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イスラエルとハマスの紛争で増える反ユダヤやヒトラー礼賛の投稿:ホロコースト生存者のTikTokにも

佐藤仁学術研究員・著述家
ホロコースト生存者の97歳のエバート氏のTikTokより(CAA提供)

97歳になるホロコースト生存者でハンガリー生まれのリリー・エバート氏は1944年にアウシュビッツ絶滅収容所に移送された。現在、イギリスのロンドンに住んでいる彼女はTikTokをやっており、ホロコーストに関する質問を受け付けている。だがイスラエルとハマスの紛争が激しくなると、彼女のTikTokにヒトラーを礼賛したり、反ユダヤ主義に関する投稿が相次いだ。

反ユダヤ主義に対抗する団体の反ユダヤ主義キャンペーンでは、いくつかの心無いコメントを掲載したスクリーンショットをツイッターで紹介。「まだ生きているのか」「ハッピー・ホロコースト」「パレスチナに自由を」「ユダヤ人がパレスチナでやっていることを今こそ見ろ」といった投稿もあるようだ。

彼女の曾孫のドヴ・フォルマン氏もツイッターで「ここ数日でヘイトや民族憎悪に関するコメントがたくさん来ています。このようなことを許すことができません。憎しみの連鎖を止めないといけません。憎しみは憎しみしか生みません」と呼びかけている。

イスラエルとハマスの紛争後、1週間で17000以上のヒトラー礼賛の投稿

米国の反ユダヤ主義と戦う団体の名誉毀損防止同盟のCEOのジョナサン・グリーンブラット氏は「イスラエルとパレスチナの紛争が開始されて、5月7日から14日までの1週間で、ヒトラーを礼賛するようなツイッターでの投稿が17000以上ありました。これ以上紛争が激化し続けていくと、ますます反ユダヤ主義や民族憎悪、ヘイトに関する投稿が増えていくでしょう」と懸念を示している。日本人には馴染みがないだろうが、欧米や中東では今でも反ユダヤ主義が根強く、ヘイトや民族憎悪、反ユダヤ主義に関する投稿はSNSに溢れている。「ホロコーストなどなかった」といったホロコースト否定論の投稿も多い。

FacebookやツイッターなどSNSではそのような民族憎悪やヘイトに関する投稿は禁止されており、投稿しても削除される。だが明らかに反ユダヤ主義やホロコースト否定だとわかるものはすぐに検知して即座に削除することも可能だが、仲間内でしかわからない隠語やコメント、綴りを1文字だけ変えたりしての投稿も多く、検知するのも難しい。今回のホロコースト生存者のエバート氏のTikTokにも「Peace be upon Hitlar」とヒトラーの綴り「Hitler」の「e」を「a」に変えて投稿しているものがあり、明らかに検知されて削除されないようにすることが狙いだろう。

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。戦後70年以上が経過しホロコースト生存者らの高齢化も進み、多くの人が他界してしまった。だが、ホロコースト生存者は当時の経験や記憶を伝えようと講演を行ったり、このように自分自身でSNSを通じて当時の経験を伝えている。

また世界中のホロコースト博物館や大学では当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。

▼反ユダヤ主義キャンペーンがツイッターでリリー・エバート氏の投稿へのヘイトスピーチを紹介

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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