レノファ山口:連続3失点で逆転負け。意思統一できず、ひずみ拡大
J2レノファ山口FCは9月22日、維新みらいふスタジアム(山口市)で大分トリニータと対戦。オナイウ阿道が先制点を決めたものの、後半に3失点して逆転負けを喫した。順位は暫定13位に後退した。
明治安田生命J2リーグ第34節◇山口1-3大分【得点者】山口=オナイウ阿道(前半29分) 大分=松本怜(後半14分)、藤本憲明(後半27分、同30分)【入場者数】8189人【会場】維新みらいふスタジアム
失点少なく、得点多く。挑戦はいかに
悪夢のような展開だった。
前半の中盤あたりから攻守にわたって主導権を握り、オナイウ阿道のゴールで先制。1-0で最初の45分間を終え、十分に勝ちの流れを引き込んでいた。ところが、次の45分後に表示されていたスコアは1-3。後半14分から同30分までの短い間で3点を相手に与え、一時は手中にしようとしていた勝ち点を一つずつ落としていった。「前から来れば来るほど背後にスペースが空いてくる。相手のやり方次第で、自分たちがどう動かすかの判断が今日はしっかりできた」(大分・片野坂知宏監督)。失点のたびに焦りだけが膨らんでいくレノファに対し、大分のほうが試合を巧みに運び、勝ち点3を積み上げた。
大型ビジョンに映された1-3のスコアは、負けるにしても想定外だった。
4節前の大宮アルディージャ戦で4-4というスコアをたたき出したレノファ。内容こそ充実したものだったが、改めて得点力を維持したまま失点をどう減らすかが課題として浮き彫りになった。2節前のモンテディオ山形戦からはダブルボランチに変更し、瞬間的な守備に対応できる枚数を増強。複数失点が続いていたレノファは同節を1失点に抑え、前節の松本山雅FC戦は3カ月ぶりの無失点で終えている。
その一方、攻撃は厚みが削られただけでなく、コンビネーションが合わなかったり、パスの質が上がらなかったりして3戦連続で無得点。リーグ屈指の得点力を誇ってきたレノファにとって、最も避けたかった現象が起きつつあった。それは守備に意識が行き過ぎて得点力も試合ごとに下がってしまうという、ありがちなスパイラル。この連鎖だけは絶対に断ち切らなければならなかった。
霜田正浩監督は今節、前線の顔ぶれに手を加え、「練習から非常に調子が良く、運動量も多い」と評価した大崎淳矢を7試合ぶりに先発。高井和馬もスタメンに戻した。ミドルシュートを武器に持っていたり、2列目から飛び出していける選手を積極的に起用して攻撃力を回復させ、守りながら攻める、攻めながら守るというゲームを狙った。
前半と後半で違うゲーム内容に
序盤から意図通りにゲームを進めたのはレノファ。ピッチの横幅を使って組み立てたり、前線からのプレッシャーでボールを奪い返したりと、今季序盤戦で見せたようなサッカーを再現。相手から放り込まれる縦パスに対しても問題なく跳ね返した。
前半29分には、三幸秀稔のプレッシャーが相手のパスミスを誘発。オナイウがルーズになった相手のバックパスに食らいつき、右足を思いきり振ってゴールネットを揺らした。「ボールを奪いに行ったところで相手にミスが出て、そこに反応ができた。トレーニングでやっていたことをしっかり出せた」(オナイウ)。これが大前元紀(大宮)に並ぶ今季19ゴール目。レノファがいい形で先制する。
ただ、次の一手を先に打ったのは大分だった。後半のスタート段階で宮阪政樹から清本拓己に交代して、前線を1トップ2シャドーに変更。小手川宏基は中盤からの組み立てに専念し、大分はマイボールにしたときのポゼッションの質を改善させる。スピードのある両サイドアタッカーも前を向いてプレーするようになり、後半14分、カウンターから松本怜が同点ゴールを決め、試合を振り出しに戻した。さらに大分は前節2ゴールの藤本憲明を投入して、逆転を狙う。
レノファにとっては2試合ぶりの失点。しかし崩されての失点ではなく、冷静に対応すれば問題はなかった。相手選手の立ち位置やクオリティーこそ変容したものの、サッカーそのものが大きく変わったわけではなかった。
