は上昇傾向にあるわけではない上に、1979年から2017年までの調査でも、海氷面積が広がっていたことが確認されています。
多くの専門家は慎重な態度で、今回の2つの記録に関しても、南極特有の変動の大きさが要因だろうと考えているようです。
温まる南極半島
しかしながら、南極大陸の西に位置し、もっとも緯度の低い南極半島では、気温が上昇し、氷河の融解も続いています。
2020年にはアルゼンチンのエスペランサ基地で18.3度を観測、昨年WMO(世界気象機関)が、南極大陸における観測史上一位の高温記録と公式に認定しています。
南極半島は1951年から2006年までの間に平均気温が3度上昇し、世界でもっとも気温上昇が著しい3か所の1つに数えられているほどです。