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「リーダーシップ」や「相手先発が右腕続き」はイチローをマリナーズが残す理由になり得るか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
ここまでの成績は寂しい限りだが、年齢を考えると球団にとっても想定内ではないか。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

マリナーズが、先発投手エラスモ・ラミレスのコールアップによる登録枠調整のため、不振のイチローではなく、同じ控え外野手でも成績で勝るギレルモ・へレディアをマイナーに降格させたことが議論を呼んでいる。地元メディアの「シアトル・タイムズ」などの今回の措置に対する批判記事が日本でも紹介されている。また、球団の決断を支持する論調の記事もあり興味深かった。

「擁護派」は、球団幹部がイチローの「クラブハウスでのリーダーシップ」を強調していたことを紹介していた。しかし、リーダーシップなどというのはプラスアルファの評価として意味をなすのであって、戦力としての根本的な優劣をひっくり返すものではないし、そうであってはならないと思う。

当面予想される相手先発投手が右腕であることも、右打ちのヘレディアを落とし左打ちのイチローを残した理由だとの見方もあるようだ。しかし、彼ら2人とも控え選手だ。ぼくには、このことがそれほど重要な要素だとは思えない。

そもそも、イチローの獲得の最終的な引き金となったのは、キャンプイン後の正外野手ベン・ギャメルの故障だった。その時点から、「ギャメルが復帰したらイチローをどう処するのか」という問題が待っていることは前提だった。

メジャーは冷徹な実力主義の世界ではあるが、球史に残るスーパースターに引導を渡すというのは球団フロントにとってとても重い、できれば避けたい仕事だ。

したがって、「その時」の対処はどうするのか、あくまで実力主義で場合によってはイチローにあっさり戦力外を通告するのか、それとも一旦獲得したからにはマーケティング効果を斟酌し基本的には登録から外さずにいるのかは散々議論が尽くされたはずだ。

そして、イチローを獲得する際にマイナー契約ではなくメジャー契約であったこと、それと今回降格の対象となったのがヘレディアであったことを考慮すると、どうやらマリナーズの戦略は後者であったろうと想像される(もちろん、選手の登録枠の配分というのはとてもセンシティブな問題で、本件もA or B?というような単純な二者択一の問題ではない。あくまでどちらかと言えば、ということだ)。

個人的には、イチローは衰えが顕著になった数年前の時点で引退して欲しかったが、彼が「最低でも50歳まで」という野球観、人生観にとことん拘るならそれを応援したいと思う。しかし、それは実力本位で扱われ、仮に戦力外を宣告されても、マイナーで辛酸を舐めても現役にとことん固執する場合であって、レジェンド枠で守られていては少々興ざめだ。もっとも、それは彼の責任ではないのだけれど。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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