ところがレノファはここから失速してしまう。「藤本が入ってきて、うまくつかまえきれなかった。マークがズレたりしてスムーズに行かなかった。相手は裏を常に狙っていたが、前半も狙ってきてはいた」(佐藤健太郎)。相手のストロングは分かっていたが、コンビネーションのミスからボールを相手に渡してしまい、カウンターを食らう回数が増加。佐藤が指摘するように藤本を自由にさせたほか、前のめりになった分だけ間延びしてスペースが広がり、松本と星雄次に対しても動ける余地を与えた。
後半27分と同30分に縦への早い展開から藤本に連続ゴールを決められ、瞬く間に2点差の劣勢に。反撃したいレノファは同33分、クロスボールのこぼれ球から高木大輔がシュートを狙うが、枠を捉えたシュートはGK高木駿にかき出されてしまい、ゴールとはならなかった。
レノファは先制しながらも、気づけば大分の渦に飲み込まれていた。「必ずしもずっとボールを持たれて、やられっぱなしになったわけではない」(霜田監督)が、勝利を夢見ることができそうな試合は、一転して悪夢に包まれた。後半は守りながら攻めることも、攻めながら守ることもできず、レノファは1-3で敗れた。
露呈した意思の不統一
0-0に終わった前節・松本戦に比べれば、試合の内容は決して悪くはなかった。戦う姿勢も感じられたが、どこに向けて力を割くべきかの意思統一は不十分だった。
例えば試合終盤は岸田和人を投入してフィニッシャーを増やすも、FWに対して放るのか、ショートパスで組み立てていくのか、サイドからのクロスで狙うのか、意思疎通ができていたかは疑問が残る。動きのちぐはぐさは質の低下に拍車を掛け、シュートで終われなかったり、シュートを放ったとしてもGKの胸に収まりすぐにリスタートされてしまった。
攻撃をシュートで終わらせるには、FW自身の質だけでなく、FWが欲しいボールを周りが出せるかも鍵を握る。裏に飛び出してワンタッチでのシュートが得意なFWもいれば、ジュリーニョのようにボールを持つことで生きる選手もいる。サッカーの方向性は同じでも、選手が入れ替わればフィニッシュ前後で求められるボールは異なってくる。
最後の質を求めるのであれば、レノファイレブンはもう一度、個が持っているストロングポイントを共有して、どういうボールを送り出すべきかを考え直す必要がありそうだ。
守備の課題もまだ解消されていない。とりわけカウンターへの対応は雑だった。失い方が良ければ確かにカウンターを受ける回数は減るが、それでも90分で一度もカウンターを受けない試合のほうが例外的だ。
「カウンターになったときのリスク管理。前半からあの1発(裏へのロングボール)でやられていたので修正できたとは思うが、なかなかできなかった。飛んでくるボールに対してオフサイドを取るようにするのか、付いていって守るのか。ラインもバラバラだったと感じている。どうやって(意思を)統一するかを意識しないと失点は減らない」。三幸秀稔は表情険しく試合を振り返った。
攻めきれず、守りきれずという消化不良の試合。背景にあるのは意思統一の不足、あるいはコミュニケーションの不足だ。30試合以上を戦ってきて「何を今さら」という感もあるが、試合結果が伴わないときは、どうしても結果を求めて頑張りすぎる選手が出てきたり、焦りが先に立ってプレーが荒くなったりする。しかしJ2リーグは個人の力だけで結果を動かせるほど甘いカテゴリーではない。こういうときこそコミュニケーションを活発化させて、試合メンバーに合わせたサッカーを地道にやっていきたい。
レノファは次節はアウェー戦で、9月30日午後2時からニッパツ三ツ沢球技場で横浜FCと対戦する。次のホーム戦は10月7日午後2時キックオフ。下関市営下関陸上競技場にFC岐阜を迎える。
今宵は悪夢のうちに試合を閉じたが、どのような夢であろうとも夜明けとともに覚めるのが定め。悪夢を振り払い、残り9戦を日差しの中で戦いたい。
※大崎の「崎」は異体字(大の部分が立)が登録名