アーリーカップ初参戦&初優勝した京都に高さという武器をもたらした現役大学生ポイントガード
【アーリーカップ初参戦の京都が関西地区を制覇】
今年で3回目を迎えるBリーグのアーリーカップに初参戦した京都ハンナリーズが、関西地区決勝で3連覇を狙う琉球ゴールデンキングスを73―61で破り、初優勝を飾った。
前半まで32―31と熾烈な大接戦を繰り広げていたが、第3クォーターで27―9と圧倒し、琉球を一気に突き放して勝負を決めた。
ひざの負傷から復帰を目指しているジョシュ・スコット選手の出場時間が制限される中、もう1人の外国籍選手のデモン・ブルックス選手が第3クォーターにファウルアウトしたことが、琉球にとって大きな痛手になったのは間違いない。
だがその一方で、後半は明らかに京都のディフェンスに手を焼いていたことも、誰の目にも明らかだった。
【先発5選手の最低身長が188センチ】
琉球が苦労する要因となったのが、京都の“高さ”だった。
今大会で2試合を戦った京都は先発5選手を固定して戦ったのだが、その5選手の中で最低身長だったのが新加入の松井啓十郎選手の188センチ。残り4選手はすべて190センチ以上という大型布陣だった。
第3クォーターのほとんどをこの5選手で戦った京都は、琉球の誇る並里成選手(172センチ)と岸本隆一選手(176センチ)の強力ガードコンビを、高さによって動きを鈍らせることに成功したのだ。
また先発陣以外でも、11人のロースター中170センチ台はPGの綿貫瞬選手(178センチ)と村上直選手(同じく178センチ)の2人のみ。さらに180センチ台も、松井選手以外は岡田優介選手(185センチ)と内海慎吾選手(188センチ)の2人だけ。浜口炎HCも「僕が持ったチームの中で一番サイズが大きい」という陣容を揃えている。
【新布陣のカギは現役大学生の190センチPG】
こうしたBリーグでもトップクラスの高さを手に入れることができたのも、PGに身長190センチの現役大学生、中村太地選手を迎え入れたことが大きなカギになっている。彼は法政大学の4年生なのだが、自らの意思で残りの4年生シーズンをスキップし、Bリーグに参戦することを決断した。
「これまで代表だったり、特別指定選手というところで(大学以上に)多くのことを吸収できたと思っているので、上のレベルでやりたいという気持ちがずっとありました。
いろいろなチームから声をかけてもらったんですけど、自分は試合に出てなんぼだと思っているので、プレータイムの面で一番いいのはどこかと考えた中で京都さんかなと思いました」
元々中村選手は、大学1年から3年連続で特別指定選手としてシーホース三河、富山グラウジーズ、横浜ビー・コルセアーズに所属し、さらに2017年にはU―24日本代表、昨年はアジア大会の日本代表に選出されるなど、若手有望選手として注目されてきた。
そうした大学以外の活動を続けていく中で、バスケ選手として強い刺激を受けた中村選手はBリーグ入りの思いを強くしていった。
【両者を結びつけた偶然と必然】
京都と中村選手を結びつきは、偶然から始まった。6月24日に先発PGを務めていた伊藤達哉選手の大阪エヴェッサ移籍が決まり、京都はそこから新たなPG獲得に乗り出したのだが、やや出遅れてしまい補強に手間取っていた。
そんな厳しい状況の中、中村選手がBリーグ入りする意思があることを聞きつけた京都は、浜口炎HC自ら中村選手の元へ出向き、直接面談を行った。
そこからは中村選手が話すように、必然的に両者は繋がっていった。浜口HCから主力PGを補強したいというチーム事情を聞いた彼は、確実に出場機会を得られそうな京都を選び、8月23日に正式発表されたのだ。
【将来は日本代表PGを狙える逸材】
まだチームに合流して日が浅いものの、松井選手、岡田選手、内海選手ら実績あるベテラン選手に囲まれる環境に大いに満足している。
「すごく経験を持っている選手が多いので、僕に今必要なものは経験だったりが大切だと思っているので、いい先輩がいるしアドバイスをくれるので、本当にやりやすい環境でやらせてもらっていると思います」
浜口HCはBリーグでのPGとして「課題は山ほどある」と指摘する一方で、いうまでもなく中村選手に大いなる期待を寄せている。
「僕が今まで15年コーチしてきた中でも、新人であそこまで練習するのは3人に入るくらいで、ハードワーカーで練習の虫なんです。チーム練習が休みでも練習に来ますし、ウェートもすごくやります。それが彼の一番の良さで、吸収しようとする力がすごく強いです。
間違いなく代表のゲームに出られる選手になっていくと思いますし、なってほしいなと思っています」
【新生京都が着実に進化を遂げる】
PG補強に苦しんでいたはずの京都が、中村選手の獲得で一気に形勢を逆転し、むしろ昨シーズン以上の進化を遂げることになった。そんな可能性を感じさせたのが今回のアーリーカップ優勝だった。
実はアーリーカップ優勝を一番驚いてるのは、浜口HCだったのかもしれない。
というのも、岡田選手と綿貫選手の負傷でチーム内では5対5の練習も満足にできず、アーリーカップに臨む前は西宮ストークス、バンビシャス奈良、ファイティングイーグルス名古屋のB2チームと練習試合を行い、2敗1分けという状況だった。
そうしたチームとして出遅れた中でアーリーカップに優勝できたことは、京都の潜在能力の高さを裏付けていることに他ならない。
サイズアップしたことで帰化選手が所属するチームとも互角に戦える布陣となり、戦術面においてもこれまでとは違った戦い方ができるようになった新生京都。
その象徴ともいえる中村選手が、浜口HCの狙い通りに成長を続けていくことになれば、今シーズンの京都は、間違いなく他チームにとって脅威の存在になることだろう。